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グルカゴン応答性メチル化酵素を介した肝糖新生・肝がん促進メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K24390
補助金の研究課題番号 22H03131 (2022-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2022-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分54040:代謝および内分泌学関連
研究機関国立研究開発法人国立国際医療研究センター

研究代表者

松本 道宏  国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (90467663)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
キーワードメチル化酵素 / グルカゴン / 肝糖新生 / 肝細胞癌 / 遺伝子転写 / 2型糖尿病 / 癌抑制分子
研究開始時の研究の概要

先行研究から、メチル化酵素SETXの遺伝子発現はグルカゴンにより誘導されること、肝臓特異的なSETXの欠損による肝糖新生系酵素の遺伝子発現の抑制はアセチル化酵素GCN5の機能抑制を介すること、また肝がん形成の抑制は癌抑制遺伝子産物p53の活性化を介することが示唆された。SETXは慢性的なグルカゴンシグナルの亢進により活性化され、肝糖新生を活性化すると共に、肝がん形成も促進する可能性がある。本研究では、こうした可能性を検証し分子メカニズムを明らかにする。またSETXの欠損による肝がんの治療の可能性も合わせて検証する。

研究実績の概要

先行研究において、グルカゴンにより遺伝子発現が誘導されるメチル化酵素SETXの肝臓特異的欠損により、糖尿病モデルマウスの高血糖が肝糖新生系酵素遺伝子の発現抑制を介して改善すること、同時に肝がんも抑制されることが明らかになった。前者はアセチル化酵素GCN5の機能抑制を、後者は癌抑制遺伝子産物p53の活性化を介することが示唆された。本研究では、SETXが慢性的なグルカゴンシグナルの亢進により活性化され、肝糖新生を活性化すると共に、肝がん形成も促進する可能性を検証し、そうであれば分子メカニズムを明らかにすることを目指している。またSETXの欠損による肝がんの治療の可能性も検証する。
本年度は、肝臓におけるSETXタンパクの発現調節機構を、3×FLAG-SETXホモノックイン(KI)マウスを用いて検討した。マウス肝では絶食時や肥満・糖尿病における発現増加を認めず、in vivoではグルカゴンよりも優位な発現調節因子の存在が示唆された。肝臓特異的SETX欠損により1型ならびに2型糖尿病モデルマウスの高血糖が改善し、その機序として肝糖新生の抑制が示唆された。またSETXによるメチル化がGCN5を介した糖新生に与える影響を肝細胞において非メチル化型変異体を用いて検証した。本メチル化はGCN5のヒストンアセチル化活性を高め、糖新生を促進することが示唆された。個体レベルにおける評価のため、同変異体のノックインマウスの作製にも着手した。
SETXの肝がん促進作用に関しては、酵素活性欠損変異体を用いた検討から、SETXの腫瘍形成促進へのメチル化活性の必要性が示唆された。またSETXによるp53のメチル化が肝がんに与える影響を検討するため同部位の非メチル化型変異体のKIマウスの樹立も進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に則し本年度は、①肝臓におけるSETXタンパクの発現調節機構、②SETXの強発現が糖新生・肝がん形成に及ぼす影響、③PKAによるリン酸化を介したSETXの機能調節機構、④GCN5の機能調節を介したSETXの肝糖新生制御機構、⑤がん抑制遺伝子産物p53を介したSETXの腫瘍形成促進機構、の解析を推進した。
①に関しては、3×FLAG-SETXホモノックイン(KI)マウスを用いた検討から、マウス肝では絶食時や肥満・糖尿病における発現増加を認めず、in vivoではグルカゴンよりも優位な発現調節因子の存在が示唆された。
②に関しては、酵素活性欠損変異体を用いたin vitro/in vivoの検討から、SETXの腫瘍形成促進へのメチル化活性の必要性を明らかにした。
③に関しては、PKAによるリン酸化部位を変異させた非リン酸化型ならびに恒常的リン酸化型SETXのKIマウスを用いて、肝糖新生における本リン酸化の意義を検討した。PKAによるSETXのリン酸化はメチル化活性と相関し、糖新生系酵素の遺伝子発現と血糖の恒常性を維持するために不可欠であることが明らかになった。
④に関しては、SETXによるメチル化がGCN5を介した糖新生に与える影響を、肝細胞において非メチル化型変異体を用いて検証した。本メチル化はGCN5のヒストンアセチル化活性を高め糖新生を促進することが示唆された。個体レベルにおける評価のため、同変異体のノックインマウスの作製にも着手した。
⑤に関しては、酵素活性欠損変異体を用いた検討から、SETXの腫瘍形成促進へのメチル化活性の必要性を明らかにした。またSETXによるp53のメチル化が肝がんに与える影響を検討するため同部位の非メチル化型変異体のKIマウスの樹立も進めた。以上の進捗から、本研究は概ね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

①PKAによるリン酸化を介したSETXの機能調節機構の解明:(非)リン酸化型SETX KIマウスを用いた検討から、PKAによるSETXのリン酸化は糖新生系酵素の遺伝子発現と血糖の恒常性維持に不可欠であることが明らかになった。今後、各マウスから単離した肝細胞において、PKAによるリン酸化、SETXの機能と糖新生系酵素遺伝子の転写誘導との直接的な関係性を明らかにする。また、SETXによる肝糖新生、肝がん形成の促進と慢性的なグルカゴンシグナルの亢進の因果関係を明らかにするために、肝臓特異的グルカゴン受容体欠損マウスを用いた検証も行う。
②GCN5の機能調節を介したSETXの肝糖新生制御機構の解明:SETXによるメチル化部位として見いだしたリジン残基をアルギニンに置換した非メチル化型変異体GCN5KRを用いた初代培養肝細胞における検討から、糖新生系酵素遺伝子の転写誘導に際し、SETXによるGCN5のリン酸化は必須であり、リン酸化が活性を制御することが示唆された。個体レベルにおける評価のため、GCN5KR KIマウスを作製し、野生型との比較解析によるメチル化の意義を検討する。
③がん抑制遺伝子産物p53を介したSETXの腫瘍形成促進機構の解明:これまでの検討からp53はSETXのメチル化基質であること、メチル化されない変異p53 (p53 KR)ではp53の転写活性が高まること、SETXによる肝がん促進作用の少なくとも一部はメチル化を介したp53の抑制である可能性が示唆された。今後はp53 KRホモKIマウスならびに対照マウスにおいて肝がんを誘導し、p53 KR変異による抗がん効果について検討する。
④SETXを標的とした肝がん治療の可能性の検証:タモキシフェン誘導性に肝臓特異的にSETXを欠損するマウスに肝がんを誘導し、発育したがんを確認した時点でSETXの欠損を誘導し影響を検討する。

報告書

(2件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (19件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Hepatic FASN deficiency differentially affects nonalcoholic fatty liver disease and diabetes in mouse obesity models2023

    • 著者名/発表者名
      Matsukawa Toshiya、Yagi Takashi、Uchida Tohru、Sakai Mashito、Mitsushima Masaru、Naganuma Takao、Yano Hiroyuki、Inaba Yuka、Inoue Hiroshi、Yanagida Keisuke、Uematsu Masaaki、Nakao Kazuki、Nakao Harumi、Aiba Atsu、Nagashima Yoji、Kubota Tetsuya、Kubota Naoto
    • 雑誌名

      JCI Insight

      巻: 8 号: 17

    • DOI

      10.1172/jci.insight.161282

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The transcription factor ATF3 switches cell death from apoptosis to necroptosis in hepatic steatosis in male mice2023

    • 著者名/発表者名
      Inaba Yuka、Hashiuchi Emi、Watanabe Hitoshi、Kimura Kumi、Oshima Yu、Tsuchiya Kohsuke et al.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 号: 1 ページ: 167-167

    • DOI

      10.1038/s41467-023-35804-w

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Loss of hepatic Nmnat1 has no impact on diet-induced fatty liver disease2022

    • 著者名/発表者名
      Iqbal Tooba、Nawaz Allah、Karim Mariam、Yaku Keisuke、Hikosaka Keisuke、Matsumoto Michihiro、Nakagawa Takashi
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 636 ページ: 89-95

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2022.10.072

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] Dyrk1Aを介した肝糖新生制御機構の解明2024

    • 著者名/発表者名
      満島勝、長沼孝雄、松川隼也、松本道宏
    • 学会等名
      第37回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 肝臓の脂肪酸合成酵素の抑制によるリポタンパク代謝調節機構の解明2024

    • 著者名/発表者名
      長沼孝雄、松川隼也、満島勝、松本道宏
    • 学会等名
      第37回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 肝がん発症におけるグルカゴン応答性メチル化酵素SETXの役割の解析2023

    • 著者名/発表者名
      満島勝、松川隼也、長沼孝雄、松本道宏
    • 学会等名
      第58回臨床分子医学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] グルカゴン応答性メチル化酵素の糖尿病肝における役割の解明2023

    • 著者名/発表者名
      松川隼也, 長沼孝雄, 満島勝, 松本道宏
    • 学会等名
      第31回日本医学会総会 6NCリトリート
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] グルカゴン誘導性長鎖ノンコーディングRNAの血糖調節における機能の解明2023

    • 著者名/発表者名
      満島勝、松川隼也、長沼孝雄、松本道宏
    • 学会等名
      第66回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 肝がん発症におけるグルカゴン応答性メチル化酵素SETXの役割の解析2023

    • 著者名/発表者名
      長沼孝雄, 松川隼也, 満島勝, 松本道宏
    • 学会等名
      第66回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 肝臓特異的な脂肪酸合成酵素の抑制は 肥満の成因依存的にNAFLDと糖尿病を改善する2023

    • 著者名/発表者名
      松川隼也、長沼孝雄、満島勝、松本道宏
    • 学会等名
      第44回日本肥満学会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] グルカゴン応答性メチル化酵素SETXはGCN5のメチル化を介して肝糖新生を制御する2023

    • 著者名/発表者名
      松川隼也、長沼孝雄、満島勝、松本道宏
    • 学会等名
      第36回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 肝がん発症におけるグルカゴン応答性メチル化酵素SETXの役割の解析2023

    • 著者名/発表者名
      満島勝、松川隼也、長沼孝雄、松本道宏
    • 学会等名
      第36回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] グルカゴン誘導性長鎖ノンコーディングRNAの血糖調節における役割の解明2023

    • 著者名/発表者名
      長沼孝雄、松川隼也、満島勝、松本道宏
    • 学会等名
      第36回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] グルカゴン応答性メチル化酵素SETXはアセチル化酵素GCN5を介して肝糖新生を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      松川隼也、長沼孝雄、満島勝、酒井真志人、春日雅人、松本道宏
    • 学会等名
      第65回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] グルカゴン応答性メチル化酵素を介した肝糖新生制御機構2022

    • 著者名/発表者名
      松川隼也、長沼孝雄、満島勝、松本道宏
    • 学会等名
      第65回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] グルカゴン誘導性長鎖ノンコーディングRNAによる血糖調節機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      長沼孝雄、松川隼也、満島勝、矢野宏行、春日雅人、松本道宏
    • 学会等名
      第65回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] グルカゴン応答性メチル化酵素SETXのアセチル化酵素GCN5を介した肝糖新生制御機構2022

    • 著者名/発表者名
      松川隼也、長沼孝雄、満島勝、松本道宏
    • 学会等名
      第35回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] グルカゴン応答性メチル化酵素SETXはGCN5を介して肝糖新生を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      松本道宏、松川隼也、長沼孝雄、満島勝
    • 学会等名
      第95回日本内内分泌学会学術総会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [備考] 国立国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター 分子代謝制御研究部

    • URL

      https://drc.ncgm.go.jp/dc003/index.html

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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