研究課題/領域番号 |
23K24814
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補助金の研究課題番号 |
22H03558 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60040:計算機システム関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
廣瀬 哲也 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70396315)
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研究分担者 |
菅原 徹 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (20622038)
清水 徹 東洋大学, 情報連携学部, 教授 (90588344)
兼本 大輔 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90603332)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | エネルギーハーベスティング / CMOS / LSI / 熱電発電素子 / 生体情報取得システム / 行動情報取得システム / パワーマネジメント技術 / 超低消費電力集積回路 / 環境発電 / 熱電発電デバイス / 太陽電池 / 超低消費電力パワーマネジメント技術 / 情報センシング / エネルギーハーベスティング技術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,【畜産・酪農DX】,すなわち畜産・酪農業のデジタル変革を目的とし,その中核を担う集積エレクトロニクス基盤の構築にある.特に,自律型牛生体・行動情報取得システムの創出を行い,このための超低消費電力パワーマネジメント技術基盤の開拓と,これを用いた牛情報センシング技術の基盤研究を実施する.常時動作するシステムのエネルギーを牛自身と周囲環境から獲得し,これを超低消費電力集積回路(LSI)技術との協調設計により有効化する.家畜の生体・行動情報をバッテリレス・メンテナンスフリーで取得する次世代生体情報取得システムの実現に向けた基盤技術開拓を行うものである.
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研究実績の概要 |
畜産・酪農におけるデジタルトランスフォーメーションを目指した自律型牛生体・行動情報取得システムの基盤技術の開拓研究を実施した.自律分散型のシステム構築に向けた環境発電技術として,体温と外気温の温度差を用いた熱電発電および環境光を用いた光発電に向けたパワーマネジメント技術基盤の開拓を行った.熱電発電においては,極めて低い電圧で動作を開始する必要があり,このための集積回路技術,特に基本CMOSインバータの極低電圧動作,ならびにオンチップ昇圧回路の極低電圧動作技術の開拓研究を行った.さらに環境発電技術ではハーベスタの最大電力点で動作させる必要がある.本研究では,熱電発電ならびに光発電に適した最大電力点追従制御技術の開拓研究を行った. フレキシブル熱電発電素子の研究開発では,複数の熱電半導体pn対を直列接続した熱電変換デバイスの1セットとし,複数の熱電変換デバイスが直列および並列に接続された際に,各デバイスにかかる各温度差における出力特性の検討を行った. 牛の生体・行動情報取得用の脈波・行動情報取得システムの構築に向けたシステム開拓を行った.脈波・加速度センサとセンシング及びデータ通信制御用のマイコンを搭載したプロトタイプシステムを試作し,センシングやデータ通信が仕様通り実行できることの機能検証を行った.更にプロトタイプシステムにより消費エネルギーを評価し,システム低電力化の指針を得ると共に,センシングデータから牛の行動情報を取得するための認識技術の見通しを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極低電圧インバータの開拓研究を行った.提案回路は,基本インバータの電源とグラウンド側にインバータをマルチスタックする手法を提案した.また出力を論理反転させてインバータの基板電圧を制御する手法を構築した.シミュレーションにより,5段スタック構成のインバータが24 mVの極低電圧で動作できることを確認した.また,アナログ方式に替えてデジタル方式による最大電力点追従制御技術を構築した.参照電圧と比較電圧をデジタル変換してカウンタに記憶し,比較器により大小関係を比較して所望の電圧で動作するように制御する.シミュレーションにより,デジタルMPPT制御回路が正しく動作することを確認した. フレキシブル熱電発電素子の研究開発では,BiTe 系化合物熱電半導体を 4つpn 対を一列として直列接続した独立デバイスを,それぞれ8 列作製した.この8列(個)の直列デバイスが,それぞれ直列 / 並列に接続切替えを可能とするシステムを作製した.作製した各熱電変換デバイス間に均一に50 ℃ の温度差が付加していると仮定し,デバイス間にかかるIV 特性を直列接続と並列接続時でそれぞれ測定し比較した.その結果,デバイスの接触不良やデバイス間に付与する温度差の不均一さが要因となり,理論に従うIV特性の取得が困難であることがわかった.今後,この点に着目して改善を行っていく. 生体・行動情報取得システムのプロトタイプとして2種類の評価機(評価機AとB,各3台)を開発・試作した.A,Bの基本構成は共通で光学式脈波センサ,MEMSによる3軸加速度センサ,低電力マイコンESP32を搭載した.評価機Aではセンシング,データ通信,ソフトウェア実行等の消費エネルギー評価が可能で,機能確認と共に消費エネルギーの基礎評価を進めている.評価機Bは小型でバッテリー駆動でき,まず人に装着して動作認識の初期評価を行なった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに検討した回路技術に関し,0.18-um CMOSプロセスでLSIチップを作成し,実デバイスによる実測評価を行う.特に,極低電圧CMOSインバータ,およびこれを用いたリング発振器,極低電圧で動作する基本論理ゲート(NAND,NOR),オンチップ昇圧回路技術,そしてデジタルMPPT制御回路の動作を確認する.また低消費電力化,高精度化を推進する.熱電発電においては,その出力電圧が極めて低いため,スイッチング電源技術を開拓する必要がある.そのためのシミュレーション環境の構築,およびシミュレーション評価を行う.特に,SPICEを用いた回路シミュレーションでスイッチング電源を評価するためには,回路ブロックを抽象化することが求められる.このための環境構築を行い,スイッチング電源回路の評価を行う. フレキシブル熱電発電素子の研究開発においては,比較的大きな熱電変換デバイスを1単位として,同様に直列接続および並列接続されたデバイスの切り替えによる,出力特性の変化を詳細に検討する予定である. 生体・行動情報取得システムにおいては,プロトタイプによる基礎的な評価から,センシングの頻度,通信の頻度とデータ量と並んでマイコンのアイドル時エネルギーの削減が重要である見通しを得ている.今後,各種の低電力モード使用時の消費エネルギーの評価,モードIN/OUTに伴うオーバーヘッドの検討を進めてシステム低電力化の指針を得る.また,人に装着して取得したセンシングデータを蓄積し,姿勢や動作を認識するデータ解析技術(Machine Learning活用も含めて)を検討する.
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