研究課題/領域番号 |
23K24596
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補助金の研究課題番号 |
22H03338 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
近藤 一博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70234929)
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研究分担者 |
岡 直美 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (00704503)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | ストレスレジリエンス / ヒトヘルペスウイルス6 / HHV-6 / SITH-1 / うつ病 / 潰瘍性大腸炎 / ストレス / 疲労 |
研究開始時の研究の概要 |
うつ病などのストレス関連疾患の原因としてストレスレジリエンスの低下が重要視されている。しかし、ストレスレジリエンスのメカニズムには不明な点が多い。 最近我々は、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が潜伏感染時に産生するタンパク質SITH-1を発見し、HHV-6 SITH-1がストレス応答を亢進させる ことで、うつ病の原因となることを見いだした。 本研究は、SITH-1によるストレスレジリエンス低下機構の生物学的側面を明らかにし、ストレス関連疾患予防のための分子基盤を得ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
うつ病や潰瘍性大腸炎を含むストレス関連疾患の原因としてストレスレジリエンスの低下が重要視されている。しかし、ストレスレジリエンスは、遺伝的、生物学的、生理学的、心理学的要因が絡む複雑な現象であり、そのメカニズムには不明な点が多い。最近我々は、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が潜伏感染時に産生するタンパク質SITH-1を発見し、HHV-6 SITH-1がストレス応答を亢進させることで、うつ病の原因となることを見いだした。また、潰瘍性大腸炎に関しても、患者の約4割で抗SITH-1抗体が陽性であることを見出しており、SITH-1が潰瘍性大腸炎の増悪や何らかの病態に関係すると考えられた。本研究は、SITH-1によるストレスレジリエンス低下機構の生物学的側面を明らかにし、ストレス関連疾患予防のための分子基盤を得ることを目的とする。 今年度は、代表的なストレス関連疾患であるストレス性うつ病と潰瘍性大腸炎とHHV-6 SITH-1との関係を検討可能なマウスモデルを作成した。方法としては、SITH-1発現マウスにストレス関連疾患に関わるストレス負荷を与えることで疾患マウスを作成した。ストレス性うつ病のモデルとしては、SITH-1マウスに傾斜ケージ飼育やwater cageによる不眠などの軽いストレスを与えることで、うつ病を発症させるモデルを作成した。潰瘍性大腸炎モデルでは、デキストラン硫酸ナトリウム刺激による潰瘍性大腸炎がSITH-1によって重症化することを確認し、モデル動物を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表的なストレス関連疾患であるストレス性うつ病と潰瘍性大腸炎とHHV-6 SITH-1との関係を検討可能なマウスモデルを作成しすることができた。方法としては、SITH-1発現マウスにストレス関連疾患に関わるストレス負荷を与えることで疾患マウスを作成した。 ストレス性うつ病のモデルとしては、SITH-1マウスに傾斜ケージ飼育やwater cageによる不眠などの軽いストレスを与えることで、うつ病を発症させるモデルを作成した。このモデルでは、脳内での炎症性サイトカイン産生亢進も確認しており、うつ病患者の病態により近いモデルであると考えられる。 潰瘍性大腸炎モデルでは、デキストラン硫酸ナトリウム刺激による潰瘍性大腸炎がSITH-1によって重症化することを確認し、モデル動物を得ることができた。このモデルでは、デキストラン硫酸ナトリウム刺激単独で作製した潰瘍性大腸炎モデルに比べて、SITH-1が加わることで大腸の炎症や病理変化の亢進が観察され、これまでのデキストラン硫酸ナトリウム刺激モデルに比べて、重傷の潰瘍性大腸炎の病態に近いと考えられた。 これらのモデルを用いることで、ストレスレジリエンスに関する解析がさらに進むことが期待され、本研究課題の進捗は順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ストレスによる疾患発症とストレスレジリエンスを評価できるマウスモデルの作製に成功したので、これらを用いた解析を行う。特に、これらのモデル動物の脳変化を解析することでストレスレジリエンス低下に関わる神経回路を同定する。方法としては、ストレス応答や自律神経にかかわる海馬、視床下部、扁桃体を中心に、神経伝達物質の産生酵素や分解酵素のタンパク質産生を、病理切片の免疫染色によって解析する。また、Real-time PCR法によって、これらの部位の活性を示す遺伝子発現を解析することで、これらのモデルマウスの脳内で生じている変化を検討し、ストレスレジリエンスに関係する脳部位や神経回路に関する知見を得る。Real-time PCRは、網羅的な検討を行うために、ストレスに関係する遺伝子に関する遺伝子パネルを有効に活用する。うつ病モデルの方は、脳内の炎症性変化や脳内の神経機能に与える影響を中心に解析を行う。潰瘍性大腸炎モデルでは、脳の変化と末梢臓器の関係を解析することも可能であるので、両者を比較検討することで、ストレスレジリエンスに関する脳の機能と、脳機能変化が末梢臓器のストレス疾患に与える影響も検討する。
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