研究課題/領域番号 |
23K24911
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補助金の研究課題番号 |
22H03655 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西川 淳 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (20392061)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 耳鳴り / 聴覚皮質 / 脳活動計測 / 脳刺激 / 興奮-抑制バランス / 多点神経活動計測 / 脳情報デコーディング / 多点電気刺激 / ブレイン・マシン・インターフェース / 神経活動計測 / 光遺伝学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,まず,雑音中の短い無音区間(ギャップ)に対する神経応答における興奮-抑制バランスの崩壊が,耳鳴りの種類に依らない普遍的な現象であるとする仮説を神経生理学的に検証する.さらに,脳刺激法を用いて興奮-抑制バランスを制御する新規耳鳴り抑制法を開発し,実際に,耳鳴りモデル動物の聴覚皮質において興奮-抑制バランスを制御することにより,行動測定から推定される耳鳴り状態をどの程度改善させることができるか検証する.こうした一連の研究を行うことにより,聴覚皮質における神経活動異常の実体に立脚した次世代の耳鳴り治療法の開発に繋げる.
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研究実績の概要 |
本研究では,耳鳴りの生物学的実体の一つとして聴覚皮質における興奮-抑制バランスの崩壊を想定し,双方向BMIと光遺伝学を統合した興奮-抑制バランス制御による新規耳鳴り抑制法の開発を目指している.当初は光遺伝学による神経活動制御を実現するために,発光制御装置および光ファイバーシステムのセットアップを試みたが,所属機関の遺伝子組み換え実験施設の制約から光遺伝学を用いた神経活動制御系の確立を断念せざるを得なかったため,多点電気刺激系を新たに立ち上げ,これにより聴覚皮質の興奮-抑制バランス制御を目指すこととした.まず,サリチル酸ナトリウムを投与することによりマウス及びラットに耳鳴りを薬理的に誘発し,その状態を行動測定(GPIAS)によって評価した.同様に,音響暴露(116 dB SPL, 1h)による耳鳴りを誘発し,GPIASにより行動評価した.その結果,どちらにおいても16 kHz周辺において耳鳴り症状が確認できた.次に,マウス及びラットの聴覚皮質表面に多点表面電極を留置した上で,細孔から刺入型多点シリコン電極を刺入し,聴覚皮質から三次元的に神経活動を計測した.脳表面及び深部の神経活動の関係性を明らかにするために,多点表面電極から計測される神経応答と刺入型多点シリコン電極から計測される神経応答との相関係数を算出し,特に時間周波数解析を用いた解析を行った.その結果,特に高ガンマ帯において表面と深部の相関が高いことを見出した.さらに,多点電極から計測される高次元神経活動データから音刺激カテゴリを推定するデコーダーの開発を行い,ラット聴覚皮質の3次元的な神経活動から音刺激周波数をチャンスレベルより高い確率で推定できることを示した.以上の結果をベースにして,来年の研究へと繋げていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,耳鳴りの生物学的実体の一つとして聴覚皮質における興奮-抑制バランスの崩壊を想定し,双方向BMIと光遺伝学を統合した興奮-抑制バランス制御による新規耳鳴り抑制法の開発を目指している.当初は光遺伝学による神経活動制御を実現するために,発光制御装置および光ファイバーシステムのセットアップを試みたが,所属機関の遺伝子組み換え実験施設の制約から光遺伝学を用いた神経活動制御系の確立を断念せざるを得なかったため,多点電気刺激系を新たに立ち上げ,これにより聴覚皮質の興奮-抑制バランス制御を目指すこととした.まず,サリチル酸ナトリウムを投与することによりマウス及びラットに耳鳴りを薬理的に誘発し,その状態を行動測定(GPIAS)によって評価した.同様に,音響暴露(116 dB SPL, 1h)による耳鳴りを誘発し, GPIASにより行動評価した.その結果,どちらにおいても16 kHz周辺において耳鳴り症状が確認できた.次に,マウス及びラットの聴覚皮質表面に多点表面電極を留置した上で,細孔から刺入型多点シリコン電極を刺入し,聴覚皮質から三次元的に神経活動を計測した.脳表面及び深部の神経活動の関係性を明らかにするために,多点表面電極から計測される神経応答と刺入型多点シリコン電極から計測される神経応答との相関係数を算出し,特に時間周波数解析を用いた解析を行った.その結果,特に高ガンマ帯において表面と深部の相関が高いことを見出した.さらに,多点電極から計測される高次元神経活動データから音刺激カテゴリを推定するデコーダーの開発を行い,ラット聴覚皮質の3次元的な神経活動から音刺激周波数をチャンスレベルより高い確率で推定できることを示した.以上の結果をベースにして,来年の研究へと繋げていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,薬理操作及び音響暴露による耳鳴りの齧歯類モデルの確立,行動測定による耳鳴りの機能評価,聴覚皮質の表面及び深部からの多点神経活動計測等を実施した.今後は,通常の齧歯類と耳鳴りを誘発した齧歯類を用いて,以下の一連の研究を実施する.第一に,聴覚皮質の表面および深部における神経応答連関を明らかにするための研究を行う.特に,表面電極の各点から計測される局所電場電位(LFP)の時間周波数解析から得られる各周波数帯成分と,脳深部の刺入電極から計測されるLFPおよびスパイク応答との関係性を明らかにする.これにより,聴覚皮質全域の3次元的な神経活動パターンを明らかにするとともに,その脳内状態を表面電極から推定する方法論を確立する.第二に,表面電極および刺入電極を用いた齧歯類聴覚皮質からの多点神経活動計測データから,音刺激カテゴリを推定するデコーダーの開発を行う.デコーダーにはランダムフォレスト等を用い,音刺激にはトーンバースト及び齧歯類の鳴き声を用いる.LFP波形,時間周波数解析による各周波数成分,スパイク発火率等を入力データとし,音刺激カテゴリを推定するデコーダーを作成する.デコーダーの正答率や重要度の解析,PCAやUMAP解析等を用いて,音刺激カテゴリの情報が神経活動のどの部分にどの程度コードされているか解明するとともに,双方向型BMIへと応用可能な脳状態を推定する方法論を確立する.第三に,表面電極および刺入電極を用いた多点電気刺激系を立ち上げ,これにより聴覚皮質の興奮-抑制バランス制御を目指す研究を実施する.表面電極からの多点電気刺激により,刺入電極から計測される神経応答をどの程度変調可能か調べる.様々な電気刺激パラメータを探索し,所望の神経応答へと制御する方法論を確立する.これまでに開発してきた脳状態を推定する方法を活用し,双方向型BMIを活用した脳活動制御法を開発する.
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