研究課題/領域番号 |
23K24994
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補助金の研究課題番号 |
22H03740 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安井 博宣 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10570228)
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研究分担者 |
稲波 修 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10193559)
平田 拓 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (60250958)
久下 裕司 北海道大学, アイソトープ総合センター, 教授 (70321958)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 生体金属 / イメージング / レドックス / がん微小環境 / 放射線 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線応答における生体金属やその関連因子の腫瘍内動態や細胞死形態、ならびに恒常性破綻と放射線感受性との関係について明らかにされていない。本研究では、正常細胞とがん細胞におけるX線照射後の遷移金属や関連因子の動態をイメージング等検出技術によってレドックス状態や細胞死に与える影響と明らかにすることを目的に、X線照射による遷移金属や関連因子の動態と細胞死誘導の評価と作用点を探索し、増感標的となる分子の決定と実験的治療検討をin vitro で行い、イメージング技術によって生体レベルで治療効果を裏付ける証左を得る。これにより、生体金属恒常性の破綻を作用機序とする全く新しい放射線治療戦略を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究では、「正常細胞とがん細胞におけるX線照射後の遷移金属や関連因子の動態がレドックス状態や細胞死にどのような影響を与えるのか?また、イメージング等検出技術によってそのメカニズムを解明することで、生体金属の恒常性破綻をがん放射線治療のアプローチとすることが可能か?」という問いに対し、初年度では(1)X線照射による遷移金属や関連因子の動態と細胞死誘導の評価と作用点を探索することおよび(2)増感標的となる分子の決定と実験的治療検討をin vitroで行うことを目的とした。研究成果として、昨年報告された銅によって引きおこされる新しい細胞死について放射線作用との関係を調べるために、銅イオノフォアであるElesclomolを用いて、HCT116細胞やMIA-Paca-2細胞においてピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ阻害剤ジクロロ酢酸(DCA)や乳酸脱水素酵素阻害剤FX11と併用した際のElesclomolの細胞毒性の増強作用の有無について調べた。その結果、既報ではあるがDCAのElesclomolの増強作用が確認できたことに加えて、FX11においてもElesclomolの細胞毒性の増強作用を有することがコロニー形成法によって明らかとなった。各種阻害剤を用いることで、この増感作用が、アポトーシス、ネクロプトーシス、フェロトーシスではなく、銅キレート剤や抗酸化剤によって抑制されたことから、銅に関連する酸化ストレスによる細胞死に依存していることが明らかとなった。以上の結果から、銅代謝に介入することが放射線感受性を引き上げることに繋がることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した当初の計画において、生体金属の恒常性破綻の標的として銅に着目し、過剰の銅を細胞内に届けることが、ミトコンドリアのエネルギー代謝の異常を引き起こし、効率的に放射線感受性を引き上げることに成功し、そのメカニズムについても一部明らかにすることができた。正常細胞との比較や、実際の金属濃度の変化についても現在検討が進行中であり、別の作用点からの増感メカニズムについても今後明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初目標の(2)増感標的となる分子の決定と実験的治療検討をin vitroで行うことについて、引き続き検討を行う。すなわち、鉄関連因子のTfR1、DMT1、FPN1や銅関連因子のCTR1、ATP7A/Bなどの遺伝子発現をqPCRで、タンパク質発現をウェスタンブロット法で測定する。加えて、観察された治療効果の原因となっている細胞死形態やシグナル経路を明らかにすることや、担がんマウスにおけるin vivo実験も行う予定である。
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