研究課題/領域番号 |
23K24885
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補助金の研究課題番号 |
22H03629 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
野嶋 琢也 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10392870)
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研究分担者 |
大岡 貴史 明海大学, 歯学部, 教授 (30453632)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 触覚 / 力覚 / 電気刺激 / バーチャルリアリティ / 咀嚼 |
研究開始時の研究の概要 |
食物摂取時の触力覚情報は,歯ごたえやおいしさ等の主観的感覚に大きく影響するとされている.しかしどのような触力覚情報が,どのように咀嚼行動を最適化し,また食事の際の歯ごたえやおいしさ等の主観的感覚にどう影響するか,十分明らかであるとは言い難い.そこで本研究は,まず口腔感覚神経への経皮電気刺激手法を組み合わせた新たな感覚刺激手法構築を目指す.ついでそれを活用しつつ,触力覚情報の咀嚼行動ならびに食事における主観への影響を検証し,新たな知見獲得を目指す.
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研究実績の概要 |
今年度は主に,口腔内電極固定手法ならびに咀嚼機能計測システムの開発を実施した. 口腔内電極固定については,引き続き非咀嚼環境を想定し,フレキシブル基板電極とマウスピースによる口腔内電気刺激の手法の更新を実施した.口腔内歯茎近傍の形状は個人差が大きく細かな凹凸があるため,マウスピース型の口腔内電極固定では,電極の歯肉部位への接触が不十分・不均衡となる傾向が観察された.このような電極接触の不均衡は電気的な痛みの発生につながるため,抑制が必要である.そこで被験者の石膏歯型を採取し,それを用いて生体適合3Dプリンタにて被験者専用の薄型軽量固定治具を開発した.被験者ごとの制作が必要になるなど,製造に際しては大きな負担があるものの,咀嚼しつつの電気刺激にむけて良好な結果を得た.また刺激電場に関して,刺激周波数と生成される感覚との間に関して評価を行った. 咀嚼機能計測については,まず咀嚼軌道の計測のために,マーカに基づく顔表面特徴量の画像計測と,下顎に装着した光学マーカの同時計測を実施し,両者の学習による,顔表面特徴量からの下顎動作再構築を試みた.小数の被験者にてその妥当性を検証し,およそ1.65mmの誤差で計測可能であることを確認した.また咀嚼力の計測に関して,チューブ型の咀嚼力計測装置を開発した.密閉チューブを咀嚼することでチューブ内圧変化から咀嚼力を判定する.最大咬合力に比して計測可能範囲が狭いという問題はありつつも,極めて簡便かつ清潔な計測手法の基礎を確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に実施を計画していた研究項目のうち,まず(A)の歯根膜触力覚受容器の動的刺激手法の確立については,非咀嚼環境ながら安定して口腔内で経皮電気刺激手法を構築し,またその手法について改善も施されている.引き続き最大45点の電極を適用可能な状況を実現しているものの,口腔内形状の複雑な形状,個人差への対応に大きな労力が必要となる点が課題として挙げられる.現時点では人を問わず利用可能な汎用性の高い電極固定治具を開発するに至っておらず,個人ごとに製造が必要となっている.固定治具が十分な性能を発揮できない場合,電極の接触が不安定となり,痛みを発生させる要因となるため,多くの被験者を集めての実験には課題がのこる. 続いて(B)咀嚼機能計測システムの開発については,マーカレス下顎運動計測について試作を行い暫定的な評価検証を実施している.計測精度に関して当初目標は未達ながら,基本的な原理妥当性については確認ができている.また咀嚼力の計測に関して,まずチューブ型の計測装置を試作し評価を行っている. (C)歯根膜触力覚と咀嚼機能に関する刺激・反応モデル構築については,残念ながら計測装置・刺激装置側がモデル構築に十分なレベルに到達させられておらず大きな進捗を生むには至っていない.昨年に引き続き電気刺激のシミュレーションモデル構築・解析のための作業を進めている. 部分的にはやや遅延が認められるものの,総合的に判断して概ね順調であると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は部分的な遅延に対応しつつ,下記各項目に関して研究を実施する. (A)「歯根膜触力覚受容器の動的刺激手法の確立」については,より効率的簡便な口腔内電極固定治具の開発に着手し,実験時の負担軽減を狙う.あわせて固定治具の形状を修正し,咀嚼とあわせての刺激が可能な固定治具の開発を実施する.新たに開発された固定治具を用いて咀嚼タイミングとあわせての刺激に取り組む.また引き続き多様な刺激と生成感覚との関係を明らかにするべく,歯茎内部の電位分布を考慮した電極配置の再検討を実施する. (B)「咀嚼機能計測システムの開発」については,咀嚼軌道の計測精度の向上に取り組む.また咀嚼力の計測についてチューブ型と並行して薄膜型の計測装置の開発に取り組み,軌道ならびに咀嚼力の同時計測実現に取り組む. 本年後半に,(C)「歯根膜触力覚と咀嚼機能に関する刺激・反応モデル構築」ならびに(D)「触力覚情報の食事に対する主観的感覚への影響検証」について取り組む.咀嚼時の刺激および計測可能なシステムに基づき,歯根膜触力覚受容器への多様な刺激に対応する,咀嚼機能への反応・影響を評価し,両者の関係性に対してモデル構築を行うとともに,主観的な観点からの影響評価を実施する.
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