研究課題/領域番号 |
23K24397
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補助金の研究課題番号 |
22H03138 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中村 哲也 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任教授 (70265809)
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研究分担者 |
土屋 輝一郎 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40376786)
松本 有加 順天堂大学, 医学部, 助教 (50813672)
須田 一人 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60784725)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 腸再生医療 / 組織エンジニアリング / 小腸移植 / 短腸症候群 / 腸管不全 / オルガノイド移植 / 再生医療 / 腸上皮置換 |
研究開始時の研究の概要 |
大腸上皮を小腸上皮で置換し小腸機能再生を図る試みが注目されている。本研究は、健常な大腸粘膜を人為的に剥離する際の安全性確保のために新規に開発した化合物、すなわち分子サイズが大きく体循環への流入が少なく、しかも生体適合性をもち、十分な腸上皮剥離能をもつ高分子キレート化合物の腸組織への作用を解析する。また、これによる腸上皮剥離技術を応用し、安全で効率的な小腸上皮移植で大腸上皮を置換する技術確立を目指す。本研究で得られる成果は、安全な小腸機能再生のための臨床技術創出につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
2023年度実績は以下の通りである。 A)キレート化合物による腸組織変容および生体応答の解析 「A-1:サイズの異なる複数のEDTA-PEG合成と分析」および「A-2: EDTA-PEGによる腸上皮剥離能の解析」は2022年度に施行した。「A-3:キレート化合物が腸粘膜組織に及ぼす作用の組織学的解析」では、マウス大腸内腔からキレート材を異なる濃度・時間で作用させた際の腸粘膜変化を組織学的に解析し、上皮剥離能を定量評価した。その結果、合成EDTA-PEGのいずれにおいても大腸上皮剥離能が見られること、またEDTA-PEGの分子サイズによってその剥離能に相違があることを明らかにできた。「A-4:EDTA-PEGの吸収動態と安全性解析」では、マウスに対する毒性を単回経口投与および腹腔投与で評価するため、キレート能を揃えた分子数(モル数)ベースでEDTAおよびサイズの異なるPEG-EDTAとの間で比較解析した。その結果、EDTAよりもEDTA-PEGで安全性が高いことを明らかにした。 B) 高分子キレート化合物で上皮を剥離した腸へのオルガノイド移植技術の確立 「B-1:PEG-EDTAによる大腸上皮剥離技術確立」では、PEG-EDTAを用いて安全に、かつ一定サイズのマウスおよびラット大腸上皮を剥離する技術を検討した。その結果、大腸上皮剥離のためには、EDTA-PEGの作用に加えて粘膜擦過などの物理刺激を追加することが有効であることを見出した。「B-2:上皮剥離大腸への細胞移植条件最適化」では、EDTA-PEGで大腸上皮剥離後のラット大腸に小腸オルガノイド移植が可能かの検証をおこなった。その結果、レシピエントラット大腸に、別に培養したEGFPトランスジェニック(Tg)ラット小腸オルガノイドを移植生着させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に合成し、初年度に評価したキレート材EDTA-PEGを用いて、そのマウス・ラットへの投与時の安全性および大腸上皮剥離能の評価を行うなど、計画に沿った研究を進めることができた。その結果、実際EDTA-PEGが腹腔投与あるいは腸内腔投与時において、EDTAよりも臨床症状および血清Ca値による評価において、より安全であることを明らかにできるなどの成果が得られた。また実際に本化合物により、マウスのみならずラットにおいても大腸上皮剥離が可能であることがわかり、本研究で目指す大腸上皮置換技術に応用可能であることの基礎が築けた。さらに、生きたままのラットの開腹手術手技により、限局した長さの大腸内腔にEDTA-PEGを灌流させて作用させることで大腸上皮剥離ができること、さらにここに小腸オルガノイドを移植し生着させることができることを見出すことができた。以上より、次年度の研究計画にスムーズに移行する準備が整ったものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初に掲げた研究計画のうち「B: 高分子キレート化合物で上皮を剥離した腸へのオルガノイド移植技術の確立」においては以下の計画である。ここでは「B-1:PEG-EDTAによる大腸上皮剥離技術確立」において、一定サイズのマウスおよびラット大腸上皮を剥離する技術確立のために、PEG-EDTA溶液の注入濃度、温度、pHに加え、大腸内腔暴露時間を最適化する。「B-2:上皮剥離大腸への細胞移植条件最適化」では本年度に得られた実績に基づいて研究を進め、EDTA-PEGによる粘膜処理の後、別に培養したEGFPトランスジェニック(Tg)マウスおよびラット小腸オルガノイドを注入し、移植生着させる方法(注入オルガノイド数、密度、注入液量、時間など)を最適化する。「B-3:小腸化移植片の性状解析」では、移植片内上皮細胞が小腸固有の機能を異所性に保持するかを中心に、B-2で得られるラット・ヒト小腸移植片を用いて下記の解析をおこなう。そのために、小腸型の陰窩-絨毛構造構築の有無、小腸特異的分化細胞であるパネート細胞の分布と局在、吸収上皮細胞におけるアミノ酸、糖、脂肪酸吸収トランスポータ発現分布などを免疫組織染色、in situ hybridization法で解析する。また、上皮細胞近傍の間質組織(非上皮組織)が上皮置換によっていかなる変化を受けたかも解析する。 研究の順調な進展が見られれば、「C: 新規腸上皮置換技術による小腸機能再生効果の検証」にまで実験を進める予定である。ここでは、大腸小腸化が小腸機能補完効果を有するかの評価のため、特に重症ラット短腸症候群モデルを用いて解析をおこなう計画としている。
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