研究課題/領域番号 |
23K25024
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補助金の研究課題番号 |
22H03770 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
末包 哲也 東京工業大学, 工学院, 教授 (30262314)
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研究分担者 |
松下 真太郎 東京工業大学, 工学院, 助教 (20883036)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2026年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 二酸化炭素地下貯留 / CCS / トラップメカニズム / 多孔質 / 混相流 / 温暖化防止 |
研究開始時の研究の概要 |
二酸化炭素地下貯留におけるトラップメカニズムの解明に関する研究を行う.貯留層の内部における二酸化炭素のトラップメカニズムには毛管圧トラップや溶解トラップなどが働くと考えられており,これらのメカニズムを解明することで漏洩への懸念を払しょくし,本技術への社会的理解の促進につなげる.また,さらに漏洩のリスクを低減し,大量の二酸化炭素貯留に適用できる手法として「逆浮力法貯留」を提案する.大深度海洋下の砂層を貯留のターゲットとするため,砂の流動を引き起こさない注入条件を明らかにし,実用化への指針を得る.
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研究実績の概要 |
二酸化炭素地下貯留(CCS)の主要なトラップメカニズムの解明が本研究の目的である.トラップメカニズムとして,物理トラップ,界面張力トラップ,溶解トラップ,鉱物化トラップが考えられているが,現象の理解は依然として定性的であり,これらのトラップメカニズムが発現する過程およびメカニズムの移行プロセスはほとんど理解されていない.本年度は,界面張力トラップと溶解トラップについてサブテーマを設定し,空隙スケールにおける可視化と流動ダイナミクスの解明を行った. 界面張力トラップはCO2の注入直後からCO2に働く重要なトラップメカニズムである.界面張力トラップに注目したこれまでの研究により,界面張力トラップ量を決定する因子として,トラップに至る前段階であるCO2注入時のガス飽和率が極めて大きな影響を与えることが明らかになっている.水で満たされている多孔質にCO2を注入した際には注入速度が粘性の条件によりヴィスカスフィンガリングやキャピラリーフィンガリングといった不安定性が発生する.2次元モデルにより,流動様式線図がまとまられているが,3次元多孔質で流動様式を直接観察した例はこれまでに存在しない.本研究では,流動不安定性の遷移過程の3次元可視化により,流動様式の整理を行った.さらに,浮力の影響についても検討を行った.粘性的に不安定で重力的に安定というような部分安定条件では,流動に臨界速度が存在し,臨界速度を境として安定・不安定間の遷移が起こることを見出した.実験では計測が困難な現象を明らかにするために,弱圧縮性手法を用いた数値シミュレーション手法の開発を行い,簡単な移流条件では2次元および3次元で実行可能なコードの開発が完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,流動不安定性の遷移過程の3次元可視化により,流動様式の整理を行った.キャピラリーフィンガリングからヴィスカスフィンガリングに遷移する領域においてどちらの不安定性が支配的かを定量的に判断することは困難であったが,フィンガリング形状のフラクタル次元を解析すると遷移を定量的に判定することができることを明らかにした.また,これらの不安定性が,重力や浮力の影響により,助長される場合,あるいは,抑制される場合について,その遷移が臨界速度を境にして変化することを示した.臨界速度で無次元化した速度により,置換効率などが表されることを示した.これと並行して数値シミュレーションコードの開発を進めた.計算が非常に困難である,水と空気の密度比,粘性比を考慮し,さらに,界面張力を考慮し,界面張力が粘性に比べて顕著になる低キャピラリー数においても実行可能なコードを開発した.これは来年度以降,強力な研究ツールとなる.以上のことからおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に開始したCO2地下貯留に関するトラップメカニズム(界面張力トラップ,溶解トラップ)についてサブテーマを本年度も継続して実施する.界面張力トラップのメカニズム解明ついては数値シミュレーションモデルの開発がおおよそ完成し,粘性比,密度比を考慮し,しかも低キャピラリー数をいう困難な条件でも計算可能なコードを開発した.本年度は,開発したコードを用いて,多孔質内の界面張力支配流動におけるエネルギー散逸メカニズムを解明し,CO2トラップメカニズムの理解へと発展させる.溶解トラップについては,多孔質内部にトラップされる非湿潤相と水の間の物質輸送特性を解明し,モデルとして確立することができた.CO2の注入により,CO2へ水の蒸発が発生し,水相中の塩分析出が発生することが想定される.本年度は,CO2注入により塩分析出により貯留層に発生している亀裂などを自己修復することができないか検討を行う.塩分の析出により,多孔質の細孔径構造が変化し,水に及ぼす毛管圧が変化することにより,水相の再配置が引き起こされると考えられる.CO2は割裂に浸透しやすい性質を持っており,割裂にて蒸発と析出を起こすようにコントロールすることができれば,割裂の自己修復を実現することができる.本技術を開発することができれば,地上からは検出することが困難な,亀裂を原位置で自己修復することが可能になる.本年度から,新規に開始するサブテーマとして,多孔質内における自然対流の解明を行う.貯留層内に物理的にトラップされたCO2は水に溶解するが,すぐに水はCO2で飽和するため溶解はそれ以上進まない.CO2が溶解した水はCO2が溶解していない水よりも重いために,貯留層内部で大規模な自然対流が発生する.
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