研究課題/領域番号 |
23K24239
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補助金の研究課題番号 |
22H02978 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
堂浦 克美 東北大学, 医学系研究科, 名誉教授 (00263012)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | プリオン / セルロースエーテル / 免疫系 / 感受性 / 機序解明 / 高活性体 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちの体内には何らかの外的要因等の影響を受け、プリオンの増殖を制御する機構が備わっていることが予想されるが、その生体防御機構は未解明である。研究代表者は、食品添加物等として日常摂取しているセルロースエーテル(CE)が、プリオンに対して生涯にわたる優れた発病抑制効果や曝露前予防効果を発揮することを発見した。CE効果には明瞭なマウス系統差が存在し、CE感受性の機序ならびにCEの作用機序は十分にはわかっていない。本研究は、これまでの研究成果を発展させ、4つの具体的研究に取り組む。本研究の成果はCEの作用機序解明に役立ち、プリオン病の予防やプリオンに対する生体防御機構解明の一端に繋がると考えている。
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研究実績の概要 |
日常摂取している外的要因であるセルロースエーテル(CE)に応答してプリオンの増殖を長期間にわたり抑制するメカニズムと、それに関わる宿主感受性因子を解明するため、独自の研究成果をさらに発展させるものとして以下の4つの研究に取り組んだ。 ①免疫系関与の検討 代表的な低CE感受性マウスではT細胞の発達に関わる遺伝子に異常があることが分かっているため、本年度は高CE感受性マウスにおいて免疫抑制剤の投与実験、新生児期胸腺除去実験、特定リンパ球除去抗体の投与実験を行いCE効果への影響を調べた。結果として、胸腺除去や胸腺除去+CD8陽性T細胞除去がCE効果を有意に減少させることを明らかにした。 ②宿主感受性遺伝子の解明 gmfb遺伝子及びその近傍遺伝子の多型がCE感受性と相関することがわかっているが、本年度はgmfb遺伝子より上流の未解析領域について解析を進めた。これまでのところ感受性遺伝子の特定に結び付くような高感受性マウスに特異的な遺伝子発現パターンや遺伝子多型は見つかっていない。 ③高活性型CEの開発と特性解析 高活性に関係するCE構造特性をもつCEの脂溶性修飾体を新たに作製して、プリオンを感染させた高CE感受性マウスにおいて効果を検討した。コレステロール基やステアリル基を導入した修飾体CEが、非修飾体よりも有意に効果が高いことを明らかにした。 ④単純系での機序解明 本年度はプリオン持続感染細胞において、CEの有無での各種細胞小器官マーカーの発現プロファイル解析、リソソーム・オートファジー活性解析、脂質ラフト蛋白質のフローテーションアッセイなどを実施した。一部の細胞小器官マーカーの発現プロファイルに違いを見つけたが、CE特異的な所見であるかどうかは、さらに実験条件を変えて詳細に検討を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つの研究テーマで、すべてが年度計画通りに進捗したわけではない。特に、遺伝子解明研究の進捗は予想外に難渋した。しかし、動物実験施設の改修工事で研究環境に制約があったにもかかわらず、時間を要するビボ実験が含まれる2つの研究テーマは順調に進んだ。また、細胞を用いる研究テーマも順調に進んだ。したがって、全般的には概ね順調に進捗したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究結果を踏まえ、引き続き以下の4つの研究に取り組む。 ①免疫系関与の検討 CE作用へのT細胞の関与について、さらに詳細に検討するため各種免疫不全動物を用いて解析する。具体的には、遺伝的背景が同様である各種T細胞系欠損マウス(TCRβ欠損、TCRδ欠損、CD4欠損、β2ミクログロブリン欠損、IL-7欠損マウスなど、対照はC57BL/6J)を用いて、T細胞系列の欠損がCE効果に及ぼす影響を調べる。 ②宿主感受性遺伝子の解明 引き続きgmfb遺伝子近傍の未解析領域の解析を進めるが、遺伝子の効率的な絞り込みのため、材料として新たに高感受性マウスを低感受性系統背景のプリオン蛋白欠損マウスで戻し交配しCE効果を評価したヘミ接合型マウス(ZF1-6)の個体試料も検討する。 ③高活性型CEの開発と特性解析 CEの脂溶性修飾体がビボにおいて有効であることがわかったので、プリオン持続感染細胞における動態や作用点の解析を進める。修飾体CEと非修飾体CEにおいて蛍光標識体を作製し、プリオン持続感染細胞に投与して細胞への取り込みや細胞内局在を観察するとともに、抗プリオン効果について異常型プリオン蛋白をアッセイして評価する。 ④単純系での機序解明 プリオン持続感染細胞におけるこれまでの結果を、他のプリオン株の持続感染細胞でも詳細に検討を進める。また、新たに、試験管内反応であるRT-QuIC法において、細胞・体液・組織ごとに作製した各粗画分を反応系に添加して、CE効果を打ち消す成分の手がかりを探る。
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