研究課題/領域番号 |
23K24250
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補助金の研究課題番号 |
22H02989 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
石橋 大輔 福岡大学, 薬学部, 教授 (10432973)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | プリオン / インターフェロン |
研究開始時の研究の概要 |
プリオン病は、ヒト、ウシなどの各種動物で引き起こされる人獣共通の感染症であり、生体内で長い年月をかけて異常型プリオンタンパクが蓄積し、脳内において神経細胞死が生じることにより引き起こされる疾患とされている。プリオン病は、ウイルスや細菌など微生物によって引き起こされる感染症とは異なりタンパクのみが病原体として認知されているが、発症するまでの一連の現象について何がきっかけで、どのようなメカニズムで生じているかはまだまだ研究途上の状態である。本研究では生体防御機構である免疫機構が病原体プリオンに対して、如何に働いているかについて解明し、治療・予防薬開発に向けた研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、病原体プリオンに対する宿主免疫機構の役割を明らかにすることを目的としている。特に宿主自然免疫応答のシグナル経路の中でも、上流に位置するパターン認識受容体を介して、惹起されるI型インターフェロンの活性化が、如何に病原体プリオンの感染病態に対して影響を及ぼすのかについて明らかにする。研究の大きな軸としては、1) I型インターフェロンに着目したプリオン抑制メカニズムの異常型プリオンタンパクの分解機構を含めた詳細な解析、 2) I型インターフェロンシグナル経路を視点としたプリオン病薬の開発の基盤構築、である。昨年度までに、インターフェロン刺激遺伝子(ISG)における複数の遺伝子をクローニングし、哺乳類系の正常細胞でそれぞれのコードされているISGのタンパク発現を確認後、MHM2由来の異常型プリオンタンパクの合成に対するISGの影響について検討した。結果、異常型プリオンタンパクの産生を優位に阻害するISGを確認したことより、本年度は、プリオン持続感染細胞に存在する内因性の異常型プリオンタンパクに対する影響について検討した。それぞれ単独のISG発現による検討、また複数の異なるISG発現による検討を行った結果、単独のISG発現よる異常型プリオンタンパクに対する影響は見られなかったが、複数の異なるISG群の中の一部の組み合わせの発現では、わずかに異常型プリオンタンパクの発現が減少していた。さらに、プリオンタンパクの分解機構の検討として、プリオンタンパクの変異体を作製後、その発現を確認し、経時的な発現減少過程について野生型プリオンタンパクと比較した検討を行った。現在、それぞれのプリオンタンパクの分解機構についての詳細な検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、1) I型インターフェロンに着目したプリオン抑制メカニズムの異常型プリオンタンパクの分解機構を含めた詳細な解析、2) I型インターフェロンシグナル経路を視点としたプリオン病薬の開発の基盤構築の遂行を目的としており、特に2023年度は、クローニングしたインターフェロン刺激遺伝子が、内因性の異常型プリオンタンパクの発現に対して影響を及ぼすのかについて検証した。さらに、I型インターフェロンのカスケードが、凝集性タンパクの分解機構を促す報告があることより、プリオン病におけるI型インターフェロンの抑制効果の詳細なメカニズムを明らかにする上で、プリオンタンパクの分解経路について検討した。まだ、材料作製から発現確認など基礎検討の段階でこれから詳細に生化学的検討、分子生物学的検討などを行う予定があり、今後も継続して遂行する必要がある。従来、プリオンを課題とした研究課題においては、異常型プリオンタンパクの発現からその検出に時間を要することや、プリオンが感染病原体であることから実験を従事する環境に制限があるため、順調に研究を遂行するにも一般的な感染症研究に比べ時間を要する場合がある。しかし、今年度は特に大きなトラブルは無かった。プリオン病創薬開発の課題においても、昨年に引き続き継続して研究を行っていることより、総合的には、おおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して、1) I型インターフェロンに着目したプリオン抑制メカニズムの異常型プリオンタンパクの分解機構を含めた詳細な解析、2) I型インターフェロンシグナル経路を視点としたプリオン病薬の開発の基盤構築の遂行を目的とする。そのために、I型インターフェロンの細胞内シグナル伝達の詳細やI型インターフェロンによって惹起される遺伝子におけるプリオン感染に対する影響を評価していく必要がある。引き続き、異常型プリオンタンパクを恒常的に発現したプリオン持続感染細胞を用いた検討を主体にしていくが、さらに、様々なインターフェロン刺激遺伝子の安定化発現細胞株の作製などを行い、Ex vivoでのプリオン感染実験を行い、プリオン感染に対する抵抗性について検討する必要性がある。I型インターフェロンにより惹起される遺伝子の中で、プリオン感染に対して影響を及ぼす因子が絞られつつあるので、その遺伝子における生化学的、分子生物学的手法を用いた解析をプリオン感染モデル細胞や動物を用いて行う。さらにI型インターフェロンのプリオン抑制効果のメカニズムに迫るためにも、プリオンタンパクの分解機構の解析も引き続き行って行く。併せて継続して行われているI型インターフェロン受容体をターゲットにした低分子化合物の開発なども含め、効率よく計画を遂行していくことに従事する。
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