研究課題/領域番号 |
23K24359
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補助金の研究課題番号 |
22H03099 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
星居 孝之 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (20464042)
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研究分担者 |
増田 豪 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任講師 (70383940)
荒木 喜美 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (90211705)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | ヒストンメチル化 / 転写 / ゲノム構造 / 白血病 / 休止解除 / BuGZ / 転写伸長 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒストンH3のK4トリメチル化はES細胞の未分化性維持やがん化に重要であり、修飾酵素は重要な薬剤標的である。近年申請者はH3K4メチル化酵素SETD1Aが転写伸長補因子と結合し、酵素活性とは独立した機構で急性骨髄性白血病(AML)細胞増殖に関わることを報告した。本研究ではゲノム構造依存的転写伸長制御機序を解明し、エピゲノム酵素の持つ新規転写制御の提唱と白血病治療薬開発の基盤形成を目指す。
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研究実績の概要 |
H3K4メチル化酵素SETD1Aは転写伸長補因子のCyclin Kと結合し、酵素活性とは独立した機構で急性骨髄性白血病(AML)細胞増殖を促進する(Hoshii T et al. 2018, Cell)。さらに直接的な下流標的因子を同定するため、degTAGシステムを用いてSETD1Aを速やかに分解させた後に、機能評価(細胞増殖評価、RNA発現解析、ヒストン修飾解析など)を行なった。その結果、SETD1Aは双方向プロモーター下で制御されるHead-to-Head(H2H)遺伝子群の発現に必須であり、DNA修復とミトコンドリア代謝を同時に活性化することを見出した(Hoshii T et al, 2022, Cell Reports)。本年度はその転写制御に関わる新規制御補因子としてBuGZとBUB3の結合と、その役割を明らかにした。BuGZとBUB3は細胞周期のM期に必要な蛋白とされているが、G1/S期においては核内に強い発現を認め、クロマチン上ではSETD1Aの存在する転写開始点や周囲のエンハンサー領域に跨って局在していることを見出した。BuGZとBUB3は共にSETD1AのCyclin K結合領域近位の保存されたアミノ酸配列と結合し、リン酸化状態に依存して結合が制御されうることが示唆された。また細胞周期のM期におけるBuGZの働きの一つとして相分離形成に関わることが報告されていることから、相分離に必要となるC末端側の天然変性領域に変異を導入したBuGZ変異体を用いて解析を行った結果、BuGZの相分離形成がSETD1Aの結合と白血病細胞の増殖促進に必須であることが明らかとなった。さらにSETD1Aの役割はM期ではなく、G1/S期であることを確認した。以上の結果から、伸長制御に関わる新規分子機序が明らかとなった(Perlee S et al. 2023, EMBO Rep)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析から、SETD1AがAML細胞で必須となる要因として特徴的な遺伝子群の発現制御を見出しているが、古典的なSETD1A複合体因子を破壊しても同じような発現変化は観察されないことを確認しており、全く異なる複合体の形成と役割が示唆されてきた。これまでの研究から、新規複合体に関わる因子の共通点として、1)SETD1A蛋白の中央部分に結合する、2)DNA損傷修復に関わることが報告されている、3)クロマチン・DNAへの結合ドメインを有する・もしくは他の複合体を介してクロマチン・DNAへの結合が示唆されている、ことが明らかとなってきた。これまでに得た質量分析の結果や、公共データベースから上記の定義に合致する分子を絞り込み、転写の休止解除に関わる新規上流制御分子の同定を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではDNA損傷とミトコンドリアの連動を生み出す転写制御の分子機構解明を一つの課題としており、これまでの研究からRNA polymeraseの活性の変化や、転写伸長制御に関わる新規複合体が明らかとなってきた。SETD1Aの酵素活性非依存的な役割についてはES細胞の未分化性に関わることが別グループからも報告されており、白血病とES細胞に共通した幹細胞性の制御に必須の役割であると考えられる。今後は現在までに絞り込みを行った新規上流制御因子から、SETD1Aの遺伝子発現変動に関わる因子を同定し、その幹細胞性における役割を明らかにする計画である。これまでの研究で活用したAMLモデルに加え、他の白血病モデルやES細胞を活用し、研究を推進する計画である。
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