研究課題/領域番号 |
23K24498
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補助金の研究課題番号 |
22H03239 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 京都大学 (2023-2024) 帝京大学 (2022) |
研究代表者 |
西村 幸司 京都大学, 医学研究科, 講師 (20405765)
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研究分担者 |
小野 宗範 金沢医科大学, 医学部, 教授 (30422942)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50397634)
伊藤 壽一 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (90176339)
扇田 秀章 滋賀県立総合病院(臨床研究センター), その他部局等, 専門研究員 (20761274)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | ラセン神経節 / 光遺伝学 / 細胞移植 / 遺伝子導入 / アデノ随伴ウイルス / 聴性脳幹誘発反応 / 蝸牛神経 / 分化転換 / 人工内耳 |
研究開始時の研究の概要 |
難聴に悩む人はおおよそ世界人口の5%であり、65歳以上の実に3分の1が日常生活に支障をきたす中等度難聴以上の難聴を抱えている。現在高度 難聴患者に対しては蝸牛神経を直接電気刺激する人工内耳が人工臓器として成功を収めているが、多人数での会話、騒音下の会話、音楽の享受 に問題を有する。また、蝸牛神経が変性している場合は人工内耳の効果は低くなる。本研究課題では、蝸牛神経を細胞移植あるいは分化転換に より再生させて、光遺伝学的手法を応用した光刺激人工内耳により再生された蝸牛神経を特異的に刺激して聴覚機能を検証し、高度感音難聴者 に対する新規治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
京都大学においてThy1-ChR2-YFPホモマウスをを維持、繁殖させた。光刺激による聴性脳幹反応を以下の方法で測定した。8週齢Thy1-ChR2-YFPホモマウスオスを音刺激による聴性脳幹誘発反応を測定して、聴力が正常であることを確認した後、左耳後切開によりブラを開放し蝸牛を露出させた。470 nMのLED光10 mWを蝸牛骨壁に当てて10 Hzで光刺激をおこなったところ振幅約400 uVの波形が得られ、既報(Hernandez et al., 2014)の光刺激による聴性脳幹誘発反応(oABR)の波形と酷似していた。蝸牛神経刺激特異的な波形か否か検証すべく、蝸牛神経を特異的に障害する薬物(ウアバイン 1 mM)を左後半規管から1 uL局所投与を行い1週後にoABRを測定したところ、波形に変化は全く見られなかった。また、刺激周期に合わせて顔面痙攣を認めた。したがって得られた波形は蝸牛神経特異的な刺激による波形ではなく、筋電図が混入していると結論した。顔面神経がなぜ刺激されたかに関して今後の検証を要する。神経反射経路として、蝸牛近傍を走行している鼓膜張筋は三叉神経により支配されているが、三叉神経から顔面神経核への入力を介して顔面神経が刺激された可能性を考察している。並行して、蝸牛の神経細胞およびグリア細胞にアデノ随伴ウイルスを感染させる実験をおこなった。AAV9-CAG-ChR2-mCherryベクターを生後1日齢ラセン神経節の器官培養に感染させたところ、非神経細胞での遺伝子発現を確認した。また、AAV9-hSyn-ChETA-YFPベクターを生後1日齢ラセン神経節の器官培養に感染させたところ、神経細胞特異的にChETA-YFPを発現した。 in vivoではChETA-YFPは神経細胞体での発現は明らかでなかったが、有毛細胞へ接続する樹状突起での弱い発現を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光刺激による聴性脳幹誘発反応(oABR)を蝸牛神経再生のツールとして利用すべく、既報(Hernandez et al., 2014)の追試を行ったが、既報の科学的妥当性に疑義が生じ、確認作業に手間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
筋電図の影響を排除して聴覚反応を測定すべく、下丘からシングルチャネルを用いて局所電場電位を測定する系を分担研究者の小野が樹立した。マウス下丘から音刺激による局所電場電位を測定可能となったために、今後、光刺激による下丘からの局所電場電位の測定を予定している。また、神経細胞全体にubiquitousにChR2を発現するThy1-ChR2-YFPマウスではなく、感覚神経細胞にのみChR2を発現するマウスを用いて、oABRの測定を試みる。具体的には分担研究者の小野が所持するVglut2-creマウスのラセン神経節には高いCreの発現を確認できているので、運動神経にCreの発現がないことを確認した上でVglut2-cre; Ai32マウス(Vglut2発現細胞にChR2が発現するマウス)を用いて、oABRおよび下丘からの局所電場電位を測定する。ラセン神経節のグリア細胞特異的に感染するアデノ随伴ウイルスの血清型、プロモーターを選別する。有毛細胞障害後の蝸牛神経のサブタイプ分布に変化が生じるか検証する。具体的にはPou4f1, Lypd-1などのLow-SR神経特異的なマーカーが知られているが、In situ hybridization, 免疫組織化学、定量的PCR法によりコントロール群と蝸牛有毛細胞障害群で、神経サブタイプの二次性変化を比較検討する。ヒトiPS細胞から誘導した神経前駆細胞にAAV9-hSyn-ChETA-YFPベクターを発現し、蝸牛神経障害モデルマウス内耳に細胞移植を行い、蝸牛組織、聴覚機能解析を行う。
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