研究課題/領域番号 |
23K24515
|
補助金の研究課題番号 |
22H03257 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 教授 (00300830)
|
研究分担者 |
藤田 智史 日本大学, 歯学部, 教授 (00386096)
山本 清文 日本大学, 歯学部, 講師 (30609764)
中谷 有香 日本大学, 歯学部, 講師 (60781391)
加藤 成樹 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (90443879)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
|
キーワード | ケミカルジェネティクス / 島皮質 / Parvalbumin陽性細胞 / 局所神経回路 / 神経障害性疼痛 / Parvalbumin陽性ニューロン / 痛覚 / 抑制性ニューロン / 逃避行動 / 可塑性 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者らは,口腔顔面領域の痛み情報を処理する島皮質の神経回路が①神経障害性モデルにおいてどのような変化を起こすのか,そして②組換えが起こった神経回路の制御を可能にする抑制性神経回路の可塑性について研究を進めてきた。その結果,痛みの原因となる外傷や腫瘍が治癒した後も,可塑的に変化した島皮質神経回路が過剰に興奮している限り痛みは持続することが明らかになった。そこで本研究では,神経障害性疼痛モデルで生じる島皮質の局所神経回路の異常をケミカルジェネティクスによって制御し,組換えが生じて過興奮に陥った島皮質からの出力を抑制することによって慢性疼痛の発症を抑制するメカニズムを解明する。
|
研究実績の概要 |
Parvalbumin-Creトランスジェニック・ラットの頭部を脳定位固定装置に固定し,ウイルスベクター(AAV-Flox-hM3D-mCherry; AAV-hM3D)を注入することによって,Parvalbumin陽性細胞特異的に遺伝子改変ヒトムスカリン受容体hM3Dを発現させた。さらに特異的に結合するDesigner Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs(DREADD)としてクロザピン N-オキシド(CNO)を投与する必要があるが,その方法について,行動解析実験に影響がでないようにするために無麻酔下で注入する必要性が生じた。しかしながら,Long-Evansラット由来のParvalbumin-Creトランスジェニック・ラットは体が大きく,馴化させても体動が大きいことから,現有する装置および手技では,無麻酔下でのCNOの注入が困難であることが判明した。 そこで,外套と内套がセットになった金属カニューレを特注して製作し,島皮質にAAV-hM3D注入した同日にそれらを設置する手法に切り替えた。このシステムにより,AAV-hM3D注入時の創傷が治癒した後,吸入麻酔下で内套を外し,代わりに31ゲージ針をカニューレに沿って挿入してCNOを注入することが可能になった。CNOを投与して90分後に,痛み刺激を顔面髭部にランダムに赤色レーザーを照射することによって侵害刺激を行い,刺激に対する回避行動を毎日記録し定量化するシステムを新たに構築した。現在,CNOの投与量を変化させて脳損傷が生じずに,行動観察できる量を解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
行動実験システムを変更する必要が生じたため,その調整に時間が掛かった。現在,問題は解決しているので,令和6年度集中的に課題に取り組む予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
PV-CreラットへAAV-hM3Dを注入後,下歯槽神経を切断したモデルを作製する。島皮質が最も過剰に興奮する2週後から,一定濃度で数日単位の薬物投与できる浸透圧ポンプを用いてCNOを島皮質表面の硬膜下へ持続注入する(CNO持続投与群)。対照群には食塩水を注入する。CNO持続投与による島皮質神経活動の変調とその作用機序についてin vitro標本(プロジェクトⅠ)およびin vivo標本(プロジェクトⅡ)にて明らかにする。 Ⅰ.ケミカルジェネティクスによる島皮質局所神経回路の可塑的変化の解明 CNO持続投与1-2週後に,島皮質スライス標本に多チャンネルパッチクランプ法を適用する。CNO持続投与群と対照群におけるシナプス伝達特性の違いを検討し,ケミカルジェネティクスの神経回路レベルでの効果を解明する。すなわち,PVニューロンと錐体細胞から同時ホールセル・パッチクランプを行い,電流固定下でPVニューロンに活動電位を発生させて,電圧固定下の錐体細胞から得られる単一抑制性シナプス後電流(uIPSCs)を記録する。CNOの灌流投与によるPVニューロン→錐体細胞のシナプス伝達について,PVニューロンの自発発火とそれに伴うuIPSCsの発生頻度及び振幅を解析し,CNOの投与濃度や時間を変化させてuIPSCsの長期増強メカニズムについて電気生理学的,薬理学的に解析する。 Ⅱ.痛み回避行動に対するケミカルジェネティクスの行動薬理学的検証 覚醒ラットの808 nmレーザー光を髭部に照射して熱刺激を与えると,痛みから逃げようと四肢でディスクを回転させる。その際の回転速度を計測して痛みの程度を定量化する。また,3方向から暗視野カメラで顔面を撮影し,眼球の露出度や顔面ひっかき行動についても定量化する。
|