研究課題/領域番号 |
23K24346
|
補助金の研究課題番号 |
22H03085 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
内田 信一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50262184)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
|
キーワード | Protein kinase A / AKAPs / 先天性腎性尿崩症 / 肥満症 / PKA / AQP2 / AKAP / 腎性尿崩症 / LRBA |
研究開始時の研究の概要 |
cAMP/protein kinase A (PKA) シグナルは、生体内において種々の役割を担っている。PKAは、腎臓集合管においては尿量を調節しており、脂肪細胞においては脂肪を分解する。申請者は尿濃縮効果を有するPKA活性化化合物FMP-API-1/27を発見し、化合物の標的タンパクとして、水恒常性維持に必須の分子LRBAを同定した。本研究では、PKA活性化化合物を開発し、化合物を病態解明のツールとして用いることで新たなPKA病態の解明を進める。
|
研究実績の概要 |
本研究では、我々が発見した新規 protein kinase A(PKA)制御法を用いることで、先天性腎性尿崩症や肥満症などの治療薬開発に難渋している疾患の病態解明と新規治療戦略の提言を目指す。申請者は、腎臓集合管において尿濃縮力を調節するバゾプレシン/cAMP/PKA/AQP2水チャネルシグナル伝達系の研究を行っており、cAMPを介さずにPKA/AQP2を直接的に活性化する低分子化合物FMP-API-1/27を発見した。この化合物の作用機序と標的タンパクの同定を突破口として尿濃縮に直結する新規PKAシグナル伝達系を解明するとともに、リード化合物の誘導体展開や類似構造を指標としたin silicoのスクリーニングにより多数のPKA活性制御薬の開発を進める。同様の研究手法により肥満症など他のPKA関連疾患の解析を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FMP-API-1/27は、PKAとPKAのアンカータンパク(AKAP)との結合を阻害する作用がある。50種類以上のAKAPの内、FMP-API-1/27は、LRBA-PKA結合を阻害することを明らかにした。Lrbaノックアウトマウスは、AKAPノックアウトマウスの中で初めて多尿の表現型を呈しており、FMP-API-1/27の創薬標的として矛盾しなかった(PNAS.2022)。さらに、LRBA-PKA複合体とAQP2水チャネルが腎臓集合管のリサイクリングエンドソームに局在することを明らかにし、脱水時にバゾプレシンの刺激が入ると、AQP2がPKAによってリン酸化され、瞬時にリサイクリングエンドソームから細胞膜へと輸送されることを報告した(J Physiol.2023)。開発した化合物の中には、血管内皮細胞のPKAを活性化するものがあり、血管透過性を制御する新規PKAシグナル分子ZNF185を発見することができた(Commun Biol. 2023)。また、白色脂肪細胞において既存薬であるphosphodiesterase(PDE) 4阻害薬(ロフルミラスト)やβ3受容体アゴニスト(ミラベグロン)と同等以上のPKA活性化効果を持つ化合物の同定に成功した。高脂肪食負荷肥満モデルマウスにこの化合物を16週間経口投与すると、抗肥満、抗糖尿病、脂肪肝抑制効果などが得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
Lrbaノックアウトマウスは、水のみならず塩の出納も制御していた。Lrbaをノックアウトすると、SPAKキナーゼの発現量が低下し、尿から塩を再吸収するのに必要なNa+-Cl-共輸送体を活性化できないことを明らかにしている。これらの情報をもとにLrbaノックアウトマウスを用いて採血(Na, K, Cl, Ca, Mgなど)、尿検査(尿浸透圧、Na, K, Cl など)、負荷試験(脱水試験、低塩食・高塩食負荷など)、利尿剤試験(フロセミド、サイアザイドなど)を実施し、LRBA欠損症患者において評価すべき臨床検査項目を決定する。 LRBA欠損症患者の10-20%程度に慢性腎不全を認めるが、検尿異常が無い症例が多く今まで腎不全の原因が不明であった。LRBA欠損症では、60%以上の患者に自己免疫性腸炎による慢性下痢を認め、さらに70%以上の患者が低ガンマグロブリン血症により感染症を繰り返し頻回にシックデイを経験することから、水や塩が不足しやすい状況にある。Lrbaノックアウトマウスの解析から、LRBAの機能が低下すると水と塩の尿中への排泄量が増加することを明らかにしており、脱水症の進行に拍車がかかる可能性が高い。高度の脱水症は、一過性の腎前性腎不全にとどまらず慢性腎不全へ移行する原因になる。そこで、LRBA欠損症患者の腎臓に関する患者情報を取得するために倫理審査の承認を取得した。LRBA欠損症に合併する腎機能障害に関する多施設共同後ろ向き観察研究を実施する。
|