研究課題/領域番号 |
23K24927
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補助金の研究課題番号 |
22H03671 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61050:知能ロボティクス関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
池本 周平 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (00588353)
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研究分担者 |
長 隆之 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (50804663)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | テンセグリティロボット / ソフトロボット / 冗長性 / テンセグリティ / 物理的インタラクション / 運動計画 / 運動学習 |
研究開始時の研究の概要 |
ハードウェア的なやわらかさはロボットが自身や環境に触れる難しさを緩和するが,運動の精度を悪化させる.ヒトは,同様のトレードオフを抱えているが,手先の精度が必要な運動を行う際には脇を締めたり,肘や手首で環境に触れたりすることで巧みに対処している.これは,ハードウェア的なやわらかさだけでなく,タスクに対して十分な冗長自由度を持つからこそ可能な対処といえる.そこで本研究では,全体がハードウェア的にやわらかく,多くの冗長な駆動自由度を備えたテンセグリティロボットを開発し,自身や環境と触れることで運動の精度を向上させる動作計画の枠組みを構築する.
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研究実績の概要 |
本研究では,全体がハードウェア的にやわらかく,多くの冗長な駆動自由度を備えたロボットを開発し,自身や環境と触れることで運動の精度を向上させる動作計画の枠組み構築を目的としている.具体的には,ロボットとしてテンセグリティを利用した柔軟・冗長なロボットアームに,動作計画手法として接触状況を潜在変数とする階層的なタスク・運動表現に注目し,自身や環境との接触を伴う無作為な試行から,ロボットが積極的に接触状態に移行する動作が計画できることの実証を目指している. 2022年度は,全体がハードウェア的にやわらかく,多くの冗長な駆動自由度を備えたロボットプラットフォームのプロトタイプを開発した.当該プラットフォームは40本の空気圧シリンダで駆動され,バネ等を用いていないことから,ハードウェア的にやわらかいだけでなく,多様な湾曲姿勢を能動的にとれる運動性能を持つ.このロボットプラットフォームの入力は40本の空気圧シリンダの内圧を制御する圧力制御弁に対する目標圧力値であり,目標の姿勢や手先位置を実現する目標圧力値を得ることが最初の課題である.2022年度は,入力をランダムに生成し,その目標圧力値で実現される定常姿勢をモーションキャプチャシステムで計測することで入出力データを収集し,その冗長な運動学をデータ駆動アプローチでモデリングした. ロボットプラットフォーム開発については,ロボティクス分野の主要な国際会議で発表したほか,学術論文誌へ論文を投稿した.一方,運動学のモデル化については,2023年度開催のロボティクス分野の主要な国際会議へ論文を投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定では,A)テンセグリティマニピュレータの開発,B)冗長な運動学の学習による零空間の表現獲得,C)光学式モーションキャプチャシステムを用いた実験環境の構築,の3点について予備的結果を得ることを2022年度の課題としていた. A)については,あえて多数の空気圧シリンダで駆動することで,バネ等を用いずに十分な可動域とハードウェア的やわらかさを両立することを達成した.すでに成果発表を行っていることから当初計画以上の進展があったといえる.B)については,変分オートエンコーダを応用し,順運動学と逆運動学を同時にモデル化することで,それらに必要となる零空間の表現が付随して得られる手法を提案した.また,C)で予定していた実験環境の構築も達成し,A)のロボットとC)の実験環境は全てROS 2によって容易にアクセスできる状態になった.それにより,学習データの収集を行うことが可能になり,そのデータに基づいて実際にB)の手法を訓練・評価することも達成した.これらの成果は,2023年度に開催されるロボティクス分野の主要な国際会議への論文投稿に繋がった. 以上のことから,本研究課題は現段階において当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初予定通り,開発したロボットプラットフォーム(柔軟・冗長なテンセグリティマニピュレータ)について,環境との接触を伴うランダムな試行を行える程度まで耐久性,信頼性を向上させるとともに,ロボットの姿勢や環境との接触についてより多く知るためのセンサを追加する.耐久性,信頼性を向上させる具体的な改良点としては,長時間ロボットを動かした際,テンセグリティロボットのストラットとケーブルの締結部においてケーブルの破断が生じる問題に対処するため,締結部の材料・形状を変更することを予定している.追加するセンサについては,当初計画ではアクチュエータの変位量を計測するセンサの導入を予定していたが,昨年度予備的に行った実験において,慣性計測装置(IMU)をストラットに取り付けることで同種の情報をより簡単に得ることができることがわかったため,この方法をロボットの全てのストラットで採用することを計画している. 運動学習・運動計画の手法については,2022年度に提案した手法(変分オートエンコーダを応用し,順運動学と逆運動学を同時にモデル化することで零空間の表現を得る手法)を使い,零空間のなかに剛性以外の冗長な姿勢の表現を得ることを目指す.同時に,これまでの研究でロボットプラットフォームが持つヒステリシスが結果に悪影響を与えているという問題も確認されていることから,環境との接触をともなうデータを用いるための準備として,ヒステリシスへの対処も計画している.また,ロボットプラットフォームの改良が進み,環境との接触を含むデータが得られれば,この提案手法を拡張し,環境との接触を扱う方法について試行錯誤的な検討を開始する.
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