研究課題/領域番号 |
23K24405
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補助金の研究課題番号 |
22H03146 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (40368303)
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研究分担者 |
石井 秀始 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任教授(常勤) (10280736)
荒尾 泰子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任研究員 (70962736)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 膵がん / 代謝 / メチオニン |
研究開始時の研究の概要 |
膵がん組織は血行に乏しく抗がん剤や免疫細胞の浸潤が起こりにくい。アミノ酸などの栄養素も供給に乏しい有限な資源であると考えられるが、がん細胞はその異常な代謝のため栄養素の要求度が高い。近年、大腸がん微細環境内でがん細胞と周囲細胞とでメチオニンの奪い合いが起きていることが新たながん悪性化の機構として報告された。実際メチオニン制限食は抗がん剤効果を高める可能性も示唆されている。本研究ではこの共存システムを明らかにするとともに膵がんにおけるメチオニンデリバリーを対象とした治療法開発および膵がんメチル基転移反応の総体を解明する。
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研究実績の概要 |
メチオニンはゲノムやRNA、ヒストン、ポリアミンなどのメチル化修飾のメチル基ドナーとなる栄養素であり、がん細胞の亢進したメチル基転移反応を支えていることが明らかとなっている。膵がんにおけるメチオニン制限の効果や、膵がん微細環境下でどのようにがん細胞と間質細胞がメチオニンを奪い合わずに共存しているのかを明らかにするために、本研究では、膵がん微細環境におけるメチオニン代謝の総体を明らかにし、メチオーム改変による治療効果の検証およびメチオーム中の治療標的の探索することを目指している。 メチオニン代謝やOne Carbon代謝研究から、トランスクリプトーム解析を進め、メタボロームをRNAseqから予測すること進めた。膵がん患者検体のメチオーム評価として、新規の標的遺伝子を明らかにし(特許申請中、論文投稿中)、新鮮な材料を用いいてイメージング質量分析法で代謝産物の空間的な分布を明らかにし、生物的な意義を検討した。膵がん細胞、間質細胞におけるメチオニン欠乏のin vivoでの重要性を明らかにするために、培養細胞、および個体レベルの膵がんを同系統に移植した担がんマウスの研究により、膵がん細胞、間質細胞におけるメチオニン欠乏の効果の生物的な意義を検討した(特許申請中、論文投稿中)。また、得られた標的分子に対する創薬を進めるために、知財の整備を行った。新たな大学院生に加え、研究員の参加も、本研究の円滑な進捗に貢献している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では膵がん患者末梢血/切除検体の質量分析によりメチオニンやSAMなどのOne Carbon代謝に関連する酵素および代謝産物を直接計測した。 代謝パスウェイレベルでの活性をスコア化し、臨床背景との統計解析を示した。代謝パスウェイに変動が見られた患者に至っては質量分析イメージングを行い、がん微細環境下のメチオニンやSAMなど分子分布を測定した。標的遺伝子の同定、前臨床動物試験で 、腸管細菌を含めた上皮細胞応答のOne Carbon代謝に関連する酵素および代謝産物の意義を深掘りして検討した(特許申請中、論文投稿中)。アミノ酸トランスポーターは複数のアミノ酸の輸送を担っているため、トランスポーターの阻害はオフターゲットを生じる。膵がん細胞および間質細胞でのメチ オニン制限の影響を見るために、メチオニン減少培地を用いた培養試験を行った。メチオニン要求度が細胞株によって異なることも予想されるため、複数の膵癌 細胞株を用いた。間質細胞は複数患者のがん切除検体から酵素処理により単離して培養実験に用いた。ATAC-seqによるエピゲノム解析および RNAseqによるトランスクリプトーム解析を行い、メチオニン制限効果の機構解明、質量分析によるメチオニン代謝パスウェイの代謝物のメタボローム解析を推進した。発現解析と代謝解析を比較検討し、ホモシステインからの再合成経路の生物学的な役割を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき、メチオニン欠乏環境下での膵がん細胞、間質細胞の細胞間相互作用を明らかにするために、膵がん微細環境下でのがん細胞と間質細胞の関係がメチオニン代謝に及ぼす影響を検証する。細胞間接着ありなし両方の共培養系を使用して、メチオニン制限培養による細胞生存/増殖に及ぼす影響を評価し、興味深い条件についてはエピゲノム解析を 行ってがん関連遺伝子の制御関係を明らかにする。細胞間接着の有無で分けた共培養系を比較することでエクソソームや細胞膜ナノチューブなどのメカニズム解明の足掛けとし、その制御方法の開発にも取り組む検討を完成させる。メチオニン制限食によるマウス発がんモデルのがん抑制作用とその機構解明を推進するために、遺伝性膵がん発生マウスモデルにメチオニン制限食を与え、発がんへの影響を確認する。がん進行/がん抑制作用を評価するため、CTにより発がんを確認した後にメチオニン制限食に切り替えてがん進行を観察し、抗がん剤併用による奏功率改善を検証する。Single cell transcriptome解析からリガンドレセプターデータベースを駆使した細胞間相互作用推定を行う中でメチオニン代謝に纏わる治療標的を見出す。得られた結果を基にして、前臨床試験を完成させ、画期的な創薬の実現に向けて研究を推進する。
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