研究課題/領域番号 |
23K24879
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補助金の研究課題番号 |
22H03623 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連
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研究機関 | 武蔵野大学 (2023-2024) 筑波大学 (2022) |
研究代表者 |
岩田 洋夫 武蔵野大学, データサイエンス学部, 教授 (60184884)
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研究分担者 |
矢野 博明 筑波大学, システム情報系, 教授 (80312825)
石橋 直樹 武蔵野大学, データサイエンス学部, 教授 (80348854)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | バーチャルリアリティ |
研究開始時の研究の概要 |
歩くという行為は、筋肉や関節の受容器が検知する深部感覚と、頭部の三半規管が検出する加速度、そして体の動きに付随して変化する目の網膜像、といった極めて複合的な感覚をもたらす。歩行は人間にとって最も生得的な移動手段であるが、これをサイバー空間で実現するためには、これらの身体的な感覚を提示する必要がある。本研究では、アクチュエータを用いない新たな方式の歩行感覚提示装置と、全方位の球面ディスプレイを開発し、サイバー空間における身体的ウォークスルーを実現する。そして、実在の美術館をサイバー空間に構築し、そこにおける体験者の歩行移動軌跡を分析することによって、実世界の鑑賞行動との比較検討を行う。
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研究実績の概要 |
歩くという行為は、人に多様な感覚フィードバックをもたらす。まず、自身の体重を支え地面を蹴って前進する際に、脚と体幹部分に筋肉や関節の受容器が検知する深部感覚が発生する。次に、体全体が動くことによって頭部の三半規管が加速度を検出する。それと同時に、体の動きに付随して、目の網膜像が変化する。歩行は人間にとって最も生得的な移動手段であり、自身の身体運動による外界の見えの変化が、空間認識機能の根幹となっていることが、科学的知見として得られている。例えば、観光旅行においてバスの窓から景色を見るだけの観光と、下車して自由行動する体験を比較すれば、その違いは明らかであろう。歩いたり走ったりすれば地面から抗力や衝撃を受ける。この現象は実世界における人間の生活シーンでは当たり前に発生するが、サイバー空間においてこれを実現するためには、移動により前進しても元の位置に引き戻すことと、任意の方向に進んでも元の位置に戻すことを同時に実現しなければならない。このような技術的困難が伴うため、サイバー空間における歩行移動の実現は基礎研究における模索の段階であり、幅広く研究基盤となるには至っていない。 歩行動作をサイバー空間で実現するためには、これらの身体的な感覚を提示する必要がある。本研究では、アクチュエータを用いない新たな方式の歩行感覚提示装置と、全方位の球面ディスプレイを開発し、サイバー空間における身体的ウォークスルーを実現する。そして、実在の美術館をサイバー空間に構築し、そこにおける体験者の歩行移動軌跡を分析することによって、実世界の鑑賞行動との比較検討を行う。これらの目的を達成するために、本年度は以下の項目を実施した。 ・無動力ロコモーション・インタフェースの製作 ・組立式球面プロジェクション型VRの製作 ・アーティゾン美術館のデジタルツイン制作
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来のロコモーション・インタフェースは、歩行動作に即座に対応して足を引き戻すというアクチュエーションの方式について様々な研究が行われてきたが、高度なハードウェアを実装しても、人の自由な歩行運動に追従することは困難であった。そして、転倒に対する安全性確保のために、体幹をハーネスで拘束する必要があった。本研究では、これらの問題を抜本的に解決する新たな方法として、無動力すなわちアクチュエータを全く用いない方式を提案した。そして、この無動力ロコモーション・インタフェースに組み合わせて映像を提示するのに最適な装置として、360度の全周囲を球面スクリーンで囲うプロジェクション型VRを新たに開発する。これらの装置の実現に向けて昨年度行った実施設計に基づいて、本年度は計画通りに製作を行った。 サイバー空間における歩行体験を研究するためには、歩くことに意味のある場所が必要である。本研究では、そのような場所の典型例として美術館に着目する。美術館は、個々の作品を見せるだけでなく、各作品が置かれた場所や作品相互の位置関係によって鑑賞者へのメッセージを伝える、という空間体験を提供する。その実現に向けて昨年度開発した3Dモデルを用いて、計画通りにアーティゾン美術館のデジタルツインを制作した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、「人は広大なサイバー空間において実世界と同等の歩行体験が得られるか」を学術的「問い」に設定し、その実現を目指す。ここでいう「広大なサイバー空間」とは、人の身体スケールに比べて巨大であることを意味する。例としては、大型施設や街路などが想定される。そのような空間の構造を認識するためには、人は歩きながら周囲を見回す。この時に発生する自身の身体運動に伴う見えの変化が、空間認識の根幹をなす。本研究では、これをサイバー空間で実現するために、歩行運動感覚と周囲の視覚情報を提示するシステムを構築する。そして、実在の美術館をサイバー空間に構築し、そこにおける体験者の歩行移動 軌跡を記録・分析し、実世界の美術館における鑑賞行動と比較検討を行う。この目的の達成に向けて来年度は以下の研究項目を実施する。 (1)無動力ロコモーション・インタフェースと、組立式球面プロジェクション型VRの統合プログラムの開発 (2)展示用造作壁の3Dモデルへの作品データの貼り付け
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