研究課題/領域番号 |
23K25023
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補助金の研究課題番号 |
22H03769 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
清水 和哉 東洋大学, 生命科学部, 教授 (10581613)
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研究分担者 |
岩見 徳雄 明星大学, 理工学部, 准教授 (00353532)
間世田 英明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (10372343)
張 振亜 筑波大学, 生命環境系, 名誉教授 (20272156)
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (30455927)
板山 朋聡 長崎大学, 工学研究科, 教授 (80353530)
原 田 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80868258)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 相利共生 / 微小動物 / 藍藻類 / 微生物群集構造 / 水圏浄化 / 相利関係 |
研究開始時の研究の概要 |
窒素やリンによる富栄養化水域や淡水養魚池では、アオコ構成藍藻類が、人畜に死亡事故さえ起こす強力な藍藻毒ミクロシスチンを産生する。 このため、富栄養化の根本的な解決に繋がる水圏修復とその持続的な保全が重要である。本研究では、水環境における捕食者の挙動の理解、安全を確保した藍藻類捕食微小動物と細菌群の相利関係の応用と植物プランクトン(藍藻類と藻類)グラニュールを用いた水質浄化法に高モビリ ティ技法をベストミックスした水圏修復とその持続的保全法を構築する。本研究の遂行により、汚濁と温暖化に起因する環境問題への対応に加え、微生物と細菌との相利/共生関係を活用した生物工学分野に幅広い波及が期待できる。
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研究実績の概要 |
藍藻類と栄養塩を同時に除去する水圏浄化法の構築では、連続処理槽と半回分式処理槽(シーケンスバッチ槽)を直列に組み合わせた浄化システムを試行した。連続処理槽は、2022年度の知見からスポンジ担体を用いた担体流動槽とした。シーケンスバッチ槽の事前に人工廃水で形成させた細菌-藻類グラニュールを用いた。供試した実水域で採取したアオコ(藍藻類)は、連続処理槽にて藍藻類はChl. a換算として最大90%除去した。また、廃水と比較して低濃度である環境水の窒素とリンもシーケンスバッチ槽にて効果的に除去することを達成した。 これまで不十分であった水環境および処理槽に生息するミクロシスチンを産生する有毒藍藻類捕食者の体系的解析を本研究で深めている。2023年度では、富栄養化した貯水池から採取したバイオフィルム試料からワムシを分離し、ミクロシスチン産生藍藻類を捕食することを明らかにした。このワムシを形態学的および18S rRNA遺伝子配列によってLecane inermisと同定した。L. inermisはミクロシスチン産生藍藻類との混合培養においてミクロシスチンの分解を促進する効果があり、最大98.6%のミクロシスチン分解することを突き止めた。本研究で分離した藍藻類捕食者のRotaria sp.、Lephadella sp.、Lecane sp.は継代培養を続けており、捕食者と共生/共存細菌との種間相互作用の解析のための無菌化を実施している。 ミクロシスチン分解の初発分解酵素MlrAによるミクロシスチン分解は一部のミクロシスチン類似体の分解のみならず、多くのミクロシスチン類似体の分解に寄与することを明らかにした。また藍藻類が産生するmicrocystinやmicrocystin類似化合物nodularinの分解についてmicrocystin分解細菌による分子的メカニズムの一端を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
藍藻類の処理法の構築では、連続処理槽と半回分式処理槽(シーケンスバッチ槽)を直列に組み合わせた水圏浄化法を実施し、富栄養化の原因である窒素とリンの効果的な除去および実際の湖沼で発生してるアオコの藍藻類の除去を効率的に実施できた。加えて、新たなミクロシスチン産生藍藻類捕食者を分離し、捕食者がミクロシスチン分解を促進する効果を示すことを突き止めた。さらに、100以上の類似体をもつミクロシスチンの一部のミクロシスチンに対して分解作用をもつミクロシスチン分解酵素MlrAが、広範囲のミクロシスチンを分解できることを証明した。また、ミクロシスチン分解菌のMlrAをコードするmlrA遺伝子やMlrAのアミノ酸配列の類似性が極めて高く、本研究知見は広くミクロシスチン分解菌においても動いている機構であると推察された。さらに、一部の藍藻類が産生するmicrocystin類似化合物nodularinの分解についてmicrocystin分解細菌による分子的メカニズムの一端を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度で得た藍藻類捕食者の遺伝子情報も活用し、藍藻類を捕食可能な原生動物や微小後生動物などの挙動の解析を継続する。2024年度は、2023年度の水圏浄化システムによるアオコや富栄養化原因物質の処理能の向上を図る。また、水処理槽内と自然水域内で顕在化する藍藻類捕食者の差異が、どの分類群で多くなるのか、解析深度を深め、藍藻類の密度減少に鍵となる捕食者を探索する。アオコを構成する一部の藍藻類が産生するmicrocystinを分解する細菌のmicrocystinやmicrocystin類似化合物nodularinの分解における分子的メカニズムの知見を活用したmicrocystinやnodularin分解法を開発する。さらに、これまで解析が不十分であったアオコ発生水域での有害微生物についての解析を深めていく。
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