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雪氷中で特異的に起こる化学反応/光化学反応と反応生成物の雪氷からの放出の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K24990
補助金の研究課題番号 22H03736 (2022-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2022-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分63010:環境動態解析関連
研究機関大阪公立大学

研究代表者

竹中 規訓  大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (70236488)

研究分担者 藤井 佑介  大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 准教授 (90780099)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
キーワード雪氷化学 / 光化学反応 / 対流圏オゾン / 氷中の反応 / 臭素 / 二酸化窒素 / 亜硝酸 / 硝酸
研究開始時の研究の概要

化学的に安定と信じられている雪氷中で起こる様々な化学反応や光化学反応の特徴を明らかにする。
雪氷中で生成した臭素が融雪時に放出され、極域の対流圏オゾンを触媒的に分解し、極域における春の大気化学に影響を与えている。この雪中の臭素の存在は知られておらず、本研究ではなぜ臭素が存在しているにも関わらず、検出されないか、その臭素が雪中でどのように反応に関わるかを明らかにすることが1つ目の目的である。また、然の雪中でどの程度硝酸の光化学反応が促進されるのかを明らかにすることと、この硝酸の生成過程を明らかにする。
追加的に別の課題で研究を行っているウルトラファインバブルの氷中での存在や反応について明らかにする。

研究実績の概要

2023年度は4つの研究を行った。それぞれの結果について
1)氷中の臭素は過酸化水素が存在すると反応して臭化物イオンを生成するため、氷中の臭素の濃度を測定することができない。そこで、融解時に過酸化水素が臭素と反応しないように、二酸化マンガン溶液中で解凍することで、臭素が過酸化水素と反応しないようにした。しかし、様々な条件で試みたが、臭素を保持することはできないことが分かった。
2) 氷中に生成した臭素は徐々に大気へ放出される。しかし、その放出量は徐々に減少し、2日程度で、ほぼ放出が止まることが分かった。また、その後、氷中では長期にわたり安定に存在すること、融解すると高濃度の臭化物イオンが存在していても直ちにほぼすべての臭素が放出することが分かった。氷中で生成した臭素は氷中に保存されること、春季に氷の融解と共に放出されていることが示唆された。
3)氷中では光が多重散乱をするために光分解が効率よく起こる。溶液ではほぼ起こらない硝酸の光分解も氷中ではかなり進行する。どの程度の促進作用がるのかを硝酸の光分解から調べた。その結果、実験室では容器壁面から出た光が戻ってこないために南極のような雪氷だけの条件に比べ光の多重散乱の回数が少なく、光分解の程度が大きく抑制されることが分かった。また、北海道の屋外において、雪の中の光の減衰の程度を測定する実験を行った。その結果、南極に比べ減衰速度が非常に速いことが分かった。
4)冬期に雪表面からHONOが放出されているのではないか、雪の表面でNO2から硝酸が出ているのではないかという指摘を受けた。そこで、実験室内において、氷表面におけるNO2からの硝酸やHONOの生成を調べた。その結果、反応により生成した硝酸は氷中に残り、HONOは主として気体として放出されること、純氷の場合は硝酸よりもHONOの生成量の方が少し多いことが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

凍結による臭化物イオンと過酸化水素の反応の解明には氷中で生成した臭素の測定が必須でるが、非常に難しく研究が遅れている。屋外で調査する段階に達していない。今後は試料に残った過酸化水素を定量することで生成量を見積もることができるかどうかを試みている。一方で臭素の放出挙動については、ほぼ計画通りに進んでおり、2024年度は放出される臭素の屋外測定を計画している。
硝酸の光分解に関しても、その濃度が非常に低いため十分な再現性が得られていないため、進捗が遅れている。濃度を高くするなど、連続測定ができないかなど、さらに検討していく。氷表面におけるNO2の反応は、少し遅れている、純氷との反応は結果が得られが、自然雪での実験に間に合わなかった。自然雪を今保存しているので、この研究を進めていく。また、雪の結晶形の違いと反応性の違いの調査を屋外で行う予定であったが、この冬の2月の暖冬のために予定していた長岡では降雪がほとんど得られず、測定ができなかった。2024年度はぜひ屋外調査を行いたい。さらに雪中の太陽光強度の減衰測定では、光強度を全方向から受光するために、拡散球を検出器に取り付ける必要があるが、雪の中で測定する市販のモノは存在せず自作したが、光検出の方向依存性があることが分かり、2023年度に測定した光強度の減衰は、参考値となってしまった。そのため、いくつかの場所での測定ができなかった。

今後の研究の推進方策

2024年度は臭素の放出挙動の実験室実験はほぼ終えたので、次の3つのテーマの研究を並行してすすめていく。
1) 試料に残った過酸化水素を定量することで生成量を見積もることができるかどうかを試みる。また、凍結試料を直接分光光度計で測定できるかどうかを調べる予定である。また、実際の雪の中の臭化物イオンや過酸化水素の測定を行う予定である。
2) 雪の中の硝酸の光分解を、自然雪を用いて調べる。生成するHONO、硝酸、NO、NO2濃度を測定し、雪の組成との関係を明らかにする。また、フィールドにおいて、太陽光により分解し放出される気体、雪の中に残る成分などの調査を行う。さらに、雪の深さごとの太陽光スペクトルを測定し、減衰の程度と雪組成の関係を調べる。
3) 自然雪とNO2の反応を調べる。現在、2023年度の2月に採取した雪試料を保存しているので、その雪を用いた実験室実験を行い、反応量の違い、生成する組成の違いと雪組成の関係を調べる。また、長岡において、降雪の結晶形の違いと生成物の違いを調べる。さらに雪氷表面から放出されるHONOの測定を行い、放出挙動を調べる。

報告書

(2件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (17件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Latitudinal difference in sulfate formation from methanesulfonate oxidation in Antarctic snow imprinted on 17O-excess signature2024

    • 著者名/発表者名
      Hattori Shohei、Ishino Sakiko、Suzuki Nozomi、Nakazawa Fumio、Oyabu Ikumi、Tsutaki Shun、Hirabayashi Motohiro、Noro Kazushi、Takenaka Norimichi、Kawamura Kenji、Yoshida Naohiro、Motoyama Hideaki
    • 雑誌名

      Applied Geochemistry

      巻: 162 ページ: 105901-105901

    • DOI

      10.1016/j.apgeochem.2024.105901

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] N-Nitrosodimethylamine Formation in Metformin Drug Products by Reaction of Dimethylamine and Atmospheric NO22023

    • 著者名/発表者名
      S. Fukuda, K. Kondo, S. Fukumoto, N. Takenaka, O. Uchikawa and I. Yoshida, Itsuro
    • 雑誌名

      Org. Process Res. Dev.

      巻: 27 号: 11 ページ: 2123-2133

    • DOI

      10.1021/acs.oprd.3c00274

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Simultaneous Sampling of NO, NO2, HONO and HNO3 in the Atmosphere by a Filter-Pack Method2022

    • 著者名/発表者名
      Oda Takumi、Fujii Yusuke、Takenaka Norimichi
    • 雑誌名

      Asian Journal of Atmospheric Environment

      巻: 16 号: 2 ページ: 32-39

    • DOI

      10.5572/ajae.2022.006

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Role of nitrous acid in the association between nitrogen dioxide and asthma symptoms: effect of nitrous acid exposure on specific airway resistance in guinea pigs, Environmental Sciences Europe2022

    • 著者名/発表者名
      1.Masayuki Ohyama, Kenichi Azuma, Chika Minejima, Norimichi Takenaka, Shuichi Adachi,
    • 雑誌名

      Environmental Sciences Europe

      巻: 34 号: 1 ページ: 1-10

    • DOI

      10.1186/s12302-022-00693-1

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 大気中の窒素酸化物との反応によるニトロソジメチルアミンの生成メカニズムの解明2024

    • 著者名/発表者名
      竹中規訓, 福本正司, 近藤 加奈子, 福田 昭平, 内川 治
    • 学会等名
      「ニトロソアミン類の変異原性評価と三極規制動向、分析法の開発」セミナー, ㈱技術情報協会セミナー
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] NO2規制におけるHONOの関与について-測定の観点から-2024

    • 著者名/発表者名
      竹中規訓
    • 学会等名
      大気環境学会近畿支部人体影響部会2023年度セミナー, 気道粘液と大気汚染物質
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 自然界の雪氷面における二酸化窒素からの亜硝酸生成2024

    • 著者名/発表者名
      日下 安里紗, 山村 綺音, 藤井 佑介, 野口 泉, 本吉 弘岐, 佐藤 啓市, 竹中 規訓
    • 学会等名
      日本化学会第104春季年会(2024)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Photolysis of nitrate in snow in Antarctica2023

    • 著者名/発表者名
      N. Takenaka and K. Noro
    • 学会等名
      10th Conference on Acid Deposition, ACID RAIN 202
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Comparison of Concentrations of Gas-Derived Constituents in Dew Between 20 Years Ago and Recent Years and Changes in Atmospheric Concentrations of Gas-Derived Constituents Associated with Dew Formation and Disappearance at Sakai, Osaka, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      N. Takenaka, Y. Otagaki and Y. Fujii
    • 学会等名
      The 9th International Conference on Fog. Fog Collection and Dew
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 凍結溶液中における臭素の動態2023

    • 著者名/発表者名
      越口蒼士,我妻沙里伊,藤井佑介,竹中規訓
    • 学会等名
      第63回大気環境学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 雪氷表面の物質交換の実験的観測について,手順・項目 etc2023

    • 著者名/発表者名
      竹中規訓, 藤井佑介
    • 学会等名
      第 27 回 南極エアロゾル研究会・第 14 回大気雪氷海氷物質交換研究会合同研究会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 凍結濃縮反応による臭素の生成と放出2022

    • 著者名/発表者名
      越口蒼士,中西皓哉,竹中規訓,藤井佑介
    • 学会等名
      第63回大気環境学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 凍結による臭化物イオンと過酸化水素の反応による臭素生成への初期の水の状態の影響2022

    • 著者名/発表者名
      越口 蒼士、竹中規訓
    • 学会等名
      H2Oを科学する・2022
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 水中ウルトラファインバブル酸素の測定と酸化反応に与える特異性の研究2022

    • 著者名/発表者名
      西中 花菜、竹中規訓
    • 学会等名
      H2Oを科学する・2022
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 氷表面から放出される臭素の挙動について-臭化物イオンと過酸化水素の凍結反応研究からわかったこと-2022

    • 著者名/発表者名
      竹中 規訓、越口 蒼士、藤井佑介
    • 学会等名
      大気雪氷物質循環研究会・南極エアロゾル研究会合同研究研究発表会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] ウルトラファインバブル酸素濃度の測定法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      西中 花菜, 藤田 雄大マイケル, 切石 壮, 前田 泰昭, 竹中 規訓
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] ウルトラファインバブル酸素の存在による特異的酸化反応2022

    • 著者名/発表者名
      竹中 規訓, 山元 佑里子, 藤田 雄大マイケル, 切石 壮, 前田 泰昭
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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