研究課題/領域番号 |
23K24211
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補助金の研究課題番号 |
22H02950 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
漆谷 真 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60332326)
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研究分担者 |
和泉 唯信 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10335812)
森野 豊之 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10397953)
守村 敏史 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 准教授 (20333338)
依馬 正次 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 教授 (60359578)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / FUS / DHX30 / RNA / 低分子スクリーニング / Fused in sarcoma (FUS) / 変異遺伝子スクリーニング / ノックインマウス |
研究開始時の研究の概要 |
我々は家族性ALSの原因の1つであるP525L FUSタンパク質の結合タンパク質としてミトコンドリアヘリカーゼDHX30を同定した。DHX30は変異FUSとの結合によって機能を喪失する。本研究はDHX30は変異FUSとの結合阻害分子の同定と、さらに家族性ALSのリスク遺伝子としての可能性を検証することで、ALSの新たな病態解明と治療法開発を目指すものである。
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研究実績の概要 |
申請期間で予定している研究計画はDHX30をALSの病態を握る鍵分子と捉え、①FUSとDHX30の結合を阻止する分子をスクリーニングし、②家族性ALSで報告されている3種類の3UTR変異とP525L変異を組み込んだ新たな変異FUSノックインマウスの作出と表現型解析、DHX30との以上結合様式、特にミトコンドリア機能の解析、さらに①で同定した化合物の表現型系改善による有効性を検討する。③原因遺伝子が未決定の家族性ALS患者においてDHX30遺伝子解析を行い、変異遺伝子の同定と病原性の検証を行う。というものである。2023年度は以下の成果が得られた。 ①DHX30と変異FUSの結合阻害物質のスクリーニング 昨年度同定された24種類の結合阻害化合物の毒性濃度を決定したうえで、免疫沈降による結合解離の検討を行った。その結果、数種類のトポイソメラーゼ阻害薬が両者の結合を効果的に解離させることが判明した。そのうちピキサントロン最も高い効果を示したっが、細胞毒性を呈する濃度も低く、条件検討と同時に、さらに別のライブラリーで低分子化合物をスクリーニングし、あらたに5つの同定した。②ORFのみに変異有するP525Lのノックインマウスの作製は終えた。3'UTRのCRSP/Cas9を用いた組み換えを進めている。 ③共同研究者である徳島大学森野らによってさらに100例の既知の遺伝子に変異を認めない家族性ALS患者の遺伝子のシーケンシングを行った。その結果、ALS特異的な変異は検出されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年同様、以下上述①~③の計画ごとに進捗を自己評価する ①FUSとDHX30の結合を阻止する分子のスクリーニングは系として確立しており、効果的に候補分子の同定が進んでいる。昨年度候補分子からはトポイソメラーゼ阻害薬が数種類同定されており、DNA結合を介した結合解離作用を示唆しており興味深い。そのうちピキサントロンは免疫沈降でもFUSとDHX30の解離を促進しており、候補物質として今後治療研究に用いる予定である。 ②Piggy bacシステムを用いたマウスの作製技術は確立したが、個体ごとヘテロな遺伝子プロフィールを有することを問題視し、P525L FUSと家族性ALSで報告されている3種類の3'UTRをともにノックインしたマウスを作出が順調に進んでいる。まずはP525Lのノックインマウスは誕生しており、キメラコンストラクトは3'UTRのノックインは誕生した。③は昨年度の100名に加え新たに100名のALS患者で遺伝子解析を行った。本年は有意な変異が同定されなかったが、さらに解析患者数を増やす。家族性ALSのリスク遺伝子であるか否かについては来年には結論を出せる予定である。 よって、①~③は順調あるいは計画通りに進捗していると考えているが、遺伝子変異症例が同定されておらず、「ほぼ計画通り」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は以下の研究を予定している。 ①FUSとDHX30の結合を阻止する分子をスクリーニングと介入効果の検証:同定されたトポイソメラーゼ阻害について、DHX30とP525L FUSとの結合解離によるさらに下流の病的現象への改善効果を検証する。具体的にはDHX30の構造変化の改善をBlue Native SDS-PAGEによって検証し(Hikiami Sci Rep 2022)、ミトコンドリアの機能(酸化的リン酸化酵素やミトコンドリア酵素の発現検証など)についての効果を検証する。さらに従前のライブラリーより同定された候補分子の中で、実験のbrush upによって結合解離効果が明瞭となった候補が存在しており、同様な評価と、蛍光標識したDHX30やFUSのノックイン細胞を用いて、凝集体形成能やストレス顆粒の形態変化を検証する。これは2025年度にまたがる実験である。 ②新たな変異FUSトランスジェニックマウスを作出と表現型解析、ヒット化合物の有効性検討。まずP525L FUSのノックインマウスは誕生した。現在Breeding中である、それを進める。さらにP525L FUSとFALS関連トリプル3'UTRキメラDNAのノックインマウスは6~7月に誕生予定である。Breedingを進め、表現解析を行う。特にDHX30の免疫組織学的評価と構造評価、FUSとの結合に着目する。ヒット化合物の投与実験は2024年の年度末からの開始を見込んでいる。 ③ここまで200名の既知遺伝子変異のない家族性ALSにおいてDHX30の疾患特異的変異を検証したが、同定された患者はいない。さらに100名の検証を進め、疾患リスク遺伝子としての蓋然性の判断を行う必要がある。有意な遺伝子が同定されれば、培養細胞での毒性評価を経て、トランスジェニックマウスを作製する予定としている。
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