研究課題/領域番号 |
23K24772
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補助金の研究課題番号 |
22H03515 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
辻田 忠志 佐賀大学, 農学部, 准教授 (20622046)
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研究分担者 |
伊東 健 弘前大学, 医学研究科, 教授 (10323289)
植村 武史 城西大学, 薬学部, 准教授 (50401005)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | 老化 / アクロレイン / リポソームコリジョン / ポリアミン / リボソーム衝突 / 不良タンパク質蓄積 / Nrf1 / スペルミジンオキシだーぜ / 酸化ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
活性酸素種ROSはゲノムDNAやタンパク質の変性、ミトコンドリアの機能不全を誘導して老化を促進する。また、老化に伴い環境応答転写因子Nrf1が著明に発現低下し、細胞内に高攻撃性アルデヒドや異常タンパク質などの内因性刺激物質が蓄積すると明らかとしている。このような内因性刺激物質を解消するため、Nrf1の制御下にある高攻撃性アルデヒドの産生を制御する酵素Smox、およびタンパク質翻訳合成調整因子GCN1の機能を調節して、新たな老化介入方策を立案する本研究を着想した。将来的にはSmoxおよびGCN1経路を調節する遺伝子や低分子化合物を得ることで個体のライフコース補正戦略を提唱したい。
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研究実績の概要 |
これまで、老化とROS代謝に関与する分子メカニズムの解明に挑み、老齢マウス(3年齢、以下3Yと表記)や早期老化モデルであるKlotho欠失マウス(Klotho-/-、以下KLと表記)肝において、Nrf1タンパク質が顕著に減少することを見出した。3Y、KLおよびNrf1欠失マウスで共通して発現上昇するスペルミジンオキシダーゼ(Smox)の異所的発現の分子メカニズムと、高攻撃性の低分子アルデヒド、アクロレインの産生メカニズムの解析を進め、細胞内局所で生成する刺激物質の補正によって抗老化を実現できるかについて検証し、介入方策を提唱することを目的としている。 実際、肝培養細胞にSmoxを過剰に発現させると、遊離アクロレインが著明に増加することを確認した。一方で、Nrf1 欠失細胞においてはSmoxが過剰に発現しており、もちろんアクロレインの蓄積が観察されるが、Smoxの阻害化合物およびSmoxのノックダウンによって著明にアクロレインは減少したことから、細胞障害を引き起こす原因はSmoxの異所的発現に原因があるとされた。今回の実験では肝に注目しているが、実際には同様の現象が他の臓器や細胞でも誘引されると想定している。局所でアクロレインを生じさせない、効率的な解毒方策について、Smoxの機能阻害化合物の探索、ALDH2活性調節によって達成できないか検討している。特に前者については、組換えSmoxタンパク質の発現をバキュロウイルス発現システムを活用して大量発現することに成功している。現在、高感度酵素アッセイ系の樹立を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年までに、老齢マウス(3年齢、以下3Yと表記)や早期老化モデルであるKlotho欠失マウス(Klotho-/-、以下KLと表記)肝の遺伝子発現変動解析を実施した。すでに、mRNA翻訳機構の異常感知するセンサータンパク質GCN1が著明に減少することに加えて、関連するリボソーム衝突を感知するストレスセンサーの発現が著明に低下していることを明確にできた。通常から、ある一定数、mRNAからタンパク質へ翻訳する際にリボソーム衝突が生じているが、これを感知して除去する機構があるためストレスにはならないとされる。しかし老化によって、適切にリボソーム衝突が感知できないと、リボソームが停滞したままのmRNAが蓄積することとなり、ストレスとなることが要因となると考えられた。これまでGCN1の蓄積がリボソーム衝突のマーカーとして活用されてきたため、現在GCN1の蓄積に変わるマーカーを用いて、老化時のリボソーム衝突状態を明確にすることを計画している。 一方で、培養細胞においてKlothoをノックダウンすると、老化・加齢マウスと同様にNrf1およびGCN1のタンパク質量は低下した。そこで、リボソーム衝突が本当に老化を誘導するのかについて、リボソームからtRNAの遊離を阻害するシクロヘキシミド、リボソームのAサイトに結合するチゲサイクリンの2種を用いて人為的にリボソーム衝突を誘導したところ、濃度依存的にGCN1の蓄積し、老化のマーカーであるSA-beta-Galで染色される細胞が増加した。すなわち、リボソーム衝突が老化の引き金となることが明らかとなってきた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、リボソーム衝突時にスプライシング異常が見られるXbp1のmRNAを解析するなどして、老化等のイベントで変動があるのかについて検証をしている。加えて、次世代シークエンサーを活用したダイソームプロファイリング解析方法によって、老化、Nrf1の発現低下との連関を明確にできるのか実験系の構築を進めている。また、実際に、リボソーム衝突が誘導された際に、どのような代謝変化があるのかについて、質量分析機を用いて解明を進める。 また、組換えSmoxを活用して、Smoxの阻害剤探索のためのスクリーニング系の構築を進める。現在の検出系ではSN比が高くなく、この蛍光試薬等を用いて高感度化を進める。阻害剤のスクリーニング開始を待たずに、すでにSmoxの阻害剤として活用されているMDL72527も活用して、実際にSmoxの阻害によってNrf1欠失による肝障害が改善するのかを検証を進める。最近アクロレインの解毒代謝にアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)が大きく関わることが明らかとなっており、SmoxとALDH2の二重欠失によって、さらにアクロレイんが蓄積するのか、また、ALDH2の過剰発現等によってアクロレインの毒性を解除できるのかについて検証を進める。
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