研究課題/領域番号 |
23K24270
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補助金の研究課題番号 |
22H03009 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小川 美香子 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20344351)
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研究分担者 |
久下 裕司 北海道大学, アイソトープ総合センター, 教授 (70321958)
平田 健司 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30431365)
鍛代 悠一 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (90756165)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | PET / がん免疫 / 微小環境 / エネルギー代謝 / 乳酸 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、腫瘍におけるがん微小環境の役割が大きく注目され、免疫チェックポイント阻害剤などがん微小環境を標的とした治療法も登場した。また最近、腫瘍ではがん細胞と免疫細胞の間でエネルギー代謝のせめぎ合いが起こり、がん微小環境のエネルギー代謝の制御が治療効果に直結していることも明らかとなってきた。 そこで、本研究では、がん微小環境を標的とした治療において、治療前後のがん微小環境の変化が、がん組織のエネルギー代謝にどのような変化を及ぼすかを検討し、治療過程におけるエネルギー代謝を核医学イメージングにて経時的に評価するとともに、治療効果予測への応用について検討する。
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研究実績の概要 |
これまでに抗PD-1治療の初期段階でがん細胞の糖代謝能が亢進し、 [18F]FDGの集積が上昇することを示した。また、このがん細胞の糖代謝は免疫細胞の活性化により減少することも示した。しかしながら、これまで使用してきたB16F10モデルは、免疫細胞が少なく免疫細胞自体の評価が行えなかった。そこでより免疫原性が高いCT26を移植した担がんマウスモデルを用いて検討を行った結果、がん細胞と免疫細胞の糖代謝能が減少したにも関わらず、[18F]FDGの集積量は変化しなかった。この理由として、抗PD-1療法による腫瘍内の血液灌流の亢進が一因である可能性が考えられた。 そこで今年度、低酸素PETイメージング剤[18F]FMISOを用い検討を行った。 [18F]FMISO-PETによる低酸素イメージングでは変化は認められなかったものの、[18F]FMISO低集積の領域では免疫細胞および成熟した血管が多いことが示された。そこで、Pimonidazole染色による低酸素評価を行ったところ、PD-1群のがん組織全体、がん細胞および免疫細胞における低酸素状態の細胞の割合が有意に低いことが示された。また、治療早期の時点から腫瘍内に浸潤する免疫細胞が増加し、抗腫瘍免疫が活性化していることが示唆された。以上の結果から、抗PD-1療法は腫瘍体積に変化がない治療初期において免疫細胞の浸潤量を増加させ、腫瘍内の低酸素状態にある細胞の割合を減少させることが示された。 さらに、新規開発した乳酸代謝イメージング剤[18F]fluorolactateを用い検討を行った。インビトロでの検討では、より免疫原性が高いMC38細胞と比較して、CT26細胞への集積のほうが高かった。また、抗PD-1療法における代謝の変化を[18F]FDGと比較したが、腫瘍への集積に有意な差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の結果をうけ、今年度[18F]FMISOおよびPimonidazoleを用いた検討を行い、抗PD-1療法による低酸素環境が[18F]FDG集積に影響することを見出した。PETイメージング画像としては、差異を見出すことはできなかったが、オートラジオグラフィにより非低酸素領域では、CD3+、CD8+およびCD31+、αSMA+細胞が多いことが明らかとなった。本結果から、放射線治療との併用時における微小環境変化に関する検討も進めている。 また、[18F]fluorolactateを用いた検討では、がん細胞への[18F] fluorolactate取り込みは、pHや酸素濃度によって変化し、[18F] fluorolactate -PETによって腫瘍内の乳酸取り込みを描出できる可能性が示された。また、抗PD-1抗体を用い、抗腫瘍免疫応答を活性化させた際の腫瘍への[18F]fluorolactateおよび[18F]FDG集積を検討した。MC38モデルマウスでは大きな違いは認められなかったが、微小環境変化を含めさらに検討を行う。 なお、[18F]fluorolactateは[18F]FDGと異なり、正常の脳組織にとりこまれず、[18F]fluorolactateは脳腫瘍イメージング剤として有用である可能性も示された。 以上より、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、脂肪酸代謝イメージング剤である[125/123I]BMIPP、酸化的リン酸化を評価するイメージング剤である[18F]F-acetateを用いた検討も開始しており、今後も引き続き検討を行う。さらに、検討を進めてきた。本年度は担癌マウスを用い、引き続きがん免疫とエネルギー代謝の関連について検討を進めるとともに、治療効果との関係についても検討を行う。また、細胞増殖イメージング剤[18F]FLTを用い検討を進める。 どのイメージング剤の集積ががん微小環境の腫瘍増殖促進的状態と関連するのか、あるいは増殖抑制的状態と関連するのかを明らかにし、さらに、核医学イメージングの非侵襲的特性を生かし経時的変化に関する解析も加えることで、治療過程における将来的ながん微小環境の状態を反映するイメージング剤について評価を行う。 また、申請者は現在、α線治療時のがん微小環境への影響について検討している。すなわち、β線治療では飛程が長いため微小環境中の免疫細胞も死滅させるが、α線は飛程が短いため免疫細胞への影響が小さくがん免疫の活性化に有利なのではないかと考え検討をおこなっている。そこで、2025年度には核医学治療時のPETによるがん微小環境評価への展開を目指す。
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