研究課題/領域番号 |
23K24924
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補助金の研究課題番号 |
22H03668 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61050:知能ロボティクス関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
遠藤 玄 東京工業大学, 工学院, 教授 (70395135)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 炭素繊維 / カーボンナノチューブ / 腱駆動 / ロボット / 炭素繊維ロープ / センサ |
研究開始時の研究の概要 |
炭素繊維は軽量高強度であることから近年,航空機材料や自動車材料として適用の幅を広げている.また単体で炭素繊維を遥かに凌ぐ材料物性をもつカーボンナノチューブ(CNT)の撚糸も生産・商用化が始まっている. 本研究は,炭素繊維またはCNTを原糸としてロープを構成し,これを用いたロボットの新しい高性能腱駆動機構を創造することで,従来のロボット駆動機構では成しえな かった高い機械出力特性と機能性を実現する.特に炭素繊維/CNTロープは軽量 高強度でありながら導電性を有するため,張力伝達のみならず電力・信号伝送や 張力計測など複合的な機能性を創出できる可能性があるため,これに挑戦する.
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研究実績の概要 |
(1)カーボンナノチューブ(CNT)撚糸による直径1mmの組紐ロープを調達するとともに,基本的物性値を確認した.その結果,破断強度は100N程度であることが分かり,これは従来検討してきた高密度ポリエチレン繊維の破断強度の10分の1程度であった.従って,ミクロなCNT単体の強度と,マクロなロープとしての強度は大きく異なるものであることが分かった. (2)これまでに検討した高強度化学繊維(高密度ポリエチレン・ポリアリレート・PBO・パラ系アラミド)の4種類についてねじり耐久性を調査し,これらをまとめて国際会議にて発表した. (3)高強度化学繊維は引張強度が高いにも関わらず,摩擦係数が低いことから,端部を固定することは容易ではない.従来手法では溝付き固定プーリに巻きかけることで固定していたが,これを改良し,巻きかけによって張力が減衰することに応じて固定プーリ半径を減じることで,よりコンパクトな端部固定を実現する手法を確立した.その成果を特許出願すると共に,国際会議にて発表した. (4)ワイヤ干渉駆動型超長尺多関節アームに関しては,手先関節ほどロープ長が長くなるため,関節剛性が下がり制御が不安定化することが過去の解析で明らかになっている.これを機構的な改良で解決する手法と,制御により不安定姿勢を回避する手法の2通りを提案し,これらを国際学術雑誌論文2編として発表した.また実験によって,ワイヤ干渉駆動型超長尺多関節アームは極めて低消費電力で駆動できることも明らかにした. (5)ワイヤ-プーリ系による平行リンク機構を用いたスラスタ自重補償型長尺多関節アームにおいては,リンクの取り付け方などを工夫することで,全長12.4mでの運動制御実験に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素繊維ロープの基礎特性の把握では,今までに4種類のロープを調達し破断強度と繰り返し曲げ試験を実施した.調達したロープは強度がカタログ値と大きく乖離するものもあり,想定通りの強度が得られていないものもある一方,1種類のロープはPBO繊維に比肩する破断強度であった.また繰り返し曲げに対しては6000回程度で破断に至ったことから,屈曲耐久性はかなり低いことが明らかになった.さらに張力計測の可能性を検討するため,ロープの抵抗値が張力によって変化するかを計測した.その結果,抵抗値変化は計測できるもののその値は100Nで1%程度でヒステリシスも生じることが明らかになった.カーボンナノチューブを用いたロープでは,従来の高強度化学繊維ロープに比して,一桁,強度が小さくなることが明らかとなった.よって炭素繊維/カーボンナノチューブロープ単体では,従来の高強度化学繊維ロープを超えることは難しいことが明らかになった. アプリケーションとして2種類の超長尺多関節アームの開発および解析を進めた.ワイヤ干渉駆動型超長尺多関節アームSuper Dragonに関しては,手先関節のコンプライアンス特性について解析と実験を行った.手先関節が不安定に至る機序を明らかにするとともに,これを回避または改善する2つの手法を提案した.スラスタ駆動型軽量長尺多関節アーム飛龍-IIIでは,PBO繊維を用いた平行リンク機構の粘弾性を実験的に計測するとともに,動力学シミュレータ上で基本的動作が実現できることを確認した.その結果,全長12.4mの試作機の制御実験に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
炭素繊維/CNTロープの更なる調達を検討するとともに,従来の化学繊維と組み合わせることによるセンシング機能の実現を検討する.また炭素繊維/CNTロープのみならず導電性ロープや光ファイバなど,様々な素材を幅広く検討してスマート腱駆動の実現を目指す.さらに,電気抵抗だけでなく,非接触で画像により張力計測が出来る手法を検討する. ワイヤ干渉駆動型超長尺多関節アームSuper Dragonに関しては,さらなる長尺化を目指して手先に直動伸展・収縮するテレスコピック型アームを搭載する.スラスタ駆動型軽量長尺多関節アーム飛龍-IIIでは,スラスタ数を減らした機構構成が可能かどうか,検討する.
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