研究課題/領域番号 |
23K24977
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補助金の研究課題番号 |
22H03723 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
布施 泰朗 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (90303932)
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研究分担者 |
早川 和秀 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 部門長 (80291178)
初 雪 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (50983889)
山口 保彦 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 主任研究員 (50726221)
木田 森丸 神戸大学, 農学研究科, 助教 (70903730)
中村 正治 京都大学, 化学研究所, 教授 (00282723)
磯崎 勝弘 京都大学, 化学研究所, 准教授 (30455274)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | FDOMセンサー / 湖底低酸素化 / 地球温暖化 / 琵琶湖 / ヒドロキシラジカル / 腐植様物質 / キノン骨格 / 貧酸素水塊 / 溶存有機物 / 蛍光性溶存有機物 / 熱分解GC/MS / 物質循環 / 低酸素水塊 / fDOMセンサー |
研究開始時の研究の概要 |
地球温暖化の影響を受け、全循環不全湖へ移行する過渡期にある琵琶湖北湖では、貧酸素水塊が夏から冬の長期間にわたって存在し、湖盆内を移動している。また、貧酸素水塊は水深の深い多くの閉鎖性水域で観測されている。本研究はこの貧酸素水塊が関与したこれまでになかった物質循環を解明することを目的とした。湖底では、高濁度な環境に腐植様物質が多く存在し、貧酸素水塊の動きに合わせて酸化還元雰囲気が周期的に変化しており、このときの腐植様物質の変化をFDOMセンサーで捉え、それに伴う化学動態を解析した。実験室のモデル実験と合わせた解析行った結果、腐植物質由来の活性ラジカル種が有意な量で発生している可能性を見出した。
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研究実績の概要 |
2023年度は、2022年度に完成させたFDOMセンサー(腐植物質様蛍光溶存有機物センサー)によって水深プロファイルの観測と2023年9月から12月今津沖中央(水深89m地点)の水深85mで長期係留観測を行った。水深プロファイル観測では、現場環境の湖底付近において溶存酸素濃度の影響により実験室に持ち帰った湖水試料を蛍光分光光度計で測定した蛍光特性と異なる結果となった。低酸素化した湖底環境で腐植物質様蛍光強度が高くなる傾向を示し、腐植物質の構造に豊富に含まれるキノン骨格のアントラキノン、セミキノン及びヒドロキノンの平衡がヒドロキノンに傾いたためと推測された。この時、塩濃度、温度の変化もなかった。 キノン骨格の溶存酸素量及び酸化還元雰囲気の変化による平衡移動にともなう構造変換では、過酸化水素が生成されることが知られている。我々は、2010年以降に確認されるようになった琵琶湖深層水域における貧酸素水鬼の湖内流による移動の際、過酸化水素が継続的に生成されている可能性を推測した。そこで、琵琶湖の底質から抽出したフミン酸を蒸留水に分散させ、過酸化水素から生成するヒドロキシラジカルをトラップするテレフタル酸ナトリウムをフミン酸分散溶液に添加し、冷暗所で酸素パージと窒素パージとを繰り返す操作を行った。各操作後の試料をろ過し、蛍光検出HPLC法でヒドロキシテレフタル酸濃度を測定した。その結果、窒素パージの後に大きくヒドロキシテレフタル酸濃度が増加した。また、酸素パージの後でもヒドロキシテレフタル酸濃度は増加した。このことから貧酸素水塊の移動に伴って過酸化水素とそれから誘導されるヒドロキシラジカルが湖底で生成されていることを示唆する結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である湖底における未解明な酸素消費システムの一部を解明することができた。また、FDOMセンサーの開発により、これまで水圏化学において絶対的な評価法となった3DEEMによる評価に現場環境と研究室環境における違いを提案することができた。FDOMセンサーの係留実験を実施することにより、湖底溶存酸素量の変化と腐植様物質蛍光強度とが負の相関を示すことを初めてとらえることに成功した。さらに、湖底の酸化還元状態の変化が蛍光特性変化とキノン骨格の構造変換である可能性を見出し、活性ラジカル種の発生が継続的に湖底で起こる現象を示唆する結果を得た。これらの結果より、概ね順調に研究が進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、3年計画の最終年度にあたり、2023年度に得られた発見を支持する結果を得るための研究を実施する。キノン構造が酸化還元雰囲気の変化に伴って変換するプロセスがどの程度の速度で進行するか基礎実験を行う。また、構造変換に伴う腐植様物質の蛍光量子収率を求める。具体的には単純なヒドロキノンを用い、窒素パージと酸素パージによる溶存酸素量のコントロールと反応時間、蛍光強度変化との関係を簡易再現実験でとらえる。 二酸化マンガンが豊富に存在し、湖底環境で低酸素化が進行したときに最初に起こるマンガンイオンの増加とそれに伴う酸素動態について検討する。「豊富に存在する二酸化マンガンの酸素が好気性菌に利用可能であるのか」、「二酸化マンガンの酸素が嫌気条件においてキノン骨格がどのように関与するのか」、「キノン骨格が二酸化マンガンから好気性菌への酸素移動があった場合に媒介する機能があるのか」について検討し、次年度以降の研究課題を探索する。また、これまでに得られた研究結果成果を学術投稿論文で発表する。
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