研究課題/領域番号 |
23K24730
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補助金の研究課題番号 |
22H03473 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
山代 幸哉 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (20570782)
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研究分担者 |
横田 裕丈 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 講師 (20827472)
大鶴 直史 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (50586542)
佐藤 大輔 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (60544393)
大森 豪 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (70283009)
越智 元太 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (90833848)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 慢性疼痛 / アスリート / 体性感覚誘発電位 / 皮質内抑制 / GABA / 脳波 / 2連発抑制 / 一次体性感覚野 / 二連発抑制 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では慢性疼痛のアスリートを対象に、痛みに対する注意配分を質問紙調査によって評価する。さらに、時間的分解能に優れ比較的安価な脳波計を用いて脳内の興奮性と抑制性の機能について調査する。また、脳内神経伝達物質を計測できるMRS法を用いて慢性疼痛に関与する抑制性神経伝達物質(GABA)を計測することで、その発生原因を特定する。これらの評価を基にして、慢性疼痛のアスリートでGABA濃度が変化していた対象者には、経頭蓋直流電流刺激(tDCS)により人為的にGABA濃度を変化させ、GABA濃度が不変な対象者には、認知行動療法を適用し、発生原因に応じた慢性疼痛緩和法を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究はアスリートの慢性疼痛を神経生理学的側面と心理学的側面から評価し、アスリートの慢性疼痛を引き起こす原因を多面的に明らかにし、その症状に応じた対処法を実施するものである。これまでに下記のことについて明らかにしてきた。はじめに、慢性疼痛を有するアスリートと慢性疼痛を有しないアスリートを対象にPVAQという痛みに対する選択的注意能力を反映するとされる質問紙に答えてもらった。その結果、慢性疼痛の有無に関わらずアスリートは全体として痛みに対して注意がむきやすい状態であることを示した。従って、①質問紙調査のみではアスリートの慢性疼痛が心理的状態に依存するか否かを検出するのは困難であることが明らかになった。つぎに、慢性疼痛の有無によって、神経生理学的評価として、体性感覚野領域の興奮性や抑制性の機能に変化が生じているかについて検討した。その結果、慢性疼痛のアスリートは慢性疼痛を有しないアスリートと比較して体性感覚野の興奮性の指標となる体性感覚誘発電位が低下していることが明らかになった。さらに、体性感覚野の抑制性の指標となる二連発皮質内抑制は脱抑制していることが明らかになった。このことから②慢性疼痛のアスリートでは慢性疼痛を有しないアスリートに比べて体性感覚野の興奮性が低下し、脱抑制が起こっていることを明らかにした。本研究は予定通り、慢性疼痛のアスリートの対処法として認知心理療法と脳刺激法を用いて対処する段階に入っている。これらの研究に関する実績として2023年までに国際誌に3編の論文が受理されている。今後はより精度の高い慢性疼痛アスリートの選別と慢性疼痛アスリートに対する効果的な対処法について検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、これまでに予定していた慢性疼痛アスリートの心理学的な評価と神経生理学的な評価を実施した。その結果、慢性疼痛アスリートに対するPVAQという質問紙調査のみでは慢性疼痛アスリートの症状が心理的側面を中心とするか否かについては明らかにすることはできなかった。しかし、神経生理学的な評価の結果、慢性疼痛アスリートでは体性感覚野の興奮性および抑制機能に変化が生じていることを明らかにした。このことから、少なくとも慢性疼痛アスリートに対して脳刺激などの神経生理学的介入を実施することは有効であるという可能性が示された。現在までに、数名の慢性疼痛アスリートに対する介入実験を実施しており、これらは2024年以降の計画となっていることから研究計画は当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画では、認知心理学的手法と神経生理学的(微弱な脳刺激)の手法を用いて慢性疼痛を有するアスリートに対して、介入実験を実施する予定である。PVAQという質問紙調査のみでは慢性疼痛アスリートの慢性疼痛の主な原因が心理的要素に依存するか神経生理学的に要素に依存するかについては明らかにできなかった。そこで、新たな質問紙調査についても検討中である。また、神経生理学的な介入として予定している微弱な脳刺激以外の刺激手法として迷走神経刺激という新たな介入手法にも着目している。先行研究では迷走神経刺激により、脳内のGABA濃度を変化することができるという報告がされている。申請者らが報告した慢性疼痛アスリートの脱抑制の症状はGABA濃度の低下に起因する可能性が高く。新たな介入手法として、実験計画当初は予定していなかった手法も導入予定である。これらのことから研究計画は当初の計画以上に順調に進展しているといえる。
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