研究課題/領域番号 |
23K24535
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補助金の研究課題番号 |
22H03277 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
齊藤 一誠 朝日大学, 歯学部, 教授 (90404540)
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研究分担者 |
寺嶋 雅彦 朝日大学, 歯学部, 講師 (20398085)
佐藤 正宏 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, ゲノム医療研究部, 共同研究員 (30287099)
稲田 絵美 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (30448568)
薗村 貴弘 朝日大学, 歯学部, 教授 (40347092)
野口 洋文 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50378733)
照沼 美穂 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50615739)
清川 裕貴 朝日大学, 歯学部, 助教 (70980530)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 乳歯 / 小児 / iPS細胞 / iTS細胞 / 1型糖尿病 / 膵幹細胞 / 歯髄細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
iPS細胞は体性細胞から樹立され、臨床応用への研究・開発が活発に行われている。しかし、潜在的な奇形腫形成(造腫瘍性)の危惧、特定分化細胞への効率的な分化誘導法の不在など、未だ重要な課題が残る。我々は脱落乳歯の歯髄細胞(HDDPC)由来iPS細胞を用い、世界に先駆けて人工的な膵幹細胞(iTSC-P)を樹立し、これをヌードマウス膵臓内に細胞移植し、造腫瘍性のないインスリン分泌性細胞の長期維持に成功した。そこで本研究では、iTSC-Pを基盤とし、1型糖尿病患者への自家移植可能な安全且つ機能的な新規β細胞分化誘導系の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
1型糖尿病(Type 1 diabetes, T1D)は、膵島に存在するインスリン産生細胞(β細胞)に対する自己免疫疾患である。T1D発生率は国によって異なり、本邦では1年間の新規発症例は約500人とされ、国指定の小児慢性特定疾病である。 一方、「再生医療におけるiPSCから特定の分化組織・細胞を取得する試み」は国内外とも盛んで、本邦では2014年理研にて世界初、iPSC由来網膜細胞の加齢黄斑変性患者への移植手術が行われた。2018年には難治性重症心不全、パーキンソン病、脊髄損傷への臨床研究実施計画も了承された。しかし、国内外とも①潜在的な奇形腫形成(造腫瘍性)の問題と②目的分化細胞への効率的な分化誘導系の確立は依然停滞し、再生医療現場では未だに生体由来の組織性幹細胞(tissue-specific stem cell, TSC)が多用されている。 iPS細胞は体性細胞から樹立され、臨床応用への研究・開発が活発に行われている。我々は侵襲なく取得できるほぼ唯一の生体組織である脱落乳歯の歯髄細胞(HDDPC)由来iPS細胞を用い、世界に先駆けて人工的な膵幹細胞(iTSC-P)を樹立し、これをヌードマウス膵臓内に細胞移植し、造腫瘍性のないインスリン分泌性細胞の長期維持に成功した。この成果により、1型糖尿病患者の乳歯からiPS細胞を経由したiTSC-Pを樹立し、1型糖尿病モデルマウスへの移植により、血糖値改善が可能となる機能的なインスリン分泌β細胞の再生が可能となる。そこで本研究では、iTSC-Pを基盤とし、1型糖尿病患者への自家移植可能な安全且つ機能的な新規β細胞分化誘導系の開発を目指す。本手法はバイオマスとしての乳歯の有用性を証明するだけでなく、患児の乳歯から他臓器へiTSCを利用したテーラーメイド型再生医療にも活用でき、高い汎用性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度において、1型糖尿病患者から得たT1D-HDDPC由来のT1D-iPSCを樹立し、さらにNSCへの転換を目指した。すでに我々が独自でT1D-iPSCは、ヒトiPSCの特徴であるEpi stem cellと同等であり、若干分化している状態である。そのため、さらに脱分化を進め、幹細胞性を高めたNSCの樹立を試みた。具体的には、Inadaらに習い、NSC転換用薬剤含有培地にて継代培養し、iPSCからT1D-NSCへの転換を行った。この過程で台地状であったiPSC colonyは、ドーム型colonyに転換する。ヒトiPSCは本来、SSEA-1抗原を発現しないが、NSCに転換すると、SSEA-1抗原を発現するようになるので、ドーム型colonyがSSEA-1陽性と判断されれば、NSCと判断される。今回樹立したT1D-NSCは、ドーム型colonyを呈し、SSEA-1陽性であったため、その幹細胞特性等を評価した。 2年目の本年度は、T1D-iPSCからNSC転換用薬剤処理でNSCへ転換後、これを非接着性培養皿上で1週間浮遊培養させ、胚様体を形成させた。この過程で、胚様体を構成する細胞では、① β細胞前駆細胞(iTSC-P、あるいはそれに近い細胞)への強制的な分化誘導、②それに伴う残存NSC成分の消失、が期待される。次いで、Kiyokawaらの手法に習い、胚様体を接着性培養皿上に播種し、Wnt3a、activin A含有分化誘導用培地にてiTSC-Pまで分化させた。iTSC-P colonyは、PDX-1などの膵幹細胞特異的マーカー発現をRT-PCR法にて確認した。
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今後の研究の推進方策 |
iTSC-Pの特徴は、①奇形腫形成に抵抗性を示し、②in vitroで効率的にグルコース応答性インスリン分泌性β細胞様細胞に分化させることができ、人為的に糖尿病を発症させたヌードマウスへのiTSC-P移植実験から、③iTSC-P移植は、数日間の血糖値改善が可能である。本研究では乳歯由来の材料を用い、効率良くβ細胞を作製し、最終的にはその自家移植によるT1D治療法の開発を目的とした。 2024年度には、樹立したT1D-iTSC-Pの組織学的解析およびqRT-PCR、マイクロアレイなどのmRNA解析に付す。また、抗造腫瘍性確認のため、得られたT1D-iTSC-PをIPPCTにてヌードマウス膵内に移植し、移植後1.5もしくは6ヶ月目に剖検し、造腫瘍性の有無を目視で確認する。大型の固形腫(奇形腫)が確認されない場合、造腫瘍活性は認められないと判断される。一方、移植部位には移植細胞と目される小塊にインスリン産生細胞が含まれるかを、組織学的解析およびqRT-PCR、マイクロアレイなどのmRNA解析に付す予定である。
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