研究課題/領域番号 |
23K25029
|
補助金の研究課題番号 |
22H03775 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
橋田 俊之 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任教授 (40180814)
|
研究分担者 |
小川 文男 東北大学, 工学研究科, 助教 (00424812)
福原 幹夫 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 学術研究員 (30400401)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
|
キーワード | セルロースナノファイバー / 固体量子蓄電体 / 木質バイオマス / 再生可能エネルギー / 持続可能社会 / 固体蓄電体 / 凹凸構造 |
研究開始時の研究の概要 |
再生可能エネルギーの開発におけるボトルネックが相当容量の蓄電システムが未だ構築されていないことである.再生可能エネルギーの代表格である太陽光や風力等を持続的に開発するためには,相当容量の蓄電システムが必須であり,本量子的固体蓄電体は高速充電・大容量蓄電を可能にする新しい蓄電材料・原理の観点からブレークスルーを与えるものである.本研究では,CNFシート作製法,蓄電原理の解明,蓄電性能向上に関する検討を通し,積層技術により蓄電デバイスを創製する.これにより,CNF蓄電の学術基盤を構築し,再生可能エネルギー蓄電技術に加えて,林業の再生・促進を達成するための環境調和型社会システムの創成に貢献する.
|
研究実績の概要 |
セルロースナノファイバー(CNF)としてTEMPO触媒酸化法により解繊し,水溶液中で均一分散させたスラリーを主として用い,CNFシート作製ならびに評価サンプル作製に関する調査を通して,本研究で試作したCNFシートサンプルにおいて蓄電性能が発現することを見出した.生体材料由来のCNFに対して,蓄電特性を有することを示したのは本研究が世界で初めてであり,生体材料分野のみならずエネルギー分野において大きなインパクトを与える成果である.現在,用いられている蓄電体はリチウムイオンなどの移動に基づくキャパシターであり,充電速度が小さく応答速度における課題があることに加えて,リチウムは遍在する元素であり経済安全保障上においても問題を抱えており,太陽や風力などの変動する自然エネルギーの蓄電法として十分に対応できる蓄電システムの開発が切望されている.本研究の以上の成果は,上述した現状を打破し,高速充電性能を有しかつ環境配慮型の蓄電システムの開発に貢献できることが期待される.さらに,リチウム電池では耐電圧性が大きくても5Vであることに対して,数100Vまでの耐電圧性を持つことがわかった.また,交流インピーダンス測定による電気特性評価に関する検討を行い,試作したCNF蓄電体サンプルにおいては,電気抵抗と電気容量が3成分からなること,ならびに水分子と電極との相互作用が蓄電性能において重要な因子になることを見出した.これらの知見は,本CNF蓄電体における蓄電メカニズムの解明のための基礎的知見を与えるものである. 以上より,CNFに有意な蓄電機能があることを検証するとともに,CNFのナノ構造に起因した蓄電メカニズムの解明に見通しを得流ことができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TEMPO触媒酸化法により調製したCNFスラリーを用いて,スピンコート法によりCNFシートを作製する方法について詳細な手法の整備を行った.スピンコート法の条件は,回転数が400 rpm, 作動時間は4secであり,コーティング後には90℃で加熱乾燥である.これにより,厚さが0.02mm-0.03mmで面内寸法が約50mm×50mmのCNFシートを作製した.重量法に基づき試作したCNFの相対密度を見積もったところ,本年度の研究においては,CNFシートの相対密度の最高値は約70%であった.ただし,CNFの理論密度は文献に基づき1.6 Mg/m^3としている. CNFシートをアルミ板上に接合し,両面にカーボン電極を設置することにより,蓄電特性評価用サンプルを形成した.充放電試験を行うことにより,試作したCNF蓄電体サンプルは400-450Vまでの電圧での充電が可能であり,単位面積当たりの蓄電量は約1400 mJ/m^2であることを示した.本蓄電体を用いてLEDを点灯したところ,およそ10 min間の点灯をさせることができることがわかった.用いたLEDの電圧と電量は,4.5 V, ならびに2 mAである.交流インピーダンス法によりCole-Coleプロットを取得したところ,試作したCNF蓄電体は3つの抵抗成分からなることを示し,それぞれ,CNFナノフィブリル,CNFバンドル境界,CNFと電極間界面における電気抵抗と電気容量に対応する蓄電モデルを提案した. また,蓄電体の積層化技術の開発に関して,スパッター法や塗布法などを用いた電極作製について準備的検討を行い,スパッター電圧や距離,ならびに塗布粒子径の制御が有効であることを示しており,おおむね順調に研究が進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
CNFスラリーならびにシートの作製について良好な見通しを得ることができており,今後,蓄電特性の発現条件ならびに最適化条件について詳細に検討することを予定している.具体的には,スラリー作製においてはCNFの微細化などの構造因子の影響,シートの作製においては乾燥方法の影響に関する検討が重要になるものと考えており,これらの調査を推進する.蓄電性能に関する評価においては,充電電圧ならびに面圧と蓄電量との関係について検討することを考えている.蓄電メカニズムについては,CNFの形状に起因するナノスケールの表面凹凸構造に加えて,水分子と電極間の相互作用が重要であるとの知見を得ている.この知見は,CNFのみならず生体材料を用いたエレクトロニクスデバイスやセンサーの開発等において極めて有用であると考えており,水分子との相互作用について十分に検討する予定である. 今後は,CNFシート単体における蓄電性能を増大させ,既に比較的良好なレベルに到達しているパワー密度に加えて,エネルギー密度の向上に注力する.この検討と併行して,積層化にための技術的課題についても検討を開始し,スパッター法や塗布法などの効率の良い電極作製法やN(M)EMS技術を用いてCNFシートユニットを積層する方法について検討を行う.
|