研究課題
基盤研究(B)
悪性脳腫瘍である膠芽腫はあらゆるがんの中で最も予後不良であり、有効な治療法が求められている。近年、免疫療法が多くのがんで標準治療となったが、膠芽腫に対して有効性が確立したものはない。そこで本研究では膠芽腫の治療成績向上に向けて、膠芽腫に対するNKT細胞を用いたがん免疫療法の確立を目指し、NKT細胞による腫瘍認識機構や抗腫瘍効果発揮メカニズムを明らかとし、臨床研究実施に向けた基盤構築を行う。
膠芽腫はヒトの悪性腫瘍の中でも最も予後不良な疾患である。そこで膠芽腫に対する新たな治療法開発研究として、ヒト膠芽腫を移植したマウスモデルを用いて、NKT細胞の養子免疫療法に関する抗腫瘍効果の検討を行った。ヒトIL-7/IL-15遺伝子を導入した重症免疫不全マウスであるIL7/15 KI-NSGマウスに膠芽腫細胞株を用いた樹立した同所性マウスモデルに対して、ヒト末梢血由来NKT細胞の腫瘍局所投与として髄腔内投与による養子免疫療法を行った。その結果、NKT細胞が他の免疫細胞へのアジュバント効果を発揮できる環境をマウス内に再構築した場合にのみ、末梢血由来NKT細胞の髄腔内投与による腫瘍増大抑制や全生存期間の延長といった抗腫瘍効果を認めた。NKT細胞投与後に脳組織を摘出し、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を抽出して単細胞RNA-sequence解析を実施し、NKT細胞の示すアジュバント効果発揮の機序解明を行っている。さらに、iPS細胞由来NKT細胞(iPS-NKT細胞)を用いた養子免疫療法の有効性について、同じ膠芽腫細胞株による同所性モデルを用いて検討を行った。その結果、iPS-NKT細胞の腫瘍内投与によっても、腫瘍増大の抑制や全生存期間の延長といった明らかな抗腫瘍効果を認めることを確認した。さらにiPS-NKT細胞の投与自体の安全性を確認するために、神経系に対する影響についても確認を行った。末梢血由来NKT細胞とiPS-NKT細胞による抗腫瘍効果発揮メカニズムの差異について詳細な検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
NKT細胞の投与方法について新たに髄腔内投与法を確立し、その抗腫瘍効果の作用機序について、腫瘍浸潤リンパ球を用いた単細胞RNA-sequence解析を行った。さらに膠芽腫に対するiPS-NKT細胞の抗腫瘍効果についても確認した。
IL-7/IL-15 KI NSGマウスに樹立した膠芽腫細胞株を用いた同所性モデルを用いて、NKT細胞およびiPS-NKT細胞の局所投与の有効性の検討及び作用機序の解明を継続する。膠芽腫同所性モデルから採取したTILを用いて行った単細胞RNA-sequence解析の結果から、抗腫瘍効果を増強する分子を同定し、iPS細胞への遺伝子導入を行って抗腫瘍効果の増強効果を確認する。さらにNKT細胞を用いた養子免疫療法に併用する候補薬剤を同定し、NKT細胞を用いた新たな併用療法の有効性について検討する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件)
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