研究課題/領域番号 |
23K24491
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補助金の研究課題番号 |
22H03232 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
香取 幸夫 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20261620)
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研究分担者 |
井上 誠 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00303131)
本藏 陽平 東北大学, 大学病院, 講師 (20810146)
池田 怜吉 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (30645742)
岡崎 達馬 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (40396479)
杉山 庸一郎 佐賀大学, 医学部, 教授 (50629566)
白石 成 東北大学, 歯学研究科, 助教 (60585355)
平野 愛 東北大学, 大学病院, 助教 (60596097)
鈴木 淳 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80735895)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 嚥下障害 / 誤嚥性肺炎 / 転写因子Nrf2 / 嚥下造影検査 / 一塩基多型 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は抗酸化を統括的に誘導する転写因子Nrf2の減少や、飲酒、低亜鉛食が加齢による嚥下機能の低下や誤嚥性肺炎の発症・重篤化に関連するかを明らかにし、高齢者の嚥下障害の治療標的になるかどうかを解明する。 Nrf2の減少、アルコール摂取、低亜鉛食状態の各々のモデル動物を用いた実験を行う。ならびに嚥下障害ないしは誤嚥性肺炎を伴う患者の方々の病歴と嚥下機能を、観察研究に同意を得た方々を対象に、嚥下内視鏡検査、嚥下造影検査、嚥下関連筋の超音波検査の結果を用いて解析する。
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研究実績の概要 |
抗酸化を統括的に誘導する転写因子Nrf2に着目し、Nrf2の活性化が加齢や脳卒中による嚥下機能の低下や誤嚥性肺炎の重症化を予防できるかどうかを検討するため、2022年度はマウス、ラットを用いた動物実験を進めた。 ①現有する小動物用透視検査装置を用いた嚥下造影によりマウスおよびラットの嚥下機能低下を評価できるかどうかを検証するため、健常動物と様々な運動および感覚機能の低下を呈する亜鉛欠乏マウスを用いて検証を行った。マウスとラットの嚥下造影検査に関して適切な欠食時間と造影剤入りチョコレートシロップの投与方法を確立し、安定した測定結果を得た。生後5週齢~10週齢まで亜鉛欠乏食を給餌したマウスでは正常食のマウスに比して、今後の解析の指標となる嚥下口腔期ならびに咽頭期の機能低下が確認し得た。 ②誤嚥性肺炎のモデルマウスを、野生型ならびNrf2ノックアウトマウスに対して、鼻腔からペプシン25μlとlipopolysaccharide 10μlを隔日4週間投与する方法で作成した。野生型、Nrf2ノックアウトマウスともに肺組織の炎症がみられ、後者ではより重要な肺炎像を呈していることを確認した。誤嚥性肺炎のモデルマウスでは、嚥下機能に関わる舌筋、呼吸筋(横隔膜)の萎縮が認められ、その程度は野生型に比してNrf2ノックアウトマウスで著しく、後者のマウスでは疾病環境において嚥下機能の低下が進みやすいことが示唆された。 ③野生型のマウスとラット、ならびにNrf2の発現を抑制した遺伝子改変マウスに対し、小動物用透視検査装置を用いた嚥下造影検査を実施中であるが、透視データの動画解析ソフトにおいてデータ収集時のコマ落ちが確認され、その対応を行い、実験系を修復した。 ④2023年度以降に、加齢マウスの嚥下機能評価に用いる、野生型ならびにNrf2の発現を抑制した遺伝子改変マウスの継代と飼育を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画に照合すると、小動物用嚥下透視装置を用いて安定してマウスやラットの嚥下造影検査を安定してできるようにした点と、実例として亜鉛欠乏マウスを用いた観察を行い、正常および嚥下機能低下を評価する実験系を確立した点は順調な成果として評価される。 また、野生型ならびに酸化ストレスに脆弱なNrf2ノックアウトマウスに対して誤嚥性肺炎のモデルマウスを作成し、Nrf2ノックアウトマウスがより重篤な肺炎と嚥下関連組織の萎縮を呈することを明らかにしたことで、今後の同条件の動物の嚥下造影検査、ならびにNrf2の一塩基多型をもつ嚥下障害患者の観察県k風を行ううえで、基盤となる情報を得ることが出来た。さらに、今後の実験に用いる加齢マウスやNrf2ノックアウトマウスの飼育と継代も進めており、以上の点は順調に進んでいる。 一方で、一定の期間にわたり動画データの収集にコマ落ちが生じ、研究が遅延する原因となった。臨床現場で用いているソフトを準用するようにして改善を図っている。 また、脳梗塞のモデル動物として用いる、中大脳動脈閉塞術を施したラットの作成が遅れており、全体として本研究課題の進捗状況は「やや遅れている」と自己評価します。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 前年度に引き続き、C57BL6マウスの野生型、Nrf2ノックアウトマウス、Keap1ノックダウンマウス(Nrf2活性化)を長期飼育を継続する。また前年度の追加実験に用いる4週、12週齢の若い動物も含めて、以下の実験に用いる。 ①小動物用嚥下透視装置の記録において、前年度にフレームロスの問題が生じ、記録用ソフトウエアの変更を行っている。新規のソフトウエアは臨床現場で実績のあるもので、本年度の初頭に、この新規ソフトウエアを本研究の動物実験に使用するようにセッティングを行う。 ②前項のセッティングに引き続き、嚥下造影検査によりマウスおよびラットの口腔期、咽頭期の機能を解析する。コマ落ちのない毎秒30フレームで撮影した画像から口腔機能の評価指標として顎開閉距離、挺舌回数/嚥下間隔を、咽頭機能の評価指標として咽頭通過時間、食塊面積を測定する。 ③嚥下造影検査に用いる動物の顎二腹筋の筋電図検査を行い、各群間における筋活動の差異を評価する。 ④嚥下機能を解析した動物の舌、顎二腹筋、横隔膜、肺、脳幹を採取し、組織切片で筋萎縮や炎症の所見を評価するとともに、抗4HNE抗体を用いた酸化ストレスの免疫組織科学的解析を行う。またNRF2に誘導される抗酸化酵素群を、PCR、Western blot法により解析する。 (2) 脳梗塞モデル動物を作成し、その嚥下機能評価を行う。一過性中大脳動脈閉塞術を施したラットに対して、嚥下造影検査による機能評価を行う。測定の後、嚥下関連組織を採取し、前項の④に準じた解析を行う。 (3) 高齢者と誤嚥性肺炎患者におけるNrf2の一塩基多型と嚥下機能との関係を明らかにする観察研究を実施する準備を、東北大学と新潟大学において進める。被検者のリクルートを開始する。
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