研究課題/領域番号 |
23K24737
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補助金の研究課題番号 |
22H03480 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小笠原 一生 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70443249)
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研究分担者 |
寺田 吉壱 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (10738793)
内山 彰 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 准教授 (70555234)
SUBHASH・REVANKAR Gajanan 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (70899773)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | スポーツ外傷・障害予測 / 認知力学 / 前十字靭帯損傷 / リスク予測 / 意思決定 / 心理認知 / バイオメカニクス / スポーツ外傷・障害予防 / 行動選択 / 外傷予防 / 機械学習 / 認知負荷 / アスレティックトレーニング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は重篤スポーツ外傷である膝前十字靭帯損傷の成り立ちを選手の心理・認知からバイオメカニクスに渡るリスクの連鎖の産物であると位置づけ、最規模サーベイとスポーツ映像の解析およびバイオメカニクス実験の融合によって、どのような心理特性や行動選択が、関節に負担となる力学を引き起こし、最終的にACL損傷に至らしめたかを明らかにすることで、新たな重篤スポーツ外傷・障害のリスク予測法と予防法の確立を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は前十字靭帯(ACL)損傷の成り立ちを選手の心理認知からバイオメカニクスに渡るリスク連鎖の産物と位置づけ、スポーツ医学と機械学習アプローチによる包括的リスク予測基盤の確立を目指すものである。大きく2つの研究課題があり、課題1はWebサーベイによるACL損傷者(重篤スポーツ外傷既往者)に共通した心理行動特性を把握することであり、課題2は運動中の認知負荷は関節力学に悪影響を及ぼすかと確認することであった。 課題1について、令和4年度は国内4病院および米国1大学において、Webサーベイを実施し1,000名からの回答を得た。回答者には、ACL損傷を含む新規の重篤外傷既往者から、健康人までが幅広く含まれ、リスク予測の学習データとして理想的であった。目標指向性の検査であるTEOSQの結果より、我が国の若年アスリートにおいて、重篤スポーツ外傷既往群(4週間以上のスポーツ休止を要した者)は、健康群に比べてタスク指向性が有意に高いこと、また、他者(コーチ等の指導者や、家族友人等の周囲の人)からの承認欲求度が有意に高いことが示された。この結果は、米国や欧州での結果とは真逆であり、また、当初の我々の仮説とも反するものであったため、本研究のWebサーベイにより、我が国の文化的背景に基づく若年アスリートに特有の結果であることが考えられた。(以上は令和4年度日本臨床スポーツ医学会、令和5年度ACSMで発表) 課題2については心理物理実験構築を行った。運動課題はデュアルタスク(運動+認知、および運動+運動)として片脚着地(高ダイナミクス)と腕到達(低ダイナミクス)を選択した。前者ではコンピュータ制御されたレーザーポインタにより着地位置を変動させる課題とし、後者は力覚デバイスによる手部外乱場での腕軌道学習課題とした。課題1で募集したACL損傷既往者を対象者として実験を実施する。(論文報告OJSM1件)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和4年度の進捗は予想を上回り、興味深い進展を得た。課題1の大規模Webサーベイでは、期間全体の目標である2,400名のうち1,000名の対象者を得た。令和4年度は後ろ向き調査を実施し、上記のとおり、海外の従来研究とは異なる興味深い知見を得た。この知見は国内学会にて発表済で現在論文執筆中である。また令和5年度初旬に海外学会での発表を予定している。 課題2の心理物理実験環境構築ではワイヤレス脳波システム、レーザーポインタ視覚刺激装置等の必要備品を計画どおり準備した。また潤沢なスペースを確保して備品を配置し、研究者の使用に関するトレーニングを継続している。課題1でリクルートした何人かの対象をに協力を得て予備実験を実施している。また、計画が当初予定よりも進展したため、令和5年度の予定されていた交付研究費を前倒し申請して、力覚デバイスを購入した。このデバイスも実験環境に組み込んだ。課題2の心理物理実験は最終年度の令和7年度まで継続される重要な課題であるため、環境構築と使用者のトレーニング含めて、周到な準備を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果物は、個人の心理行動特性から重篤スポーツ外傷のリスクを予測することである。これを達成するため、課題1の大規模Webサーベイによる重篤スポーツ外傷既往者に共通した心理行動特性の理解(後ろ向き研究)をもとに、これをフォローアップして外傷発生を予測できるか(前向き研究)に展開する。令和5年度以降は、すでにデータ取得した約1,000名を半年ごとにフォロー調査して新規スポーツ外傷発生と心理行動特性との関連を把握する。こちらは一部の対象ではすでに開始している。さらに、令和5年度以降は課題2の心理物理実験を主とした研究展開を行う。具体的には、ACL損傷場面を再現した片脚着地運動を、認知負荷あるいは同時運動で姿勢安定を阻害して着地時の関節負担の増減をバイオメカニクス的に把握することや、課題1で得た、リスクを高める心理行動特性をもつ者が、そのような運動課題を行った時に、低リスクが予測される者に比べて異なる関節負担を呈するかを確認していく。片脚着地課題のデュアルタスクバラダイムについて当教室ではすでに論文報告しており、滞りなく進展できる準備がある。 実際のスポーツ外傷場面とは異なるが、運動中の意思決定や行動選択プロセスの精査に限定した心理物理実験を腕到達課題を用いて実施する。令和4年度に前倒し申請で準備し環境構築してきた力覚デバイスはここで用いる。価値の衝突を起こす実験バラダイム(高得点VS高身体負荷)を実施する。重篤スポーツ外傷既往者は身体負荷よりも高得点を選ぶ意思決定がなされるかを確認する。
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