研究課題/領域番号 |
23K24298
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補助金の研究課題番号 |
22H03037 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
犬飼 岳史 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30293450)
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研究分担者 |
大城 浩子 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (50377537)
合井 久美子 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (70324192)
赤羽 弘資 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (90377531)
玉井 望雅 山梨大学, 大学院総合研究部, 臨床助教 (90747453)
原間 大輔 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (10774078)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 急性リンパ性白血病 / 薬剤感受性 / ゲノム情報 / 難治性 / ゲノム編集 / 個別化治療 / 白血病 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、急性リンパ性白血病(ALL)症例の治療成績のさらなる向上を目指して、ALL症例の白血病細胞を培養して樹立された120株を超える多数の細胞株を活用し、白血病細胞の薬剤感受性と関連するゲノム情報を同定する取り組みである。ALLの化学療法では、作用の異なる複数の薬剤が併用投与されるため、臨床経過から個々の薬剤に対する感受性を評価することが困難である。本研究では、培養した白血病細胞を研究対象とすることによって、多様な薬剤に対する感受性を実験系で容易に評価することができる。ALL細胞株をモデルに薬剤感受性と関連するゲノム情報を明らかにすることによって、個別化した治療法の確立への貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、主として難治性の急性リンパ性白血病症例から樹立された多数の細胞株を活用して、薬剤感受性と関連するゲノム情報を同定する新たな取り組みである。各株の多様な化学療法剤・低分子化合物・細胞傷害因子の感受性とゲノム情報をデータベース化し、難治性白血病における薬剤感受性モデルとしての有用性について成果をあげてきた。加えて、ゲノム編集技術を積極的に活用して、薬剤耐性に関与するゲノム異常を内因性の遺伝子に導入し、ALLの薬剤耐性におけるモデル系を構築することにも努めてきた。 本年度の論文成果としては、Philadelphia染色体陽性(Ph+)白血病に対するTKI療法において臨床的に大きな問題となるBCR::ABL1融合遺伝子のT315I変異を、はじめてヒトのリンパ球系白血病細胞株にCRISPR/Cas9による相同組み換えで導入することに成功した(Int J Hematol.2022;116:534)。さらに、BCR遺伝子とABL1遺伝子の転座切断点をCRISPR/Cas9によって同時に切断することによって、ヒト白血病細胞株において人工的にPhiladelphia染色体の形成を誘導することに世界で初めて成功した(Cancer Gene Ther.2023;30:38)。また小児ALLの維持療法の基本薬である6MPに対して特異的な耐性を誘導し、再発に深く関与するNT5C2およびPRPS1遺伝子におけるhotspot変異のうち、R39Q変異とS103N変異を、CRISPR/Cas9による相同組み換えで導入することに世界で初めて成功した(Mol Pharmacol.2023;103:199)。これら細胞系は、難治性白血病のモデル実験系として、新たな治療方法の検証に極めて有用なツールとなることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究では、B前駆細胞性ALL株100株とT-ALL株21株の合計121株を対象にして、total RNAによるRNA-seqをIllumina NovaSeq 6000を用いて26.7M readsの取得リード数で実施した。これによって、今後は薬剤感受性やゲノム異常と遺伝子発現との関連性について、網羅的に評価することが可能となっている。 続いて、TP53遺伝子の変異が小児ALLにおける化学療法感受性に対して及ぼす影響を明らかにするとともに、TP53遺伝子に変異があっても感受性が維持される薬剤をスクリーニングすることを目的に、TP53遺伝子に変異を持たず種々の化学療法剤に高感受性を示すBCP-ALL細胞株の11株とT-ALL細胞株1株の合計12株において、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いてTP53遺伝子のノックアウトを試み、TP53-null亜株の樹立に成功している。これら12株では、TP53遺伝子がwild typeの親株と、TP53-nullの亜株をペアで保有することになり、世界に類のない貴重な研究材料となる。 さらにPh陽性白血病細胞株のBCR::ABL1遺伝子に、極めて強いTKI耐性を誘導するT315MおよびT315I変異とのcompound変異をCRISPR/Cas9による相同組み換えによって導入することに成功している。また、新たなゲノム編集技術であるBase editing法を用いて、T315I変異をsingle alleleのBCR::ABL1遺伝子にのみ導入することにも成功した。加えて、TP53遺伝子に新たに同定した変異をBase editing法によって導入することにも成功した。これらの変異体を導入した亜株を活用して、各変異の薬剤感受性への影響について解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、小児ALL治療において基本となる化学療法剤のそれぞれの感受性を規定するゲノム情報を、白血病細胞株をモデル系として、遺伝子多型・変異・エピゲノム修飾の3つの視点から探索し、その関連性を臨床検体の公開データベースとゲノム編集技術を活用して検証して、信頼度の高い感受性バイオマーカーを同定することで、将来的な個別化治療への道を拓くことを目指す。 本研究は、薬剤感受性のゲノムマーカーを、圧倒的な規模の白血病細胞株バンクを活用し薬物動態に基づく感受性を評価して探索するという、類のない取り組みである。本研究は、多様な研究者と連携して白血病治療の個別化治療を目指すものであり、他のがん種への応用や「白血病とは何か」という根源的課題への成果も期待される。 具体的には、細胞株バンクの規模と薬剤感受性・ゲノム情報の強化を継続しつつ、前年度からの「胃がんのアスパラギナーゼ感受性」、「スーパーエンハンサーの機能解析」、「ゲノム編集による薬剤耐性遺伝子変異モデル」、「NUDT15 KO・ゼブラフィッシュの6MP感受性」の研究を継続・発展させる。 また、本年度からは「網羅型研究」として、一塩基多型・遺伝子変異・メチル化についてゲノム情報を網羅的に解析して薬剤ごとに解析を進めて、薬剤感受性マーカーの候補となるゲノム情報を検討する。さらに、「探索型研究」として、化合物及びCRISPRの各ライブラリーを用いて、新たな治療薬及び薬剤感受性遺伝子のスクリーニングを推進する。
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