研究課題
基盤研究(B)
我々が開発したES/iPS細胞由来心筋細胞の成熟法を用いて、成熟過程におけるサルコメアとミトコンドリアの連関、特にその分布や形成過程を、多面的なアプローチにより明らかにする。具体的には、心筋細胞の成熟過程のライブイメージングから、サルコメアとミトコンドリアが織りなす形態変化の経時的な変化を明らかにする。さらに、この過程で重要な役割を担うと予想される、サルコメア、カルシウム、ミトコンドリア機能を操作し、心筋細胞の成熟と、サルコメアおよびミトコンドリアの整列、機能獲得メカニズムを明らかにする。また疾患マウス、iPS細胞を組みあわせ、ミトコンドリアとサルコメアの相互連関を明らかにする。
本研究課題では心筋細胞の成熟過程におけるサルコメアとミトコンドリアの相互作用について研究を行っている。初年度である2022年度はまず成熟過程におけるサルコメアの収縮およびカルシウムイオン動態について検討を行った。1. 我々が有する成熟レポーターであるMyom2-RFP ノックインマウスES細胞由来心筋細胞に対し、サルコメアの収縮を阻害し、Myom2-RFPの発現を評価した。 心筋細胞の収縮を完全には抑制しない、低濃度の阻害剤処理であっても、Myom2-RFP陽性率が低下し、サルコメアの収縮そのものが心筋細胞の成熟に影響を与えていると予想された。サルコメアの収縮は主に細胞内カルシウムイオン濃度の増加により制御されるため、種々のカルシウムイオンチャネルブロッカーを用いたところやはりMyom2-RFP陽性率が低下した。今後、ミトコンドリア形態やその活性評価につなげる予定である。2. サルコメアの整列とミトコンドリアの整列を評価するために、ライブイメージングを行うことを計画した。様々なタンパクについて容易にライブイメージングを可能とするため、サルコメアおよびミトコンドリアに局在するタンパクにGFPないしRFPを付加した融合タンパク質を設計し、分化心筋細胞で発現できるよう心筋特異的プロモーター下に発現させるアデノ随伴ウイルスベクターを作成した。サルコメアに局在するTNNT2, TPM1, TNNI3, ACTN2, ACTC2などは予想通りの局在が観察された。一方で、ミトコンドリア局在シグナルを付加したGFPはミトコンドリアに局在せず、ミトコンドリア機能に影響を与えない融合タンパク質発現ベクターの設計と検証を進めている。
2: おおむね順調に進展している
ライブイメージングのための基盤構築およびサルコメアの収縮と成熟に関し、予定していた基礎的な知見が得られた。
得られている知見に基づき、本研究課題をすすめることで、ミトコンドリアとサルコメアの相互作用を明らかにできると考えられる。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
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