研究課題
基盤研究(B)
本研究は、メチル化(5mC)の異常に起因するインプリンティング異常症において、ヒドロキシメチル化(5hmC)が病態にどのように関与しているかを解明することが目的である。5mCと5hmCを区別するための酸化バイサルファイト処理に続いてゲノムワイドプロファイリングを行い、“hydroxymethylome”を明らかにする。さらに脳サンプルの解析や、疾患特異的iPS細胞を用いたin vitroモデルに対して5mC→5hmC変換酵素TET1-3のゲノム編集ノックアウトと神経分化誘導を行い、インプリンティング異常症における神経症状の病態解明と、化合物スクリーニングによる治療薬の発見を目指す。
本研究は、DNAメチル化(5mC)の異常に起因するインプリンティング異常症において、ヒドロキシメチル化(5hmC)が病態にどのように関与しているかを解明することが目的である。不可逆的なゲノム配列の異常とは対照的に、メチル化をはじめとするエピゲノムは可塑性を持ち、治療の標的となる可能性がある。この観点から、5hmCが脱メチル化の中間代謝物であることに注目し、5mC/5hmCのダイナミックな挙動とその制御機構を解明することで、新しい診断方法の開発、メチル化・脱メチル化を制御するターゲット分子の同定、ドラッグスクリーニングによるエピゲノム治療薬の開発を目指す。具体的には、5mCと5hmCを区別するための酸化バイサルファイト処理に続いて、パイロシークエンサー、メチル化ビーズアレイ(Illumina Infinium HumanMethylationEPIC BeadChip)による解析を行う。また長鎖シークエンサー(Oxford Nanopore Technologies)による5mC/5hmCの解析を行う。これらの手法により、一塩基レベルのヒドロキシメチル化プロファイル、すなわち“hydroxymethylome”および“methylome”を明らかにする。さらに脳サンプルの解析や、疾患特異的iPS細胞を用いたin vitroモデルに対して5mC→5hmC変換酵素TET1-3のゲノム編集によるノックアウトと神経分化誘導を予定している。本手法により、インプリンティング異常疾患において神経症状発症にいたる分子機構の解明およびターゲット分子の同定が可能となる。この知見を元にハイスループットスクリーニング系を構築し、ドラッグリポジショニングによる神経症状改善薬(化合物)の探索を行う。
2: おおむね順調に進展している
インプリンティング異常症例の酸化バイサルファイト処理、パイロシークエンス解析は順調に進行している。一部のサンプルに関してはメチル化ビーズアレイを実施し、現在データを解析中である。また、バイサルファイト処理なしで5mC/5hmCの解析が可能とされる長鎖シークエンサー(Oxford Nanopore P2Solo)を導入した。解析の過程で新規のインプリンティング疾患や片親性ダイソミーを複数同定し、論文執筆中である。
引き続きインプリンティング異常症例の酸化バイサルファイト処理およびメチル化ビーズアレイ解析を行う。また長鎖シークエンサー(Oxford Nanopore P2Solo)による5mC/5hmCの解析を行い、その精度評価と臨床応用について検討する。さらに症例の脳サンプルの解析、および疾患特異的iPS細胞を用いたin vitroモデルに対して5mC→5hmC変換酵素TET1-3のゲノム編集によ るノックアウトと神経分化誘導を行い、インプリンティング異常症の神経症状発症機構を解明し、症状を改善するエピゲノム治療薬の開発・発見を目指す。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 8件)
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