研究課題/領域番号 |
23K24449
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補助金の研究課題番号 |
22H03190 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
鈴木 啓道 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (90751024)
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研究分担者 |
島村 徹平 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (00623943)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 髄芽腫 / U1 snRNA / スプライシング / RNA |
研究開始時の研究の概要 |
髄芽腫は治療の難しい脳腫瘍です。近年、新しい遺伝子異常であるU1 small nuclear RNA (U1 snRNA)の異常が発見されました。これまでU1 snRNAの異常は細胞内で正しいRNAを作る機構であるスプライシングに異常を引き起こすことがわかりました。しかし、その詳細は十分に解明されておりません。また、U1 snRNAはスプライシング以外にも様々なRNAの処理を行っていることが分かってきました。この研究では、様々な手法を用いたシークエンス解析を行うことで、U1 snRNA変異が引き起こすRNAプロセスの異常を明らかにし、新規治療の開発に繋げることを目的とします。
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研究実績の概要 |
本研究課題ではRNAプロセスの異常をU1 snRNAの機能に基づき、それぞれに特化した解析を行うことで、変異により引き起こされる細胞内RNAプロセスの異常を解明し、髄芽腫の病態を明らかにすることを目的とし研究を進めている。 該当年度においては、ポリアデニル化領域検出手法の確立、スプライシングとRNA修飾の解析のためのdirect RNAシークエンスを行った。合わせて、機械学習法を用いた発現データからのU1 snRNA変異検出法の確立を行った。 ポリアデニル化領域の解析のため、改良型3′READS+法を確立し、シークエンスリードの約3分の1にポリアデニル化領域が含まれる効率的なポリアデニル化領域の濃縮を実現した。また、ポリアデニル化領域を含むシークエンスリードから、特にポリアデニル化部位を強く示唆するPASS(PolyA Site Supporting) readを抽出し定量できる解析パイプラインを整備した。 circular RNAの濃縮における直鎖RNAの効率的な除去のため、RNaseR処理にpoly(A) tailingを先行させる手法とrRNA depletionを先行させる手法の2種類の検討を行った。いずれの手法でも全く処理を行わなかった場合と比較して約3倍以上のcircular RNAを同定でき、十分な濃縮が得られた。 Direct RNAシークエンスを2症例に対して行った。臨床検体を使用したdirect RNAシークエンスでは、これまでの既知の報告と同程度の品質のリードの取得が可能であった。 U1 snRNAがゲノムワイドなスプライシング異常を生じることから、そのスプライシングパターンを定量的に解析し、ランダムフォレストアルゴリズムによる機械学習プログラム実装した。このプログラムによりRNA-seqデータからU1 snRNA変異の有無の正確な同定が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA断片化およびアダプター配列の結合手法を改良した改良型3′READS+法では、シークエンスリードの32%が目的のポリA配列を含むリードであり、発現解析でもポリアデニル化領域の濃縮を確認できた。また、ポリアデニル化部位を強く示唆するヒトゲノム配列にはマッピングされないポリA配列を持つPASSリードは15%弱と、原法と同等の十分なPASSリードが得られた。 circular RNAの濃縮は、RNaseR処理で直鎖RNAを除去することで行うが、酵素抵抗性のRNAが残存する。残存RNAの除去による濃縮効率改善手法として、rRNA depletionとpoly(A) tailingによる除去のどちらをRNaseR処理に先行して行うかによる2種類の手法を検討した。circular RNAの同定にあたり、CIRI2を用いた解析パイプラインも整備した。濃縮処理を行ってないRNA-seqと比較し、rRNA depletion 先行で2.96倍、poly(A) tailing 先行で6.58倍と、いずれの手法でもcircular RNAの十分な濃縮を確認できた。 direct RNA-seqを2例に対して行った。1症例あたり2.35M readのデータ量で、median read lengthが569.0、median read qualityが10.3であった。既存の報告と大差ない品質であり、臨床検体でも良好なシークエンスデータを得ることができることが確認できた。 SHH型髄芽腫215例のRNA-seqデータのスプライシングパターンをpercent spliced in(PSI)値として数値化し、この数値データを用いたランダムフォレストアルゴリズムによる機械学習プログラムを構築した。このプログラムを36例の自験例データに適用したところ、5例のU1 snRNA変異型髄芽腫を正確に検出できた。
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今後の研究の推進方策 |
一分子ロングリードシークエンスを行った結果臨床検体からも症例の適切な選択により良好なデータの取得が可能であることがわかった。しかし、flow cellあたりの出力量が限られているため、データ量を増やして解析を行う必要がある。また、direct RNAでは配列の取得が3 prime側に偏ってしまうため、5 prime側の解析のためにはcDNAシークエンスと併用する必要性が考えられた。そのため、一分子cDNAシークエンスと併用してデータ取得と解析を進めていく予定である。スプライシング異常の解析とともにRNA修飾の検出ワークフローを確立していく。 改良型3′READS+法とcirc RNA-seqの手法が安定的に可能になった。また、解析パイプラインを構築しデータ解析も可能になった。そのため、解析検体数を増やすことで、髄芽腫に生じているRNAプロセス変化を追跡していく。 これらのデータを合わせることで、スプライシング・ポリアデニル化・RNA修飾の統合的解析が可能となる。また、de novoに発生するcircular RNAを含めたisoformを同定することが可能となる予定である。同定されたRNAの機能予測が可能なパイプラインを構築することでドライバーとなっているイベントを同定し、機能解析へと進む。
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