研究課題/領域番号 |
23K24256
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補助金の研究課題番号 |
22H02995 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
他田 真理 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (30646394)
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研究分担者 |
池内 健 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20372469)
竹林 浩秀 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60353439)
加藤 隆弘 九州大学, 医学研究院, 准教授 (70546465)
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | CSF1R / microglia / astrocyte / neuropathology / Microglia / Neuropathology / ALSP / snRNA-seq / spatial gene expression / 認知症 / ミクログリア / アストロサイト |
研究開始時の研究の概要 |
大脳白質の病変は、認知機能低下に深く関わっており、その進行抑制は認知症治療の重要なターゲットである。白質の恒常性維持にはミクログリアとアストロサイトが大きな役割を担っている。我々は、ミクログリアの分化や機能に必須であるCSF1Rの変異による遺伝性白質脳症、ALSPの解析を行い、ミクログリア-アストロサイト連関により白質変性が加速するという仮説に至った。本研究では、ミクログリアの異常により生じるALSPをモデルとしてこの仮説を証明し、治療標的となりうる鍵分子を同定する。そして、白質変性の進行抑制を標的とした、認知症疾患に広く応用可能な治療法開発の基盤を作る。
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研究実績の概要 |
本研究の特徴は、1) ALSPの患者脳の解析から見出した、恒常性ミクログリアの不足とアストロサイトの過剰反応に着想をえて、ミクログリアとアストロサイトの相互制御機構に着目した点、2) ALSP患者の剖検脳を用いて、単一核遺伝子発現解析と、10×genomics社の最新の手法であるVisium空間的遺伝子発現解析により、網羅的にRNA発現解析を行い、直接的に患者脳における遺伝子発現変化をとらえ、鍵分子を同定する点である。 本年度は昨年度の結果を踏まえて、VisiumについてはFFPE切片の方が信頼性が高いと判断し、さらにALSP例、対照例の切片を追加で行った。サンプルのDV200値が基準以上であるRNAの質が保たれているサンプルを用いることで、安定してデータを得ることができる様になった。ミクログリアについて両手法から得られたデータを統合し、空間情報を有する遺伝子発現情報としてALSPとコントロールを比較検討した。その結果、ALSPにおけるミクログリアでは、疾患特異的な遺伝子発現を示す群は指摘できず、一方で、組織学的に推測されている様に恒常性マーカー遺伝子が発現低下しているミクログリアが主要なクラスターを形成していることがが確認された。一方で、炎症性マーカーの発現が上昇している一群が局所で見られ、アストロサイトとともに特徴的な微小環境を形成していることが見出された。現在、遺伝子発現解析から得られたデータの妥当性を検証するために免疫染色を進めており、いくつかの分子の免疫染色でクラスターの特徴が描出された。 snRNA-seq及びVisium空間的遺伝子発現解析のデータが概ね揃い、検証も順調に進捗している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度の結果を踏まえて、VisiumについてはFFPE切片の方が信頼性が高いと判断し、さらにALSP例、対照例の切片を追加で行った。サンプルのDV200値が基準以上であるRNAの質が保たれているサンプルを用いることで、安定してデータを得ることができる様になった。ミクログリアについて両手法から得られたデータを統合し、空間情報を有する遺伝子発現情報としてALSPとコントロールを比較検討した。その結果、ALSPにおけるミクログリアでは、疾患特異的な遺伝子発現を示す群は指摘できず、一方で、組織学的に推測されている様に恒常性マーカー遺伝子が発現低下しているミクログリアが主要なクラスターを形成していることがが確認された。一方で、炎症性マーカーの発現が上昇している一群が局所で見られ、アストロサイトとともに特徴的な微小環境を形成していることが見出された。現在、遺伝子発現解析から得られたデータの妥当性を検証するために免疫染色を進めており、いくつかの分子の免疫染色でクラスターの特徴が描出された。 snRNA-seq及びVisium空間的遺伝子発現解析のデータが概ね揃い、検証も順調に進捗している。また、ミクログリア以外の細胞の特徴的遺伝子発現変動解析も進め細胞間の解析も行なっており、ミクログリアとアストロサイトの局所での活性化や、ミクログリアとオリゴデンドロサイトで関連して変動する遺伝子も検出されており、概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ミクログリアとアストロサイトのsnRNAseqと空間的遺伝子発現解析が概ね終了した。今後はミクログリアとアストロサイト以外の中枢神経系構成細胞、オリゴデンドロサイトやOPC、神経細胞、血管内皮について、順次解析を進める。ミクログリアとアストロサイトが連関してproinflammatoryな微小環境を形成していることが見出されたため、その組織学的検証を進める。また、ミクログリアとオリゴデンドロサイトやOPCの相互連関が 細胞間の解析で見出されてきているため、白質障害機序に結びつく可能性を考え、その妥当性も検証を進める。本研究では、副次的に皮質の層構造や、白質といった解剖学的位置依存性のミクログリアやアストロサイトの遺伝子発現プロファイルが描出された。解剖学的位置依存性のグリアの遺伝子発現プロファイルの理解は脳恒常性維持の理解につながる可能性があり、このデータの蓋然性については、組織学的に各クラスターのマーカー分子の免疫染色やin situ hybridizationで十分に確認作業を進めてゆく。 ALSP例で今年度見出された所見については、最終的には患者由来のiMG細胞やミクログリアが減少するモデルマウスを用いた検証を行ってゆきたい。
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