研究課題/領域番号 |
23K24207
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補助金の研究課題番号 |
22H02946 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51020:認知脳科学関連
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研究機関 | 日本大学 (2023-2024) 同志社大学 (2022) |
研究代表者 |
宮坂 知宏 日本大学, 薬学部, 教授 (90342857)
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研究分担者 |
小林 耕太 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40512736)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | タウ / MAP2 / 微小管結合タンパク質 / 育児 / オキシトシン / tau / 聴覚障害 / 育児行動 / MAPs / 微小管 |
研究開始時の研究の概要 |
神経細胞内には微小管とよばれる細胞骨格があり、その維持や調節は神経の機能にとって重要である。TauおよびMAP2は微小管に結合し安定化させるタンパク質であり、その構造は進化の過程で高く保存されてきた。昔からよく知られているタンパク質であるが、これらが個体の機能に対してどのようなはたらきがあるのか、不明であった。マウスを用いた解析から、tauやMAP2または両方の遺伝子の欠損により聴覚や育児といった個体間のコミュニケーションに関わる機能に障がいが起こることが分かった。さらにその詳細な分子機構の解明を進めている。難聴や育児放棄などの一部はtauやMAP2の機能異常が原因である可能性がある。
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研究実績の概要 |
Tau/MAP2 型微小管結合タンパク質 (MAPs) は、共通の遺伝子から派生したパラログである。それぞれの微小管結合ドメインの構造は、種間において高く保存されていることから、生命機能に対する重要性が想定される。しかし、微小管重合促進および安定化といった共通の分子機能が認められているものの、生理的意義については不明であった。タウについては病理学的、遺伝学的にも認知症と強い関連が認められるものの、他の MAPs については疾患との関わりを示唆する報告も無い。本研究では、タウ型MAPs の生理機能とその機能損失の影響を明らかとする目的で、tau-KO, MAP2-KO およびそれらを掛け合わせた double-KO マウスの解析を行った。 これまでに、タウ型MAPs の生理機能とその機能損失の影響を明らかとする目的で、tau-KO, MAP2-KO およびそれらを掛け合わせた double-KO マウスを作出し解析を行った。その結果、MAP2-KO では聴覚障害を、double-KO では育児行動障害を認めた。本研究では、それぞれの病態メカニズムの解明を目指し、MAP2-KO については SEMを用いた蝸牛外有毛細胞の形態評価およびマウス聴覚特性行動評価系の確立を行った。また、Double-KO マウスにおける育児行動障害メカニズムについて、網羅的発現解析とともにオキシトシン神経細胞軸索の形態学的解析をおこなった。また、出産後育児行動時の血中オキシトシン濃度について血液生化学的定量を試みた。さらにオキシトシン神経細胞賦活による行動改善を目指した実験系の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【聴覚伝導におけるMAP2の機能】これまでの脳生理学的および形態学的解析により、MAP2-KO の聴覚障害は外有毛細胞の細胞脱落あるいはその機能不全が原因と考えた。さらに走査型電子顕微鏡による解析を行った結果、聴覚受容に必須な感覚毛の長さについては、高音域を担う Base、中音域を担う Middle、低音域を担う Apex ともに差が認められなかった。一方その形態には差異が認められ、MAP2-KO では感覚毛が倒れ込むように乱雑に配置されていることが確認された。MAP2 欠損は外有毛細胞における感覚毛の剛性が失われることで聴覚障害になる可能性が高いとの見解を得た。 【MAP2欠損によるマウスの行動異常】MAP2 欠損は聴覚以外の感覚毛の機能不全につながる可能性がある。MAP2の機能消失が他の感覚モダリティに影響を与える可能性について、平衡感覚系の評価として rotarod test および beam test を行った。その結果、いずれの解析においても MAP2-KO マウスにおいて平衡機能障害を示唆する結果が得られた。 【tau / MAP2 が育児行動を支えるメカニズム】DKO 特異的なOxt産生障害機構として、室傍核Oxt産生細胞における分泌機能障害が想定されている。今年度は、DREADD による人為的なOxt分泌神経細胞の興奮とそれによる DKO マウス育児行動障害の改善を解析する目的で、デザイナー受容体 (hM3D) 発現用アデノ随伴ウイルスを作成した。現所属研究機関での MAP2-KO, tau-KO マウスの飼育開始が 2023 年度後半となったため、マウスへの感染実験およびその評価は 2024 年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
【聴覚伝導におけるMAP2の機能】MAP2-KO マウス外有毛細胞の機能障害について、さらなる解析を進める。主に発生期に注目し、感覚毛の構造的基礎となるクチクラプレートの構造さらには外有毛細胞の発生について異常の有無を確認する。また、外有毛細胞の機能的な評価として in situ によるカルシウムイメージングに挑む。 【MAP2欠損がマウスの行動に与える影響】前年度の解析により MAP2-KO では聴覚のみならず平衡感覚においても異常がある可能性を見出した。この原因究明の一端として耳石器または半規管における感覚毛の機能不全が想定される。これら平衡感覚を司る感覚毛の異常の有無について形態学的解析を行う。 【tau / MAP2 が育児行動を支えるメカニズム】現所属機関におけるマウスの繁殖を進める。同時に野生型マウスを用いた解析法の確立に集中し、tau-KO、MAP2-KO、DKOマウスが生育次第速やかに解析が進められるような準備を整える。オキシトシン神経の障害と同様の異常がバソプレシン分泌神経でも認められるか組織学的解析を行う。さらに DREADD による人為的なオキシトシン分泌神経細胞の興奮とそれによる DKO マウス育児行動障害の改善を解析する目的で、作成したデザイナー受容体 (hM3D) 発現用アデノウイルスを野生型マウスに感染させ、その発現を確認する。DKO マウスの繁殖が進めばその育児行動の改善について検証する。
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