研究課題/領域番号 |
23K24589
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補助金の研究課題番号 |
22H03331 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 (2024) 三重大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
村田 真理子 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (10171141)
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研究分担者 |
及川 伸二 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
翠川 薫 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (20393366)
有馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 医療科学研究科, 教授 (30263015)
小林 果 三重大学, 医学系研究科, 講師 (70542091)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 炎症 / がん / 神経変性疾患 / 化学予防剤 / 傷害関連分子パターン / アポトーシス / オートファジー / DNA損傷 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国において、がんおよび神経変性疾患は重大な社会問題である。がんや神経変性疾患などの生活習慣病の様々な病態は慢性炎症を共通の基盤としている。我々はがん化学予防剤が炎症関連発がん動物モデルにおいて、がんを抑制することを見出している。特に、DAMPの一種HMGB1が炎症を増悪することに着目し、化学予防剤が細胞死や生存・増殖にどのように影響するかを検証し、炎症に共通する鍵となる分子を探索する。がん化学予防剤が神経変性疾患にも応用できるかを、老化促進モデルマウスを用いて、神経細胞傷害に化学予防剤が有効かを検討する。以上より、共通基盤をなす炎症に着目して、化学予防剤の作用機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
がんや神経変性疾患などの生活習慣病の様々な病態は慢性炎症を共通の基盤としている。我々はがん化学予防剤が炎症関連発がん動物モデルにおいて、がんを抑制することを見出している。炎症性大腸炎-大腸がんモデルであるアゾキシメタン (AOM)およびデキストラン硫酸ナトリウム (DSS)をC57BL/6マウスに投与し、大腸がんの発生をアミノ酸の一種であるタウリンや生薬甘草の主成分であるグリチルリチンの投与で抑制することを見出している。さらに、タウリンを用いて、ヒト上咽頭癌由来の培養細胞において、アポトーシスを誘導して癌細胞の増殖抑制に寄与することを示してきた。ヌードマウスの皮下にヒト上咽頭癌由来細胞株を一定数移植し、腫瘍の形成を確認後、タウリンを投与する群と対照群(溶媒投与)に分け、一定期間観察した。腫瘤を摘出し、重量を測定し、タウリン投与群で腫瘍重量が有意に低いことを見出した。摘出した腫瘤を用いて、ホルマリン固定パラフィン包埋切片を作成し、アポトーシスおよびオートファジー関連分子を免疫組織化学法により検出した。その結果、タウリン投与群で、アポトーシスの指標となるcleaved caspase-3やアポトーシス誘導因子であるp53が有意に上昇し、また、オートファゴゾーム関連タンパク (LC3)およびオートファジー誘導因子 (Beclin1)が有意に高いことを明らかにした。タウリンはTFEB発現を上昇させ、MAPK/ERKシグナル経路の発現低下を介してオートファジーを活性化することが示唆された(Acta Histochem. 2023, 125(1):151978)。MAPK/ERKシグナル経路は炎症を含む種々の遺伝子の発現調節することが知られており、タウリンが炎症抑制を介して、がん化学予防剤として作用する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はタウリンが炎症抑制を介して、がん化学予防剤として作用する可能性を示し、また、p53の活性化に寄与することを明らかにした。がん抑制遺伝子p53はBeclin1と相まってアポトーシス細胞死あるいはオートファジーに影響を与える。がんと神経変性疾患は加齢や環境要因により惹起される炎症を共通の基盤として細胞傷害・DNA損傷という共通経路を有する。しかし、その後は、神経変性疾患とがんでは細胞死に至るのか、生存・増殖に向かうのか、それぞれ独自の経路に進むことが想定される。現在、老化促進マウスSAMP8を用い、アルツハイマー病などの神経変性疾患モデルとして、タウリンの抑制効果について観察を続けている。がん化学予防剤が神経変性疾患にも応用できるかを、脳神経系機能と神経細胞傷害に対し化学予防剤が有効かを検討しており、概ね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1) ヒト培養細胞を用いた がん化学予防剤効果の検出:ヒトがん由来細胞株およびヒト不死化正常細胞株を化学予防剤で処理し、また、オートファジーの誘導剤・阻害剤やアポトーシスの誘導剤・阻害剤を用い、MTTアッセイにより細胞増殖能を測定する。培養上清および細胞中のDAMPs 、炎症性サイトカイン等を測定する。オートファゴゾーム検出プローブを用いてオートファジーを蛍光顕微鏡にて検出する。 2) 炎症関連組織の免疫組織化学的解析: 動物実験により得た炎症関連がんの組織標本を得てパラフィン切片を作製する。免疫組織化学染色法にて、炎症マーカーおよびDNA損傷マーカー8-ニトログアニンや8-oxodGの生成部位を解析する。 RAGEおよびDAMPsの抗体を用いて炎症とDAMPs-RAGE経路との関係を検討する。オートファゴゾーム関連タンパク (p63, LC3)によりオートファジー、 caspases、BAX、Bcl-2などによりアポトーシスを評価する。 3) 老化促進モデルマウスを用いた学習記憶障害に対する化学予防剤の効果の検討:老化促進マウス(SAMP8)に化学予防剤を投与し、一定期間観察する。モリス水迷路テストにより、学習記憶障害を評価し、化学予防剤の有効性を評価する。血液試料を用いて、サイトカインプロフィールについて測定する。脳組織を摘出し、免疫組織染色法を用いて各種分子を検討する。
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