研究課題/領域番号 |
23K24483
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補助金の研究課題番号 |
22H03224 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
吉田 好雄 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (60220688)
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研究分担者 |
辻川 哲也 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (30380033)
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
水谷 哲也 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (90322734)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 子宮肉腫 / エクソーム / 転移巣 / 微小環境 / 薬剤抵抗性 / エクソソーム / 難治性子宮肉腫 / 分泌タンパク質 / GDF15 / Progranulin / Osteopontin / Midkine / exosome解析 |
研究開始時の研究の概要 |
子宮肉腫の肺転移機構とplasma gelsolin (pGSN)の関係を探索することである。この試みは①初期子宮肉腫患者血中にProgranulin等の複数のタンパク質が過剰に存在する。②これらの制御遺伝子は、同時に細胞間コミュニケーション機構を担うexosome分泌も制御する。③他がん種ではあるがpGSNが、転移巣の微小環境に作用し、薬剤抵抗性を獲得するという機構が存在するに立脚する。本研究では、A) 子宮肉腫における防御環境存在の証明。B) 防御環境構築に関するpGSNの役割検討。C)防御環境バイオマーカー検索を行う
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研究実績の概要 |
子宮肉腫は、5年生存率が20%以下と極めて予後不良である。申請者は、この現象の背景に「防御環境」(潜伏性がん細胞環境構築)が存在し、転移巣で生存できる微小環境が形成されている可能性を考えた。 この概念を支持する知見として、連携研究者のTsnag(Ottawa University)らが、卵巣がんにおいて、原発巣-転移巣細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たすexosome内の蛋白質plasma gelsolin (pGSN)が転移巣の微小環境に作用し、薬剤抵抗性を獲得する機構を報告した。我々は、子宮肉腫転移機構解明のために開発したtranslational in vivo model(Mizutani, Yoshida et al. Cancer Letter 2015)と、公共データベース(The Cancer Genomic Atlas; NCI、GEO database; NCBI)を用いた検討により、早期進行期子宮肉腫に特異的に高発現する分泌タンパク質GDF15、Progranulin(特許第6694219号)、Osteopontin(特許第6694220号)、Midkine(特許第6532058号)を世界で初めて報告し、特許を取得した(Mizutani, Yoshida et al. End J. 2020)。しかし、その役割は不明である。 また、これらの分泌タンパクの制御遺伝子はexosome分泌を制御する遺伝子であることも判明した。これらの知見は、子宮肉腫においても早期から「タンパク質あるいはexosome」が原発巣から分泌され、原発巣-転移巣細胞間コミュニケーションが活発に行われている可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備実験において、CDDP抵抗性のC13*細胞がCDDP感受性の2008細胞より多くのエクソソームを産生することが明らかとなった。また、SKOV3細胞におけるシナプトソーム関連タンパク質23 (SNAP-23) のO-GlcNAcylationの減少が可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体の形成を促進し、シスプラチンの流出を増加させ、エクソソーム放出を刺激し、化学療法抵抗性を引き起こす可能性が示唆された。電子顕微鏡、ELISAおよびウェスタンブロットを用いた解析により、pGSNは化学療法剤耐性および抵抗性細胞由来のエクソソームで検出され、その量は抵抗性由来のエクソソームで特に多かった。 共培養システムでは、化学療法抵抗性細胞(A2780cp、OV90、OV866(2))由来のエクソソームが、化学療法感受性細胞(A2780s、OV4453、OV2295)にシスプラチン抵抗性を付与したが、この反応はエクソソームのpGSNをサイレンシングすることで阻害された。一方、化学感受性細胞由来のエクソソームはシスプラチン耐性を誘導しなかった。外因性ヒト組換えpGSNで前処理した化学感受性OVCA細胞もシスプラチン耐性を示し、pGSNがオートクラインおよびパラクラインメカニズムを介して化学療法抵抗性を媒介することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
子宮肉腫における新規分泌たんぱく質とexosomeの作用機序解明 A) 新規分泌たんぱく質の作用機序解明(研究代表者・共同研究者) 当科で樹立した子宮肉腫の①低転移株および②転移巣の正常細胞(肺の正常間質細胞)に新規分泌たんぱく質で処理し、薬剤抵抗性、細胞増殖能、移動・浸潤能アッセイを実施して各々の細胞機能の変化を検討する。次に、これらの新規たんぱく質を①低転移株および②転移巣の正常細胞で処理し、標的予測データベースに基づいて標的遺伝子を同定。同定された遺伝子を抑制して細胞の移動・浸潤能の変化を評価する。in vivoモデルを用いた解析:原発巣および転移巣の発現遺伝子解析(genome解析)を行い、その後相関関係解析(Radiogenomics解析)を実施。転移早期相・晩期相における原発巣・転移巣の組織、腫瘍細胞および周囲の間質の微小環境の変化を検討し、子宮肉腫肺転移決定因子を同定する(研究分担者)。同定した分泌たんぱく質の投与による因子の変化と転移能形成への影響を評価する。 B) 高転移株におけるexosome解析(研究代表者・共同研究者) exosomeの機能解析:高転移株の細胞上清からマーカー遺伝子(CD9, CD63, CD81)の発現と免疫電子顕微鏡によるexosomeの存在を確認。①低転移株および②転移巣の正常細胞(肺の正常間質細胞)を同定されたexosomeで処理し、薬剤抵抗性、細胞増殖能、移動・浸潤能アッセイを実施し、細胞機能の変化を検討する。
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