研究課題/領域番号 |
23K24999
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補助金の研究課題番号 |
22H03745 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
塩谷 文章 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (10627665)
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研究分担者 |
白石 友一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (70516880)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | DNA複製ストレス耐性 / DNA複製ストレス / ATR / ゲノム不安定性 / クロマチン / がん |
研究開始時の研究の概要 |
正常な細胞でがん遺伝子が活性化すると、DNA複製ストレスが生じ、DNA複製の進行を妨げることで、ほとんどの細胞は、発がんバリアの発動により死滅する。これと並行して選択されて生き残る細胞が生成される。しかし、正常細胞がこの細胞死を逃れて生き残りゲノムの不安定性を獲得し、がんを発症するメカニズムはまだ解明されていない。本研究ではKRASG12V誘発性の慢性的なDNA複製ストレスの要因としてヘテロクロマチン化に注目し、ATR-PrimPol依存的な再プライミングを中心としたDNA複製ストレス耐性機構を明らかにし、DNA複製ストレスに応答する細胞の生存戦略の解明をめざす。
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研究実績の概要 |
近年ドライバー変異に起因する異常な細胞増殖に伴う高度なDNA複製ストレスが、ゲノム異常化を促進し、がんの発生を加速することが示唆されている。重要なことは、正常細胞では過剰なDNA複製ストレスに対して、細胞老化や細胞死を誘導し、発がんバリア機構が発動するが、同時に選択的圧力の下で生き残る「がんの創始細胞」を生み出すことである。そこで本年度はKRASG12V発現によるゲノム動態解析からDNA複製ストレスの原因を明らかにすることを目的とし、KRASG12V発現に伴うヘテロクロマチン領域のマーカーの変動を免疫染色法によって解析したところ、H3K27me3の上昇、およびそのPRC2依存性が認められた。EZH2の阻害剤はH3K27me3の上昇を抑制し、DNA複製進行の遅延を抑制した。さらにHP1発現抑制によって、DNA複製進行の遅延の抑制、および細胞生存率の回復が認められた。以上のことからKRASG12V発現はH3K27me3の上昇を伴う条件的ヘテロクロマチン化を促進すること、またDNA複製フォークの妨害因子は、ヘテロクロマチン化の主因であるHP1であることが示唆された。次にATR-PrimPolによるDNA複製ストレス耐性制御機構を明らかにするため、PrimPol発現抑制を利用し、再プライミングにおけるPrimPolの関与を検証したところ、KRASG12V発現によるDNA複製進行遅延に対する耐性にPrimPolが関与することを見出した。またPrimPolによる再プライミング発動のATR依存性を検証したところATR阻害剤によってDNA複製フォーク進行速度減少の回避が抑制されることを見出した。以上よりKRASG12V発現によるDNA複製ストレス耐性にはATR-PrimPol依存的な再プライミング機構が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R4年度はコロナ禍の影響により、研究の進捗に遅れが生じることが懸念されたが、予定していたDNA複製ストレスの原因や複製ストレス耐性機構に関する大部分の実験を進めることができた。現在DNA複製ストレス耐性機構制御メカニズムに関する解析を進めており、当初の予定通り研究を遂行しうる。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は変異型KRASG12V発現肺線がんモデルにおいて得られたクローンがATRを高発現すること、さらには強制的にATRを高発現した細胞はKRASG12V形質転換を促進する予備結果を得ており、ATR発現上昇が細胞の形質転換に対して必要であり、かつ十分であることを示すモデルを有している本年度は、KRASG12V発現によるゲノム動態解析からDNA複製ストレスの原因を明らかにすることを目的とし、KRASG12V発現に伴うヘテロクロマチン領域のマーカー(H3K27me3)の変動を免疫染色法によって解析し、その転写依存性について検証する。また、RNA発現解析を行い、転写抑制剤によって変動するRNA種を同定し、ヘテロクロマチンが増加する領域について検証する。次にATR-PrimPolによるDNA複製ストレス耐性制御機構を明らかにするため、PrimPol発現抑制、野生型・不活性型PrimPol発現系を利用し、再プライミングにおけるPrimPolの関与を検証する。次にPrimPolによる再プライミング発動のATR依存性を検証するため、in vitro キナーゼアッセイを行い、PrimPol活性化に関連するリン酸化部位の責任キナーゼを同定する。また、KRASによって形質転換したクローンの全ゲノム解析を行い、SNV、SV、CNV、変異遺伝子等の解析を行い、形質転換後のゲノム不安定性について解析する。
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