研究課題
基盤研究(B)
近年の幹細胞研究、ヒトおよびマウス発生遺伝学の進歩により、幹細胞から任意の臓器を作成する研究が世界的に進みはじめた。今回着目する気管軟骨パターンは、C型リングの繰返し構造が特徴で、その先天性形成不全は呼吸効率を著しく下げる。気管軟骨研究は、研究アプローチが乏しく、理解が進んでこなかった。本研究では、①マウス気管の時系列1細胞転写解析を使った規則的組織構造の自己組織化制御シグナルの統合的理解、②ヒトES細胞からの分化誘導系を使った軟骨自己組織化の素過程の解明を目指す。最終的には、気管形成不全のメカニズムを理解し、ヒト疾患由来ES細胞を作成して気管形成不全モデル確立に挑戦する。
呼吸器は生命活動の根幹を担う臓器である。近年の幹細胞研究、ヒトおよびマウス発生遺伝学の進歩により、当該分野は世界的に研究が進みはじめた。我々は先行研究において、呼吸器を含む臓器固有の間充織細胞をヒトおよびマウス幹細胞から誘導する手法を報告している。今回着目する気管軟骨パターンは、C型リングの繰返し構造が特徴で、その先天性形成不全は呼吸効率を著しく下げる。気管軟骨研究 は、研究アプローチが乏しく、理解が進んでこなかった。本研究では、特に、ヒトES細胞からの分化誘導系を使った軟骨自己組織化の素過程の解明に焦点をあてて解析をおこなった。ヒトESおよびiPS細胞から呼吸器の間充織細胞を分化誘導し、これらの間充織細胞を用いて、気管軟骨の再構成を試みた。前年度の検討より、気管軟骨の誘導に必要なシグナルを同定し、これらの因子を活性化することにより、気管軟骨を誘導した。特に、RA, WNT, BMP, TGFbetaシグナルの活性化が気管軟骨の誘導に必要であった。並行して、ヒト疾患モデルの作製のため、気管形成不全を起こす変異を持ったヒトES細胞を作成を開始した。その結果、特にHHシグナルの標的遺伝子であるFOXF1, 気管軟骨軟化症に関わるGLI3, 呼吸器間充織のマスターレギュレータであるTBX4遺伝子の改変ES細胞の樹立に成功した。今後、これらのES細胞から軟骨細胞分化誘導を行い、軟骨形成における役割を明らかにする。最終的には、気管形成不全 のメカニズムを理解し、ヒト疾患由来ES細胞を作成して気管形成不全モデル確立に挑戦する。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、ヒト多能性幹細胞からの軟骨細胞の分化誘導に焦点を当てて検討を進めた。その結果、予定通り、軟骨細胞誘導の効率を改善することに成功した。加えて、ヒト疾患モデルを樹立する目的で、気管軟骨の発生・疾患に関わる多様な遺伝子の改変細胞を細胞精することができた。これらの検討結果は、本年度の研究計画とおおむね一致しており、順調に研究が進捗しているといえる。
今後は、より気管軟骨のパターンを反映した構造をin vitroで作成するため、さらに、分化誘導に必要な因子の作用濃度・時間について検討を行う。さらに、ペレット培養・オルガノイド培養により、三次元での軟骨構想の構築を行う。さらに、本年度作製した、遺伝子改変幹細胞を用いることによって、これらの遺伝子が気管軟骨形成に与える影響について検討を行う。
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Biorxiv
巻: -
10.1101/2024.02.06.577460
Nat Protoc
巻: 17 号: 11 ページ: 2699-2719
10.1038/s41596-022-00733-3