研究課題/領域番号 |
23K24892
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補助金の研究課題番号 |
22H03636 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小川 哲司 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70386598)
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研究分担者 |
日野 英逸 統計数理研究所, 先端データサイエンス研究系, 教授 (10580079)
坂口 実 北里大学, 獣医学部, 教授 (80355453)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | 意思決定支援 / 映像監視 / クラウドソーシング / 深層ニューラルネットワーク / 能動学習 |
研究開始時の研究の概要 |
意思決定支援に適した状態監視モデルの設計法および状態監視システムの持続可能な運用法を,畜産業従事者の意思決定支援として重要な課題である,家畜の分娩予兆を映像から検知するシステムの開発・運用を通じて確立することを目指す.これを,人の介在に適した状態監視モデリング,パターン認識において人の介在(クラウドソーシングの利用)を可能にする技術の開発,人を介在させることで早期運用・持続的な成長を可能とするシステムの設計と実証実験により実現する.
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研究実績の概要 |
本研究では,映像による繁殖牛の分娩監視を題材として,(WP-1)意思決定支援のための説明可能な状態監視モデリング,(WP-2)パターン認識システムの構築・運用において人を介在可能にする技術の開発,(WP-3)人の介在を活かした状態監視システムの早期運用と持続的な改善,について検討を行う. 2022年度は,主に(WP-1)について検討を行った.具体的には,意思決定支援を目的とした状態監視技術を社会実装するための要件(説明可能性,少量データに対する頑健性,持続可能性)を満たす映像監視モデルの設計,および通知インタフェースの評価を行った.ここでは,畜産農家が映像から分娩の予兆を判断するプロセスを反映した提案モデリングが,学習データが少量の場合でも頑健に高い分娩予兆検知性能を達成し,end-to-end モデリングよりも有効であることを明らかにしている.また,分娩予兆と確信度,およびその判断根拠を畜産農家に通知するインタフェースを開発し,鹿児島県の畜産農家や畜産・繁殖の専門家を被験者とした思考発話法による評価により,ユーザにフィードバックする情報とその方法,および設計した分娩予兆検知モデルの説明可能性を明らかにしている.これらの成果の一部は,計測と制御・特集「農・林・畜・水産業に挑む画像センシング技術」やITUジャーナルなどの学術誌にて紹介されている. さらに,アノテーション結果の信頼性が担保されないクラウドソーシングを,状態監視システムの早期運用や持続的な改善に利用可能にする技術の開発(WP-2)として,アノテーション結果の信頼性が担保されるまで動的に発注を行う方式(動的タスク発注)や,得られた複数の回答を集約する方式を開発した.これらの成果の一部は,ビッグデータとクラウドソーシングに関する査読付き国際会議(HMData2022)にて報告されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は当初の計画通り,意思決定支援のための説明可能な状態監視モデリング(WP-1)を主として研究・開発を実施した.意思決定支援を目的とした状態監視技術を社会実装するための要件を満たす映像監視モデルおよび通知インタフェースの設計の有効性を明らかにし,その成果の一部は学術誌や学会での招待講演を通じて公表されている.また,状態監視システムの早期運用や持続的な改善にクラウドソーシングを利用可能にする基盤技術(WP-2)として,アノテーション結果の信頼性が担保されるまで動的に発注を行う動的タスク発注モデルを教師なしで学習する方式を開発した.この成果は,ビッグデータとクラウドソーシングに関する査読付き国際会議にて報告されている.以上より,研究・開発は当初の計画通りおおむね順調に進展していると言える. また,提案の状態監視モデリングは,近年人工知能(AI)技術分野で一般的となった大規模事前学習モデルを目的タスクの少量データで調整するというアプローチを,意思決定支援のための状態監視に導入するための方法論を示したものとも言える.特に,繁殖牛映像監視のための大規模事前学習モデル(ここでは,Vision Transformerを用いた)をユーザ(農家)にとって直感的な説明を提供可能な形で設計している点は,意思決定支援AIシステムの構築において有用な知見を与えるものと考える.これは研究開始当初は想定になかったものであり,最新の研究・開発の潮流のもとで新たなビジョンを創出できたという意味では当初の計画以上に研究が進展しているとも言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,状態監視システムの構築・運用において人を介在可能にする技術を開発し(WP-2),それを用いて2022年度に開発した状態監視モデルの早期運用と持続的な改善を実現する(WP-3)ことを目指す. (WP-2)については,アノテーション結果の信頼性が担保されないクラウドソーシングを状態監視システムの早期運用や持続的な改善に利用可能にするために,資格テストの設計,タスク追加発注や高信頼多数決などの数理的なモデリングを行う.ここで開発した技術は,早稲田大学で開発中のクラウドソーシング利活用基盤Tuttiに新たな機能として追加予定である. (WP-3)については,繁殖牛分娩監視に適した大規模事前学習モデルの構築および分娩検知結果の信頼性評価技術の開発を行い,新たな農場でのシステム早期運用および持続的な運用を想定した実験において,構築したシステムの有効性調査(分娩検知性能に関する客観評価およびユーザインタフェースの使い勝手に関する農家による主観評価)を実施する.監視映像から分娩兆候に関連しかつ専門知識不要で判定可能な属性(例えば,尾の挙上,頭部・臀部の位置,等)を推定するよう大規模事前学習モデルを設計することで,クラウドソーシングを用いた高効率アノテーション,農家への検知結果の根拠の提示,監視システムの早期運用などを可能にすることを期待する.また,分娩検知結果の信頼性評価は,クラウドソーシングへの依存度低減に繋がることを期待する. 2023年度は(WP-2)を,2024年度は(WP-3)を主として取り組むが,(WP-3)の一部は2023年度より開始する.新型コロナウイルス感染拡大防止のため休止していた鹿児島県内の繁殖畜産農家との連携を再開・強化して,繁殖牛監視映像の拡充を行うとともに,データの取得に応じて,継続的に大規模事前学習モデルを拡張していく予定である.
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