研究課題/領域番号 |
23K24386
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補助金の研究課題番号 |
22H03127 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
有馬 寛 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50422770)
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研究分担者 |
岩間 信太郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (00733536)
須賀 英隆 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20569818)
赤塚 美樹 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (70333391)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 下垂体 / 下垂体機能低下症 / 免疫チェックポイント阻害薬 / PD-1 / PD-L1 / CTLA-4 |
研究開始時の研究の概要 |
ICIはその優れた抗腫瘍効果から種々の悪性腫瘍に対する治療適応が拡大しているが、ICI治療においては自己免疫機序の関与が推察されるirAEsの発生が問題となっており、この中に下垂体機能障害を含めた内分泌障害がある。本研究では、ICIによる下垂体機能障害に特異的な自己抗体とその標的抗原を同定するとともに、抗体の有無を評価する検査法を確立し、ICIによる下垂体機能障害の発症予測を可能とするシステムの確立を目指す。
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研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)によって高率に生じる下垂体機能障害には、主に抗PD-1抗体により発症するACTH単独欠損症と抗CTLA-4抗体により発症する複合型下垂体機能低下症という異なる2つの病型が存在する。そしていずれの病型においても副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌低下が必発であることから、診断が遅れた場合は続発性副腎不全から副腎クリーゼともなりうる重篤な有害事象である。一方、下垂体機能障害を発症した症例は非発症例と比し生命予後が延長すること、発症者の血中には自己抗体(抗下垂体抗体)が認められることを報告した。しかしながら、その自己抗体の標的抗原は明らかではない。 本研究の目的は、下垂体機能障害発症者に認められる抗下垂体抗体の標的抗原を同定し、ICIによる下垂体機能障害の発症予測検査システムを確立することである。 本研究では、正常ヒト下垂体mRNAからcDNAライブラリを作成し、抗CTLA-4抗体関連複合型下垂体機能低下症を発症した4名の患者血清を用いた発現クローニング法により抗下垂体抗体の標的抗原を網羅的に解析した。その結果、4名の発症時血清と反応する下垂体特異的蛋白として、3つの候補を抽出した。候補蛋白を用いたELISA開発を令和5年度に検討したが非特異的反応が認められたため、別の評価法開発を進めた。その結果、cell-basedアッセイにより疾患特異性が改善する可能性が示唆された。現在、哺乳類細胞株に候補蛋白をコードするプラスミドを導入し、患者血清との反応を評価する検査システムの開発を進めている。また、ICI関連下垂体機能障害発症者ではHLA-DR15の保有率が高いことから、本研究で抽出した3つの候補蛋白とHLAとの結合についても解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、ヒト下垂体cDNAライブラリを用いた発現クローニング法により抗下垂体抗体の標的抗原を同定し、ELISAによる抗体定量評価システムの開発を計画していた。しかしながら、ELISAによる抗体定量評価では、対照群でも非特異的反応が認められた。そのため、抗下垂体抗体の新たな評価法として、cell-basedアッセイの開発を進めている。 本研究で最初に行った発現クローニングによるスクリーニングにおいても16000種類のcDNAライブラリを哺乳類細胞株HEK293Tに導入し、血清との反応から標的候補蛋白を絞り込んだ。したがって、リコンビナント蛋白を用いたELISA法では、蛋白の立体構造の変化によって抗下垂体抗体の反応が認められなかった可能性が示唆される。そのため、HEK293T細胞に候補蛋白をコードするcDNAを含むプラスミドを導入し、細胞と血清との反応を評価する新たな検査システムの検討を進めている。 今後、交際発現した候補蛋白発現細胞と患者および下垂体障害非発症者(対照群)との反応を評価する免疫組織化学法の検討を進める予定である。また、ICI関連下垂体機能障害に関連するHLA-DR15と候補蛋白との結合も解析を進めており、候補抗原とHLA複合体に対する患者血清の反応を評価する検査システムの開発も検討している。 以上の通り、当初の計画に加えて新たなアッセイを検討していることから予定より進捗が遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ICIによるがん治療では、抗PD-1抗体単独療法で6%、抗CLTA-4抗体療法で24%と極めて高い頻度で下垂体機能障害が発生する。そして、下垂体機能障害ではACTH分泌低下症が必発であることから、見逃されれば副腎クリーゼにもなりうる重篤な有害事象である。一方、発症者は非発症者と比し生命予後が延長することから、発症前にリスクを判別する指標を確立することの意義は極めて高い。本研究では、ICI関連下垂体機能障害発症者の血中に認められる抗下垂体抗体の標的抗原を同定し、発症を事前に予測できるバイオマーカーの開発を目指している。 これまで、正常ヒト下垂体cDNAライブラリと抗CTLA-4抗体関連複合型下垂体機能低下症発症者の血清を用いた発現クローニング法により抗下垂体抗体の標的抗原候補として3つの下垂体特異的蛋白を同定した。そのうち1つはACTH産生細胞特異的蛋白であり、有力な候補と考えられる。 候補蛋白に対する抗体価を定量するELISAの開発を検討した結果、非特異的反応が認められたため、現在はcell-basedアッセイの開発を進めている。今後の方策として、3つの候補蛋白をそれぞれ導入した哺乳類細胞株HEK293Tと血清との反応を検討し、疾患特異性の高い検査法の確立を進める予定である。方法として、候補蛋白を発現したHEK293Tを固定して血清との反応を評価する免疫組織化学法に加え、よりnaiveな状態の蛋白との反応を検討するため、血清と反応させた細胞をフローサイトメトリーで解析する方法を検討する。また、HEK293Tに下垂体障害と関連するHLA-DR15を導入し、下垂体抗原-HLA複合体に対する血清の反応を検討し、疾患特異性の高い検査法の確立を進める。
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