研究課題/領域番号 |
23K24220
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補助金の研究課題番号 |
22H02959 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
林 秀樹 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (90508657)
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研究分担者 |
吉川 大和 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)
冨塚 一磨 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40444640)
根岸 洋一 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50286978)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | 緑内障 / LRP1 / ナノバブル / 抗体 |
研究開始時の研究の概要 |
緑内障は日本の中途失明原因疾患第一位であり、その約7割を占める正常眼圧緑内障に対し適した治療薬がないことから、新規治療薬・治療法の開発が切望されている。これまでに研究代表者は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)を介した視神経保護機構を明らかにし、この保護効果を発揮する抗LRP1抗体を作製した。一方で研究分担者らは超音波応答性ナノバブルによる非侵襲性薬物送達システムの開発に成功している。そこで本研究では超音波応答性ナノバブルを用いた抗LRP1抗体による非侵襲性緑内障治療システムの基盤構築を目指す。
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研究実績の概要 |
緑内障は日本の中途失明原因疾患の第一位であり、多くの患者が存在する。しかし、その患者の約7割を占める正常眼圧緑内障に対しては緑内障治療薬(眼圧降下薬)の効果が十分に得られておらず新規治療薬・治療法の開発が望まれている。これまでに研究代表者は、グリア細胞から放出されるアポリポタンパク質E含有リポタンパク質による低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)を介した視神経保護機構を明らかにし、同様の保護効果を発揮する抗LRP1アゴニスト抗体の作製に成功した。しかし抗体医薬による網膜治療のためには侵襲的処置である硝子体内注射が必要である。一方、研究分担者らは、超音波応答性のナノバブルを用いた非侵襲性薬物送達システム(DDS)の開発を行っており、この技術を応用することで抗LRP1アゴニスト抗体の網膜送達技術を開発し、非侵襲性緑内障治療システムの基盤構築を目指している。今回、研究分担者とともに抗LRP1アゴニスト抗体の変異体作製による親和性向上を行い、すでにいくつかの変異体を作製した。現在、初代培養網膜神経節細胞を使用して、誘導した神経変性に対する変異体の神経保護効果を検討中である。また、in vivo実験では超音波応答性ナノバブルを用いて蛍光標識したデキストランの眼球および網膜へのDDS条件の最適化を行っている。今後、新たに作製した変異体の視神経保護効果の検討を進めると同時に、超音波応答性ナノバブルを用いた網膜DDS条件の最適化を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに抗LRP1抗体の親和性向上を目的として研究分担者とともに新たな変異体を数十種類設計し、作製を終えた。ELISA法によるリコンビナントLRP1タンパク質との親和性解析では、オリジナル抗体と比較して著しい親和性の向上が確認された。しかしELISA法による解析ではリコンビナントタンパク質との親和性は著しく向上したものの、これらの変異抗体の多くは、初代培養網膜神経節細胞の神経変性に対する保護効果がELISA法の結果と相関せず、保護効果の向上がみられる抗体は数種類にとどまっている。この結果の不一致については、現在検証中である。神経保護効果の評価は、これまでと同様にHoechst染色による核の凝集(神経変性)抑制効果を指標としている。超音波応答性ナノバブルを使用した抗体の網膜DDSに関しては、予備検討として蛍光標識したリポソームまたは蛍光標識デキストランを使用し、眼球および網膜への投与方法や超音波照射条件の最適化を行っている。研究開始当初の網膜自家蛍光の増大による解析の問題や、超音波照射条件の最適化に時間を要してしまい研究計画の進行に遅れが生じてしまった。このことから本研究課題は、少し進行が遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作製し、ELISA法を用いてリコンビナントタンパク質に対し親和性が向上した変異抗体の初代培養網膜神経節細胞に対する神経保護効果の検討を継続して進める。また現在、異なるコンセプトで新たな変異抗体を作製しており、これらの変異抗体の神経保護効果も検討を行う。さらに、初代培養網膜神経節細胞の神経変性に対し保護効果が確認された変異抗体のin vivoでの視神経保護効果についても検討を行う。現時点では変異抗体の眼球への導入は、侵襲的処置である硝子体内注射で行い、神経保護効果の評価は、網膜神経節細胞のマーカータンパク質をイムノブロット解析する。In vivo網膜DDS研究では、これまでの検討で良好な成績の条件を最適化し、超音波応答性ナノバブルを用いた抗体DDSを進める。超音波照射の条件については、照射時間や照射強度などを検討中であり、もうしばらく時間を要すると考えられる。ナノバブル作製に使用する脂質の組成および粒子径の均一化についても検討を進める予定である。本抗体DDSの条件が決まり次第、神経保護効果が確認できた変異抗体の非侵襲的導入を行う。
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