研究課題/領域番号 |
23K25005
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補助金の研究課題番号 |
22H03751 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63030:化学物質影響関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
紙谷 浩之 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (10204629)
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研究分担者 |
河合 秀彦 広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (30379846)
鈴木 哲矢 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (20573950)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 活性酸素 / DNA 損傷 / 8-hydroxyguanine / APOBEC3 / 遠隔作用変異 |
研究開始時の研究の概要 |
8-Hydroxyguanine(8-OH-Gua、活性酸素により生ずる)に代表される比較的小さな構造変化を伴うDNA損傷が生じると、損傷が生じた部位に遺伝情報の誤り(変異)が生じる。さらに、8-OH-Guaの存在により、損傷部位から離れた位置においても変異が生じる(遠隔作用変異)。そこで、本研究では、この遠隔作用変異の生成機構を明らかとする。
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研究実績の概要 |
(1) OGG1 以外の DNA グリコシラーゼ(修復酵素)の役割の解明:令和 4 年度の研究によって、NTH1 と NEIL1 の関与を示唆する結果が得られた。令和 5 年度に詳細に研究を進めた結果、NEIL1 の関与(NEIL1 のノックダウンにより変異体頻度が減少すること)は確認された。一方、NTH1 の関与は再現性が取れなかった。変異のレポーター遺伝子である supF 遺伝子の変異体の配列解析の結果でも、NEIL1 の関与が支持された。 (2) 8-OH-Gua:A 塩基対と MUTYH が誘発する遠隔作用変異:従来調べていた遠隔作用変異は、8-OH-Gua:C 塩基対の存在によって、8-OH-Gua を導入した鎖の G 塩基に生じる変異である。8-OH-Gua は A とも対を形成することができ、複製の際に鋳型 DNA の A に対して 8-OH-dGTP が取り込まれると 8-OH-Gua:A 塩基対が生じる。そこで、8-OH-Gua:A 塩基対のA を除去する MUTYH に着目し、MUTYH をノックダウンさせた U2OS 細胞に 8-OH-Gua:A 塩基対を有する複製型プラスミド DNA を導入した。その結果、A の鎖の G 塩基に変異が生じた。 (3) リボ体による遠隔作用変異誘発:リボ体(塩基部は G)を含む複製型プラスミド DNA を導入したところ、非常に高い頻度で遠隔作用変異頻度を誘発した。したがって、DNA へのリボ体の取り込みは、従来考えられていた以上に変異・発癌に寄与している可能性が示された。 (4) 遠隔作用変異誘発におけるウラシル DNA グリコシラーゼの役割:現在の遠隔作用変異のモデルでは、APOBEC3がC を U に脱アミノ化し、生じた U をウラシル DNA グリコシラーゼが除去することにより脱塩基部位(abasic site、AP site)が生じて複雑な塩基置換変異を誘発すると推定している。ウラシル DNA グリコシラーゼの阻害剤の効果を調べたところ、8-OH-Gua が誘発する塩基置換変異頻度と G→A 変異頻度が上昇した。この結果により、現在のモデルが支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠隔作用変異に OGG1 以外にも NEIL1 が、また、8-OH-Gua:A 塩基対の場合には MUTYH が関与すること、さらには、その処理にニック形成を伴うリボ体が遠隔作用変異を誘発することを明らかにしたことにより、様々な状況下で遠隔作用変異が生じることを明らかにしたため。さらに、遠隔作用変異誘発が 8-OH-Gua の生成 → OGG1/NEIL1 による 8-OH-Gua の除去と脱塩基部位の生成 → ニック形成 → APOBEC3 によるシトシンの脱アミノ化 → ウラシル DNA グリコシラーゼによる脱塩基部位生成という流れが明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1) True abasic site による遠隔作用変異誘発:8-OH-Gua による遠隔作用変異には、DNA 修復酵素である OGG1 が関与することを既に明らかにしている。令和 6 年度は、OGG1 の産物である脱塩基部位(abasic site、AP site)が遠隔作用変異を誘発することを証明し、8-OH-Gua → 脱塩基部位 → ニックと仮定している経路を確認する。なお、従来の研究は true abasic site の化学的不安定性から、安定な analogue が用いられてきたが、細胞導入直前に変換する方法を用いて、true abasic site の遠隔作用変異誘発能を調べることを試みる。 (2) リボ体による遠隔作用変異誘発:令和 5 年度の研究によって、リボ体が非常に高い頻度で遠隔作用変異頻度を誘発することが明らかになった。リボ体による遠隔作用変異にも APOBEC3 が関与しているかどうかを、APOBEC3B を siRNA によりノックダウンした U2OS 細胞を用いて確認する。 (3) 他の経路により修復される損傷による遠隔作用変異誘発:8-OH-Gua と同様に塩基除去修復により修復される 5-hydroxycytosine やヌクレオチド除去修復により修復されるピリミジンダイマーが遠隔作用変異を誘発するかを調べる。
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