研究課題/領域番号 |
23K24939
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補助金の研究課題番号 |
22H03684 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
秋山 泰 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (30243091)
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研究分担者 |
柳澤 渓甫 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (40866646)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | バーチャルスクリーニング / 化合物フラグメント / 化合物データベース / SBVS / ドッキング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、化合物データベースの急速な巨大化に対応するため、創薬における構造ベース・バーチャルスクリーニング(SBVS)を効率的に行うための新規手法を提案する。化合物間で重複する部分構造(フラグメント)を単位としたドッキング計算を先ず実施し、それらの結果を効率的に再利用して候補化合物を得る手法を開発する。有望なフラグメントの単体及びペアの情報から既知化合物を逆引きするデータベースの構築も実施する。
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研究実績の概要 |
本研究では、近年の化合物データベースの急速な巨大化に対応するため、構造ベースのバーチャルスクリーニング (SBVS) を効率的に行うための新規手法を提案する。まず化合物間で重複する部分構造(フラグメント)を単位としたドッキングを実施し、それらの結果を効率的に再利用することにより、大規模な化合物データベースから多段階の絞り込みを経て候補化合物を得る手法を開発する。公開ベンチマーク問題等を用いた性能評価も行う。 <2023年度までの進捗状況> 2023年度は、「フラグメントライブラリの改良」「フラグメントの相対位置から逆引きが可能な化合物データベースの構築」「標的に対するフラグメントのドッキングの実施及びREstrettoとの接続」について以下の成果を得た。 1)フラグメントライブラリの改良:2022年度に引き続き、ライブラリの検討を進めた。承認薬データからフラグメントライブラリを作成することで化合物の合成可能性および薬剤として重要なフラグメントに注目したライブラリを構築した。 2)フラグメントの相対位置から逆引きが可能な化合物データベースの整備:フラグメントの相対配置等の条件から、それを満たす化合物を高速に検索できるデータベースを検討した。化合物の立体構造の微差を許容するための前処理を提案し、多数のクエリの処理を高速に行う機構を導入した。今後はクエリ1件毎のさらなる高速化や、より複雑な条件の処理など、発展的な機能開発に取り組んでいく。 3) 標的に対するフラグメントのドッキングの実施及びREstrettoとの接続:上記データベースを利用して、フラグメントのドッキング結果から、フラグメント対の望ましい相対位置を列挙し、これに合致する化合物立体配座を探索する手法を開発した。以前に我々が開発したREstrettoソフトウェアと直列に利用することで、高速化が達成されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各サブテーマ毎に以下の具体的進展があるため。 1)実施計画に基づき「フラグメントライブラリの改良」を実施した。創薬上の重要性や合成可能性を改善するために、承認薬のデータを利用したフラグメントライブラリの開発を進めた。利用用途や利用者の計算資源の多寡に合わせて大小さまざまなフラグメント群によって代表されるべきと考え、20件~200件までの様々なサイズの代表フラグメント群を構築した。あわせて、構造ベースのバーチャルスクリーニング (SBVS) における化合物の評価値を決めるフラグメントドッキングスコアを使ったフラグメント選択の検討なども開始した。 2)「フラグメントの相対位置から逆引きが可能な化合物データベースの整備」では、フラグメント間の類似性を考慮できるように化合物データベースのデータ構造を改良した。あらかじめフラグメントライブラリから、代表となるフラグメント群を取得し、各化合物のフラグメントを類似する代表フラグメントに割り当てる。逆引きの際にも、検索クエリをあらかじめ類似する代表フラグメントに置き換えた上で検索を行う。これにより、完全一致検索によりフラグメント間の類似性を考慮することができる。また、多数の逆引きクエリに対して高速に応答できるように内部実装を変更した。これにより後述の手法の高速性が達成された。 3)「標的に対するフラグメントのドッキングの実施及びREstrettoとの接続」では、フラグメントライブラリの各フラグメントのドッキング計算を行った上で、フラグメントの望ましい相対距離関係を列挙し、これに合致する化合物立体構造を探索するプレスクリーニング手法を開発した。このプレスクリーニング手法と、以前に開発した化合物ドッキング手法 REstretto を直列に利用することで、高速化が達成されることを確認した。今後は精度向上を中核とした効率の向上を実現していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
a)標的に対するフラグメントのドッキングの実施及びREstrettoとの接続 本年度までに、当研究の成果として開発した独自のプレスクリーニング手法と、以前に開発したREstrettoとの直列接続により、高速化が達成できる目途が立ちつつある。また、フラグメントデータセットの作成についてもおよその目途が立った。これらの結果をより確実なものとするため、ベンチマークとなる数種類の創薬標的タンパク質に対して、標的タンパク質のポケットと本年度までに作成したフラグメントデータセット内の各フラグメントとのドッキング計算を実施する。高スコアを得たフラグメントのペアに関して、次項で述べる逆引き法を活用して候補化合物を高速に選出し、REstrettoに引き渡してバーチャルスクリーニングを実現する。有望なフラグメントのペアについては、単にそれぞれの評価値が高いだけでなく、ポケットの体積をうまく埋められているかといった新たな観点も有望である可能性が示唆されており、従来は検討していなかったこれらの観点を評価に入れられるか否かも検討していきたい。 b)フラグメントの相対位置から逆引きが可能な化合物データベースの構築 フラグメントのペアと相対位置から既存化合物への逆引きを可能とするデータベースの整備をさらに進める。課題は多岐にわたる。第一に、ドッキングの対象となる代表フラグメントは少数に絞ってもよいが、逆引きにおいては膨大な化合物の中に存在する多様なフラグメントを検索可能であることが望ましい。類似フラグメントを包摂する手法は今年度に報告したが、候補の増大に対して速度が不十分なため実装を改良して高速化を図る。第二に、上述のように類似検索まで広げた上で、入力に対する誤差の許容度について再度の調整を図る。第三に、有望なペアの検索をさらに論理和や論理積として複雑に組み立てることを可能とする検索の枠組みを検討する。
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