研究課題/領域番号 |
23K24416
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補助金の研究課題番号 |
22H03157 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
劉 莉 大阪大学, 大学院工学研究科, 特任教授(常勤) (50380093)
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研究分担者 |
李 俊君 大阪大学, 大学院工学研究科, 特任准教授(常勤) (10723786)
宮川 繁 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70544237)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | ヒトiPS由来心筋細胞 / 間葉系幹細胞 / デバイス / 心筋梗塞治療 / iPS由来心筋細胞 / ファイバー / 心不全治療 / 心筋細胞 / 組織構築 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、移植された心筋組織を免疫系細胞から攻撃回避、血管新生促進させるように、間葉系幹細胞を工学的な手法で心筋組織体に融合して、ヒトiPS由来心筋と間葉系幹細胞が含まれた複合組織体を構築することを目指す。3D足場デバイスを用いて間葉系ー心筋組織体を構築する条件検討を最適化する。最終的に間葉系と心筋細胞を融合した複合組織体を用いて、心筋梗塞モデル動物へ移植を行い、免疫拒否反応、血管新生、心筋組織の残存状況を改善して、治療の有効性を見出す。
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研究実績の概要 |
現在、致死的な重症心不全に対する虚血性心筋症や拡張型心筋症の根本的治療法は、心臓移植や補助人工心臓などの置換型治療が中心だが、耐用性やドナー不足に課題がある。虚血性心筋症患者を対象としたiPS細胞由来の心筋細胞シートのFirst in Humanの臨床への展開が既に開始され、昨年度まで8例の臨床試験を終了しており、すべての患者において有効性と安全性が認められている。しかし、治療効果には限界があり、さらに移植後3ヶ月の間に免疫抑制剤を服用する必要がある。この問題を解決するため、本研究では以下の点を工夫している。(1) 移植する細胞数を増やす。(2) 間葉系幹細胞の抗炎症作用、免疫拒否抑制作用、血管新生促進作用を生かして、心筋細胞と一緒に移植する。 申請者らは独自に開発した3Dかつ配向性構造を有する足場材料を用いて、生体内の心筋構造を模倣することによって、配向・多層化した心筋組織の構築に成功した。本研究では、この技術を活かして、間葉系幹細胞を融合した複合体心筋組織を構築し、心筋梗塞モデル動物の有効性と安全性を評価する。最終的には、組織工学技術を駆使した高機能心筋組織による次世代心不全治療法の開発を目指す。 過去2年間の研究結果により、心筋細胞への分化指向性が高いiPS細胞を選別し、心筋細胞への高効率な分化誘導が実現された。また、iPS細胞、骨髄、臍帯、脂肪由来の間葉系幹細胞の機能評価を比較した結果、脂肪由来の間葉系幹細胞が選択された。さらに、3D配向性ファイバーを用いて、脂肪由来の間葉系幹細胞とiPS細胞由来の心筋細胞で組織構築の最適条件を決定し、厚み400umの複合体組織を自発的に構築できた。生体外での機能評価の結果、心筋細胞だけで構築した組織と比較して、明らかに機能が向上したことが確認された。現在、動物モデルを用いて、生体内での治療効果を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目、我々は心筋細胞へ分化指向性あるiPS細胞を選別し、心筋細胞を高効率に分化誘導させる問題をクリアした。iPS細胞、骨髄、臍帯、脂肪由来した間葉系幹細胞を比較した結果、脂肪由来間葉系幹細胞は手に入れやすく、機能評価した結果も適切であることが確認できた。2年目、3D配向性ファイバーを用いて、脂肪由来間葉系幹細胞とiPS細胞由来の心筋細胞で組織構築の最適条件を決定し、厚み400umの複合体組織を自発に構築できた。予測通り、生体外で組織の機能評価を行った結果、心筋細胞だけで構築した組織と比較して、心筋-間葉系幹細胞で構築した複合型組織の生存率、組織化状態、分泌された因子の量、収縮力など、明らかに良好であることを検証した。非常に順調に進展しているため、申請当時計画しているスケジュールより早めに動物実験を開始した。現在ラットの心筋梗塞モデルを作製し始め、効率良くモデル作製ができるようになった。実際に組織の移植予備実験を開始し、治療経過を観察していたところ、エコーの測定結果により、心機能の回復が見られている。具体的に、来年度には、組織を回収して、免疫拒否反応、移植物の生着能、血管新生、心機能回復状況を詳しく調べる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
以前の研究結果(Li et al., Advced Fiber Materials, 2023)により、厚み1mm以上の心筋組織を用いて心筋梗塞モデルラットへ移植する際、免疫不全動物の使用にも関わらず、免疫拒否反応を起こしてしまい、移植された心筋細胞が攻撃され、組織が半分しか残存していないことが明らかとなった。以前の研究結果に基づき、選別された分化指向性が揃った単一hiPS細胞由来の心筋細胞と成人脂肪由来の間葉系細胞を用いて、3D配向性ファイバーにより心筋-間葉系細胞組織体を構築した上で、慢性心筋梗塞モデル小動物(ラット)への移植を試みた。今後、移植後2ヶ月目に、心筋組織のみの移植群をコントロールとして比較して、間葉系細胞と心筋複合型組織体を移植した場合の心機能の回復具合、移植物の生着状態、並びに免疫拒否反応、炎症反応、血管新生、線維化状態などを評価をする予定。具体的に、(1)心機能の改善はエコーで評価する。(2)移植2ヶ月後、心臓を回収して、移植物の生着率を組織化学的・分子生物学的に評価する。(3)組織レベルの血管新生・炎症・血管新生・サイトカイン・免疫能などを調べる。(4)治療効果を解明するため、移植部位周辺の細胞回収をして、全遺伝子解析を行い、メカニズムを検討する。もし心筋のみコントロール群と有意差がない場合、その原因を解明する。
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