研究課題/領域番号 |
23K24565
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補助金の研究課題番号 |
22H03307 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 日本大学 (2024) 東京大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
田倉 智之 日本大学, 医学部, 教授 (60569937)
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研究分担者 |
後藤 景子 順天堂大学, 革新的医療技術開発研究センター, 准教授 (10772519)
櫻井 義尚 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (30408653)
蓋 若エン 長崎大学, グローバル連携機構, 教授 (30759220)
杉原 茂 日本大学, 経済学部, 教授 (60397685)
中山 健夫 京都大学, 医学研究科, 教授 (70217933)
上月 正博 東北大学, 医学系研究科, 名誉教授 (70234698)
川本 祐子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 助教 (70527027)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 健康行動 / ビッグデータ / 人工知能 / 医療経済 / 疾病予防 / アドヒアランス / 人工知能:AI / 後発薬への切替 / 医療ビッグデータ / データサイエンス / 人間の主観 / 選択と行動 |
研究開始時の研究の概要 |
疾病予防の議論の主流である複雑系のアドヒアランスは、健康アウトカムや社会経済に対する影響が大きいものの、影響因子や構成要素の機序に関する実証研究が少なく、臨床現場の介入等への応用で制限がある。その探求は、多種多様な因子を大量なサンプルで取り組む必要もあり、近年、計量経済学や統計物理学等の応用が期待される。 一般的に、学術的な課題として、患者と医療者の信頼関係の探索、深層学習における特徴抽出の精査等が挙げられる。以上を踏まえ本研究は、臨床経済的な観点からアドヒアランスの要素を整理し、それが長期の医療・介護費用や生命予後に与える影響を、データサイエンスで予備的に検証し予測モデルの開発を試行する。
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研究実績の概要 |
本年度は、関連データの整備(医療ビッグデータの整備)および分析環境の整備(AIプログラミングの準備)を行いつつ、広義のアドヒアランス(ASHROスコア)の検証用の被保険者向けのアンケート調査の準備とともに、後発薬処方に対するアドヒアランス等の影響に関わる一次解析を行った。 アドヒアランスは、環境や経験等の相互作用を通じた社会的様式を伴う、人間の主観的な側面を有しているため、そのメカニズムの解明(関係する因子)や定量化(見える化、代表的な水準)において、課題が多いのも事実である。それらを背景に、アドヒアランスに関わるアンケート調査にあたり、協力団体等との連携のもとで、行動変容に影響を及ぼす因子の一つである時間割引に関する先行研究をサーベイした。その上で、従業員向けと経営者向けの2種類の調査票を整備した。本調査は、アドヒアランスに影響を及ぼす固定的因子とアドヒアランスの水準の測定に関する課題で構成した。その結果、従業員向けの調査は約50設問、経営者向けの調査は約30設問となった。 後発薬品の処方を積極的に拡大するには、アドヒアランス等も考慮した新たな工夫が不可欠と推察される。それを踏まえ、後発薬処方に対するアドヒアランス等の影響の分析は、患者の重症度、アドヒアランス、および医師と患者の関係が後発薬品の切り替えに与える影響を明かにするのを目的とした。コホートは、2018年3月までの4年間に心血管疾患(ICD-10、I 00-99)で、一次から三次までの予防介入を必要とする全年齢層であった。AIを応用して生成したASHROスコアと収縮期血圧 (SBP)、血清クレアチニン (sCr)、LDLコレステロール、ヘモグロビンA1C、処方遵守の割合 (PDC)に対して、ロジスティック回帰分析を実行した。その結果、SBPとsCr、PDC、ASHROが後発薬の切り替えに有意に影響を及ぼした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度においては、サーバ等の設置およびビッグデータの導入は概ね完了したが、当初予定をしていたコホートの生成は途中となった。その理由として、大きなデータサイズと膨大な評価指標の取扱における負担と煩雑が挙げられた。データの取扱いおよび基本統計の展開において、スループットを向上させる手法の検討や試行に多くの時間がかかり、最終的なデータセットやマスタセットに至らなかった。 当初の予定では、医療ビッグデータ(データサイエンス)で生成した広義のアドヒアランス(ASHROスコア)の検証のため、アドヒアランスに関わる定量情報を別系統で収集し検証を行う予定であった。しかし、協力団体との各種調整および委託調査会社の都合等により、調査票の配布回収が未完了の点があり、データの集計・解析を行いアドヒアランスの精度を検証するには至らなかった。この課題と調査については、引きつづき次年度に繰越しつつ継続して調査分析を実施する予定である。 上記の課題については、対応策を既にいくつか検討し、解決の見通しを立てている。データの取扱については、データ処理の分散型や指標の絞り込み、マスタ等の見直しを行なう予定である。アンケート調査については、次年度の年初に終了を予定している。なお、設問数の多さによる回答率の低下にも配慮し、一部はWEB調査で補完も予定をしている。 これらを背景に、自己成長型のプラットフォームの整備については、システム設計を十分に落とし込むことが出来ていなかった。一方で、基本的な機能構成の検討は、従前の研究成果を踏まえて基本設計は完了した。分析のデザイン等についても同様に終了はした。ただし、AI関連(物理統計、シミュレーション等)については、従前の研究成果をさらに発展させるに至っておらず、次年度以降に深層学習等をさらに深耕させる予定である。情報工学に明るいスタッフの追加参画も予定している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果を踏まえつつ、2年目に「疾病予防の新たな介入法の検討」として最適プログラムの作成を既存保健事業の延長で行い、3年目に構築したプラットフォーム上へ検討したプログラムの検証や予測モデルの精度向上のプロセスを展開する。 臨床経済的なアウトカム評価は、長期縦断研究(後ろ向き観察,分析期間48か月間)で展開する。また、データサイエンスによる予測モデルの開発も、その形態に準じる。診療実績と医療費用は、レセプトデータ(医科外来、入院、調剤等)、臨床指標や生活習慣は、健康診査データ(検査項目・検査値、指導内容等)をIDで連結して利用する。 分析対象群は、循環器・腎不全、及び内分泌・代謝(ICD-10のI00-99,N00-29,E00-35/50-90)を中心に、医療機関を受診(年間1回以上の医科外来/入院,歯科)または健康診査(5年間で1回以上)を受けた約10万人とする。除外基準は、希少疾患や医療扶助群とする。症例数の設定根拠は、一般統計や先行研究[1]等の罹患率・抽出率を参考とする。 臨床経済アウトカムのうち、主要評価項目は48か月間累積の医療費用と生命予後(Life year)とする。副次評価項目は、各疾病の臨床指標(体重、収縮期血圧、eGFR、HbA1c、LDL-C、TG等)および費用対効果分析(増分費用効果比)等の医療経済的パフォーマンスとする。各種指標の一般統計解析は、多変量解析(ロジスティック回帰分析等)や傾向スコア法等で行う。 アドヒアランスに対するアウトカムの予測モデルは、トレーニングモデル生成のハイパーパラメータ調整のために、グリッド検索を実行し各トレーニングモデルをK分割交差検定で評価し、Bootstrap法等のValidationも経て10段階のスコア化を行なう。
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