研究課題/領域番号 |
23K24234
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補助金の研究課題番号 |
22H02973 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山口 宗一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (20325814)
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研究分担者 |
丸山 征郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (20082282)
大山 陽子 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (20583470)
東 貞行 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (20866701)
竹之内 和則 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (30646758)
上田 英昭 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (50598274)
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | miRNA |
研究開始時の研究の概要 |
超高齢化社会と生活習慣病増加が顕著な本邦では、大動脈弁狭窄症(AS)罹患者は75歳以上で10%を超え、その対応は社会的・医療経済的に急務である。また、ASの治療法は外科的処置に限定されており生命予後は不良であるため、初期対応がとても重要であり、AS早期発見のバイオマーカーの確立が望まれる。近年、血中核酸に疾患診断価値が見出され、特にマイクロRNAやcircular RNAと呼ばれる血中のRNA分子の臨床応用が期待されている。本研究は、これらの血中低分子RNAがASのバイオマーカーになり得るかを検討し、その分子メカニズムを探索するものである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、大動脈弁狭窄症 (AS) の早期発見・治療に関連する新たなバイオマーカーの確立である。3年間の計画として作成した以下の3つの研究項目それぞれについて、2年目の実績についての成果を概説する。 1)AS の病態を反映する血中の non-coding RNA (ncRNA) の探索:初年度はAS患者の大動脈弁置換術(AVR)の施行前後の血清採取、RNA抽出、microRNAのマイクロアレイ解析を施行し、AVR前後の血清で変化のあるmicroRNAのデータを得た。一方で、初年度から今年度にかけて、ヒト大動脈血管内皮細胞を用いて、石灰化を培養細胞で惹起する実験系を確立し、これらの細胞の石灰化によるncRNAの変化について、small RNAのマイクロアレイ解析を行ってデータを得ることが出来た。 2)大動脈弁石灰化分子機序の解明:血管平滑筋細胞を用いた石灰化実験系を初年度で概ね確立できていたので、これを更に改良を加えた。また、血管の恒常性維持に影響を与えるmicroRNAを導入し、アリザリン染色やRunx2などの遺伝子発現増強等の石灰化の変化について新たな知見を得ることが出来た。これに関連して、血管の炎症に関与するmicroRNAが石灰化を制御する機構について論文を作成中である。 3)全身の血管内皮機能異常と大動脈弁の関係の探求:初年度は1),2)の研究遂行を集中して進めており3)については文献検索を主に行ってきた。本年度はそれを基に、シグナル伝達分子として重要な細胞外小胞に内在するsmall non-coding RNAとして、石灰化に関連するmicroRNAを文献から抽出した。そして、これらのmicroRNAが血管内皮機能に及ぼす影響(遊走能、一酸化窒素産生能、血管形成能など)についての予備実験を行い、一定の結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記した3つの研究項目について、当初の計画通りの研究の遂行が概ねできているため、想定通りの進捗状況と判断した。各項目の簡単な進捗達成状況は以下の通りである。 1)本年度は、AS患者のmicroRNAのプロファイリング後のデータ処理に加えて、培養細胞のmicroRNAのマイクロアレイ解析を実施し予定通りデータを得ることが出来た。 2)培養細胞の石灰化の実験系において、石灰化に影響を与えるシグナルや刺激などの検討、microRNAが石灰化に与える影響の検討などで有益な結果を得ることが出来た。 3)生体のホメオスタシスを保持するための各臓器、組織間の情報連に関わるsmall RNAの世界的な動向を文献検索して、それを今年度は血管内皮細胞、平滑筋細胞に導入開始した。こちらは計画のすべてを網羅できていないが、進行状況は比較的良好と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、 AS の病態を反映する特異的な microRNA を中心に研究を進めた。次年度は、small RNA全般に研究対象を広げて、3つの研究計画の推進方策を以下の通りに設定する。 1)AS患者において病態を反映する血清microRNA、培養細胞を用いた石灰化状態に関与するmicroRNAについてデータを得られているので、本年度はこれらの結果の解析を進めて、同定できたmiRNAなどの細胞内での役割について検討する。また、miRNA と circRNAの相互作用を細胞実験で明らかにする予定である。 2)昨年度までは、ヒト動脈平滑筋細胞を石灰化実験に使用してmiRNAによる石灰化制御について検討し、良好な結果を得た。一方で、弁間質細胞の培養、刺激条件などの検討については昨年度までにあまり遂行できなかった。そこで本年度はこれを踏襲し、さらに細胞内シグナルの変化について詳細に検討していく予定である。 3)昨年度は、エクソソームを含む細胞外小胞の抽出を段階的超遠心法で行い細胞外小胞中のmicroRNAの発現検討が出来た。本年度は、大動脈由来の血管内皮細胞を用いて遺伝子導入実験や石灰化血管平滑筋との共培養を行い、AS 関連のmiRNAの放出、取り込みを検討し、両細胞間のコミュニケーションについて研究を進める。また網羅的解析で得られたsmall RNAとの相互関連についても、この細胞実験に応用していく予定である。 以上の研究の推進により、ASの病態に密接に関連のあるsmall RNAの同定とその役割を明らかにしていきたい。
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