研究課題/領域番号 |
23K24452
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補助金の研究課題番号 |
22H03193 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大鳥 精司 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (40361430)
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研究分担者 |
高山 直也 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (10584229)
川上 英良 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (30725338)
向井 務晃 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (40907698)
江藤 浩之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (50286986)
志賀 康浩 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (90568669)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2026年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 血小板 / 多血小板血漿 / PRP / 骨 / iPS細胞 / 巨核球 / 骨癒合 / 骨再生 / iPS細胞由来血小板 / サイトカイン / 骨形成促進 / AI |
研究開始時の研究の概要 |
高齢社会において、骨折や運動器変性疾患が増加し、手術後の迅速な骨癒合が必須である。患者の自己血液を遠心して得られる、多血小板血漿(PRP)は骨癒合を促進するという報告が多数あるが、製剤の不均一性により、効果が不安定である。本研究では、均一な製剤開発のため、凍結乾燥ヒトiPS細胞由来巨核球・血小板製剤の骨癒合に最適な規格を細胞実験・動物実験にて明らかにする。またiPS細胞由来巨核球に骨癒合に有効な遺伝子操作導入を行い、より骨癒合に最適化した製剤の開発を行う。最終目標は、均一かつ骨癒合促進に最適化した血小板製剤の臨床応用である。
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研究実績の概要 |
不死化巨核球株の分化誘導により得られたiPS 細胞由来巨核球および血小板 (iPS-derived platelets and megakaryocyte:iPM)には、PRPと同等の多様なサイトカイン含有が確認できた。昨年度はこのiPM製剤を用いて以下3つの知見を得た。 Ⅰ.ラット腰椎癒合モデルを用いて、iPM は、リコンビナントBone Morphogenetic protein2(BMP2)製剤と同等の骨形成促進作用を有し、一方で副作用はiPMには認めず、BMP2には、既報の通り、局所の強い炎症を認めた。またiPMにBMP2製剤を添加することで、相加的骨形成促進効果を認めた。 Ⅱ.間葉系幹細胞から成熟骨芽細胞への分化系を最適化し、検証を行った結果、iPMはMSCの増殖と遊走を促進する一方、BMP2はMSCの骨分化を促進するという、明確な作用点の差異を明らかにした。 Ⅲ. BMP2遺伝子の不死化巨核球への強制発現による骨再生用機能強化型iPMの作製を行い、PDGF-BBの半量近いBMP2タンパク発現をELISAにて確認した。しかし、生体内で骨再生を促進する必要量の発現には至らなかった。解決策として、発現プロモーターの変更などの遺伝子導入ベクターの改良や他の骨形成促進効果を有する遺伝子の共強制発現を行う予定である。 今年度 は更なる分子生物学的なメカニズム解析や評価系の改良、また臨床応用に適した骨再生用機能強化型iPM製剤の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPMを用いて、以下の3項目を検証した。 ① iPMの骨形成促進効果と安全性の検証:ラット腰椎癒合モデルを用いて、以下4群(人工骨のみ群(コントロール群)、人工骨+iPM群(iPM群)、人工骨+Bone morphogenetic protein2 (BMP2)群、人工骨+iPM+BMP2群(併用群))を作製した。術後1,2,4週でCTにて新規骨形成量を定量した。結果iPM群では、BMP2群と同等の骨形成促進効果を示し、併用群はiPM群、BMP2群より有意に骨形成促進効果を認め、相加効果が示された。副作用はiPM群とコントロール群には認めず、BMP2群と併用群のみで背部に炎症による強い局所腫脹を認めた。以上から、iPM製剤は副作用なく、安全な骨癒合促進治療製剤である可能性が示唆された。(論文投稿準備中) ② iPMの骨形成促進機序の解明:in vitroにて間葉系幹細胞(MSC)から成熟骨芽細胞までの分化、評価系を最適化し、MSCの増殖実験と、MSCの分化実験(成熟骨芽細胞マーカーのqPCRによる定量、Alizarin red染色とその定量)を行った。これによりiPMとBMP2では間葉系幹細胞への作用が異なり、前者はMSCの増殖促進効果のみ、後者はMSCの分化促進効果のみを有することが示された。つまり、iPMもBMP2も動物実験では骨形成促進効果を認めるが、iPMは骨再生への種を増やす作用を有するのに対し、BMP2は種を成熟させる作用を有する可能性が示された。 (①②論文投稿準備中) ③ BMP2遺伝子強制発現による骨再生用機能強化型iPMの作製:元々のiPMに含まれていないBMP2の発現をELISAにて確認できた。しかし、上記動物モデルを用いた実験にて、遺伝子強制発現していないiPMに比べ、有意な骨再生効果は認めず、現状の強制発現株では、発現量が不十分であるという結論に至った。
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今後の研究の推進方策 |
iPMの臨床応用を最終目標に、今後は以下について検証を進めていく。 (1) iPMの骨形成促進効果と長期安全性の検証:ラットモデルにて、骨形成促進効果と短期の安全性は確認できたが、本年度は長期安全性試験を行う。また非臨床POC獲得目的に、中動物(ラビット)の腰椎癒合モデルでも骨形成促進効果と長期安全性の確認を行う。本実験で使用するiPM製剤は、現在実験用の攪拌培養器で分化誘導してきたが、臨床応用を見据え、100倍スケールで実行可能なバイオクリアクター(VerMES)で作製したiPM製剤も使用し、骨形成促進効果、安全性を比較検証する。 (2) iPMの骨癒合促進機序の解明:iPMs, BMP2 単独のMSC に与える影響を分子レベルで解明するため、mRNA 発現解析 (RNA シークエンス)を実施する。本解析は、MSC増殖培養系で3条件、MSC の骨芽細胞分化培養系で3条件の計6条件で検証を実施する。 また現在使用しているiPMには巨核球:血小板=1:3であるが、これらを単離し、それぞれのMSCへの増殖促進効果を検証する。また現在使用している不死化巨核球株以外の株でも再現性の検証を行う。これらのデータを、GAN(敵対的ネットワーク法)を用いたAI解析を用いて、良質な骨癒合を得るために最適なPRPサイトカイン比率、濃度を確定する。 (3) 遺伝子強制発現による骨再生用機能強化型iPMの改良:現在のベクターシステムでは、BMP2の十分な発現が得られなかったため、遺伝子導入法の改良によるBMP2発現量の増加、また他のBMPファミリー遺伝子(例えばBMP7)の同時強制発現による相加効果を図り、骨形成促進効果の向上を検証する。
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