研究課題/領域番号 |
23K24411
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補助金の研究課題番号 |
22H03152 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
佐田 尚宏 自治医科大学, 医学部, 教授 (20261977)
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研究分担者 |
北山 丈二 自治医科大学, 医学部, 教授 (20251308)
山口 博紀 自治医科大学, 医学部, 教授 (20376445)
倉科 憲太郎 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70382900)
宮戸 秀世 自治医科大学, 医学部, 講師 (90813163)
金丸 理人 自治医科大学, 医学部, 助教 (10625544)
井上 賢之 自治医科大学, 医学部, 講師 (80375279)
園田 洋史 自治医科大学, 医学部, 講師 (80770205)
佐田友 藍 自治医科大学, 医学部, 助教 (40528585)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 糖尿病 / 好中球細胞外トラップ / 大腸癌 / 膵癌 / 転移 |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病は様々ながんの罹患リスクであり、患者予後にも影響を与える。糖尿病は好中球細胞外トラップ(NETs)を形成しやすい。NETsにはがんの転移を促進する作用があるが、これが糖尿病患者における発癌や転移の病態にどのように関与しているか?については不明である。そこで、本研究では、糖尿病モデルマウスとヒト消化器癌組織を用いて、糖尿病を有する個体におけるNETsの亢進状態が発癌と進展のプロセスにどのような影響を与えているのか?また、抗糖尿病薬がこの現象に如何なる影響を与えているのか?を明らかにし、糖尿病患者における消化器がんの予防と治療における新たな対策法を見出すことを目指す。
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研究実績の概要 |
(1)糖尿病モデルマウスの大腸がんの発生に与える影響:NETsを起こしやすい糖尿病モデルマウスC57BL/KsJ-db/db (db/db)にアゾキシメタンとデキストランを投与すると、大腸粘膜に前がん病変であるaberrant crypt foci(ACF)が増加することが解った。しかし、このマウスは、同じC57BL系ではあるが、マイナー抗原の違いがあり、H-2b系の癌細胞を拒絶すること、またMin/+mouseとの交配が不能であることなどが判明したため、糖尿病を呈するob/ob肥満マウスに高脂肪食を与える実験系を用いて、癌の進展に及ぼすNETsの影響を検討することにした。これまでに、ob/obマウスは、wild typeと比べてNETsの産生が多く、胃癌細胞YTN16の発育が早いことが確認できた。 (2)好中球のNETs産生に及ぼすメトホルミンの影響:健常人末梢血、db/dbマウスの骨髄から分離した好中球にLPSを添加しNETsを産生させる系にて、10uM以上の濃度でメトホルミンを添加するとNETs産生が有意に抑制された。 (3)ヒト大腸癌におけるメトホルミンの影響:外科的切除を施行した267例の糖尿病合併大腸癌症例のうちメトホルミン服用53例と傾向スコアマッチング法を用いて抽出した非服用群53例の大腸癌病変の組織切片を作成、多色免疫染色を施行し、腫瘍浸潤好中球、NETsの存在様式を定量したところ、CD66b(+) cit-H3(+)で検出されるNETsの密度は、メトホルミン服用群で有意に低く、CD3(+) CD8(+) T細胞の密度と逆相関していた。一方、メトホルミン内服群はCD68(+)マクロファージの密度も有意に高かったが、CD163(+) M2型TAMは低い傾向を示しCD163(+)/CD68(+)比は有意に低下していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)動物実験として当初予定していた、糖尿病モデルマウスのC57BL/KsJ-db/db (db/db)を新規購入し、転移実験から開始したが、このマウスは、同じC57BL系ではあるが、マイナー抗原の違いがあり、H-2b系のLewis lung carcinomaやB16メラノーマを拒絶すること、またMin/+mouseとの交配が不能であることなどが判明し、癌の進展を検討するには適切ではないことが判明したが、糖尿病を呈するob/ob肥満マウスに高脂肪食を与える実験系を用いて、癌の発生、進展に及ぼすNETsの影響を検討できることが解った。これまでの研究で、ob/ob肥満マウスに高脂肪食を与えることで高血糖を呈し、高いNETs産生を呈すること、同系の胃癌細胞YTN16(H-2b)を皮下、腹腔内投与することで皮下腫瘍、腹膜転移を形成することが確認できたため、今年度以降はこのモデルを用いて、本研究の目的を達成することは可能であると考えられる。一方、db/dbマウスはアゾキシメタンとデキストランを用いた大腸癌の発生モデルとしては適切であり、今後NETsの阻害剤を使用することで発生に及ぼすNETsの影響を検討することが可能であることが解った。 (2)メトホルミンがIn vitroでNETs産生を抑制することが判明するとともに、ヒト切除検体の組織切片の多免疫染色にて、メトホルミンががん組織内のNETsの減少とT細胞の浸潤の増加をもたらしていることが確認でき、この薬剤が免疫学的微小環境を変化させることを介して大腸癌の病態に大きな影響を与えていることを示唆する知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 大腸癌発生に及ぼすNETsの影響の解明:db/dbマウスにアゾキシメタンとデキストランを逐次投与し、10週後に犠牲死させ、大腸を抽出、ACFとβ-catenin accumulated crypt(BCAC)の数を測定する実験系に、NETsの分解薬DNAse1(200μg) やNETs産生阻害薬PAD阻害薬,Cl-Amidine (75mg /Kg) を腹腔内または経口投与し、対象群と比較検討する。また、正常粘膜とACF、BCAC病変中のNETsの存在をCD66bとcit-H3の抗体を用いて二重免疫染色を行い、その密度を定量する。 (2)新規モデルマウスを用いた検討:大腸癌、膵癌の発生モデルであるMin/+mouseおよびKPCマウスとob/obマウスを交配させたマウスを作成し、(1)と同様の検討を行い、糖尿病合併癌の発癌におけるNETsの役割を解明する。 (3)ob/obマウスに同系の胃癌細胞YTN16を腹腔内接種し、3週後に腹膜転移の数を測定し、野生型マウスと比べて増加するか?を確認する。次に、腫瘍接種前日よりDNAse1またはCl Amidineを投与し、転移数の変化を検討する。 (4)大腸癌での検討と同様に、外科的切除を施行した糖尿病を合併した膵癌と胃癌、および傾向スコアマッチング法を用いて抽出した糖尿病非合併患者由来のホルマリン固定癌標本から組織切片を作成、CD66b抗体、cit-H3抗体を用いた多色免疫染色を施行し、腫瘍浸潤好中球、NETsの存在様式を定量するとともに、腫瘍浸潤リンパ球、関連マクロファージの浸潤様式と比較検討し、糖尿病合併消化器がんの微小環境における免疫学的特殊性と抗糖尿病薬(メトホルミン、DPP-4阻害薬)の影響を明らかにする。
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